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レイトオータム
20120213

2010年/韓国・香港・アメリカ/1時間53分(劇場で鑑賞)
監 督 キム・テヨン
英 題 Late Autumn
出 演 ヒョンビン 湯 唯(タン・ウェイ)
キム・ジュンソン キム・ソラ
<あらすじ>
アンナ(湯唯)は夫を殺害した罪で服役中の模範囚。収監から7年たったある日、母の訃報を受け、72時間の制限つきで葬儀参列目的の外出が許可される。故郷シアトル行きのバスに乗車早々、彼女は韓国人のフンと名乗る男(ヒョンビン)にバス代の一部を貸す羽目に。フンは、女性を楽しませて金銭を得る「エスコート・サービス」をしており、相手女性(キム・ソラ)の夫に追われる身だった。
実家に着いたアンナは、兄弟、親戚が迎えてくれたが孤独感は免れない。買い物に出ても心から楽しむことはできない。そんな中、街角でフンと再会する。
<感想など>
イ・マニ監督作品『晩秋』(1966年:フィルムは残っていない)のリメイク作品。オリジナル作品は舞台を変え何度かリメイクされているというが観たことはない。
気持ちがズーンと落ち込んでしまうような暗いスタート。バスに乗り込んだ男の軽薄さも不快。このままの雰囲気だったらやりきれないと思ったが、どんどんのめりこんでしまった。
主演二人の演技や、一つ一つの演出が細やかだからだろう。
湯唯演じるアンナは、魅力をすべて削ぎ落としたかのよう。でも無表情の中に時折光る眼が美しい。例えば、ピアスの跡をさすっているのを、フンから「掻いてはダメだ」と指摘された時の表情。また、フンが「好(ハオ:よい)」「坏(ホァイ:悪い)」と言った時のかすかな反応。一瞬の動作に惹かれた。
一方の、ヒョンビン演じるフンは、アメリカ人の夫がいる韓国人女性を金づるにして、綱渡りのようなことをやっている。前半ではちゃらちゃらした態度や、しつこさ、その風貌に到るまですべてが気に食わなかったが、本気モードに入ったあたりからこちらの気持ちも変わった。最初のうちはからかい半分だった目つきが、やがて本当に相手の望みを知りたい、叶えたい、という優しさと鋭さの交差する眼差しとなる。暗い面持ちの彼女の手をとるフン。ビジネスを度外視した、彼の想いがつまったエスコートだった。
フンのさらなる気持ちの変化には、アンナの初恋の相手であるワンジン(キム・ジュンソン)の存在が大きい。
彼は結婚後のアンナに駆け落ちを持ちかける。これを知った夫がアンナに暴力をふるう。その夫をアンナは誤って死なせてしまう。この件に深く関わっているワンジンだが、アンナの収監中に彼は別の女性と結婚。アンナはこの経緯を中国語でフンに話す。二人の会話は英語でしか成立しない設定で、彼がそれをすべて理解しているとは考えられない。
ワンジンが今なおアンナに未練を持っている様子、アンナの方も心を引きずっている様子は、観ていて非常にもどかしい。(こんな奴、早く忘れちまえ!)そういう気持ちを晴らしてくれるかのように、フンはワンジンに掴みかかる。
彼はアンナのことを、どのくらいわかっているのだろう。
(ここにいる誰よりもわかっている?)
彼は本当に中国語がわからないのだろうか。
(わかっているんじゃないかと、一瞬思った。)
彼の豹変ぶりには見とれてしまった。もう最初の印象はない。人生のほとんどを芝居で固めてきたような男が素になったとき、果たしてどんな結果が待っているのだろう。
終盤については、ここでは控えよう。
日本のリメイク版は『約束』。これが果たされる時は来るのだろうか。
「余韻」がテーマのマイベストなら、間違いなく十指に入る作品。
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