清朝と近代世界 19世紀 : 夢の国・亞洲文化宮

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清朝と近代世界 19世紀

20111211


著 者: 吉澤誠一郎
出版社: 岩波書店(岩波新書)
刊 行: 2010年6月
副 題: シリーズ中国近現代史①

<内 容>
はじめに
第1章 繁栄の中にはらまれた危機
第2章 動乱の時代
第3章 近代世界に挑戦する清朝
第4章 清末の経済と社会
第5章 清朝支配の曲がり角
あとがき

<感想など>
清末民初の映画やドラマを観る機会は増えたが、役者の演技や人物関係を眺めるだけで、歴史を解釈するまでには到らない。この時代をもう少し深く知りたいと思ったときに偶然手に取ったのが本書だった。ここでは、今まで鑑賞した作品を振り返りながら、著者の客観的な視点を追っていきたい。

本書で主にとりあげるのは、著者が最初で述べているように、18世紀末から1894年の日清戦争開戦前夜である。その間繁栄を極めた時代にも、版図を広げながら諸民族の制圧に苦しんだり、アヘンの流入を抑えようとしたりと、歴代皇帝の脅威に対抗する意識がうかがわれる。繁栄の裏側には常に危機が存在していたことがわかった。

アヘン戦争の背景はなかなか理解が及ばない。1729年、雍正帝がアヘン吸引を禁じたにもかかわらず、アヘン取引は増加する一方だった。この背景に、イギリスが、貿易を独占する東インド会社からの税収を頼みにしていた事実があったことを、本書は挙げている。さらにイギリスの地方貿易商人は、清で得た銀を東インド会社の手形に交換し、会社の方は商人から得た銀で中国の茶を買うというように、決済の形は状況に応じて変化していった。やがて中国の銀が大量に流出して経済構造が変わったこと、清の役人が賄賂を受け取ってアヘン取引を見逃していたことなど、清国内が疲弊していく間の状況は他国の事情とも絡んで複雑である。

1839年、林則徐がアヘン没収と廃棄を断行したことから、イギリスとの軋轢が高まったといえる。以前観た『阿片戦争』では、アヘンに化学処理を施して海に流す過程が、大変リアルだった。イギリス人水夫の中国人殺害に端を発するとされる戦争だが、この時期には一触即発の状態だったのだろう。イギリス本国における戦争の正当性をめぐる論議では、僅差で戦争を支持する政府が票を得て、遠征軍の派遣が決まる。ここでの白熱した論議も『阿片戦争』には細かく描かれていた。

後に太平天国の天王となる洪秀全が、布教を始めたのは1843年。彼とその周辺で起きた数々の不思議が記されているが、いずれも信じがたいものばかりだ。太平天国に対抗するために組織されたのが、曽国藩率いる湘軍だった。この時期を描いた作品として記憶に新しいのは黄暁明主演のドラマ『龍票』である。これを観た時は「湘軍」の立場がよくわからなかったが、本書でようやく理解できた。曽国藩は地方の読書人や農民を引きいれるとともに、官位の売却で財源を確保しようとしたという。ドラマで黄暁明演じる商人が儲けた金で官位を買ってのし上がっていたのを思い出す。

腐敗していく清朝を立て直そうとする者として、李鴻章や、恭親王奕訢の名も挙がっている。海外から技術を導入して富国を目指そうとする彼らの前には、保守派の勢力が立ちはだかる。ドラマで描かれた奕訢(修慶)の鋭さや巧みな駆け引きは見どころの一つだった。結局奕訢は西太后に失脚させられるが、これがなかったとして、歴史は変わっていただろうか。「こうあってほしい」と思うときはいつも「もし…」を考えてしまう。

清の外交相手として挙げられるのは、先に述べたイギリスのほか、フランス、ロシア、日本、朝鮮、ベトナム、タイなど、多方面にわたり、それぞれについて詳細な記述がみられる。その中で奇異に感じたのは、謁見方法をめぐっての各国意見の対立が、そのまま外交問題に発展する恐れがある、ということだった。清の体面を重んじる姿勢や、世界の中心であるという意識が、よく伝わってくる内容だった。

次のシリーズは『近代国家への模索』と題し、1894年から1925年までを描いている。ちょうど辛亥革命が中心になるようで、今年観た作品を振り返りながら読んでいきたい。

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