烙印 : 夢の国・亞洲文化宮

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烙印

20110914



著 者:天野節子
出版社:幻冬舎
刊 行:2010年12月

<あらすじ>
慶長14年(1609年)9月30日。房総半島岩和田村(現在の千葉県御宿町岩和田)沖でスペイン船が沈没、三百余人が救助された。村中総がかりで遭難者たちの世話をする中、17歳の少女ミヅキはニックという青年と恋に落ちる。

2010年9日3日。兵庫県養父市の畑で、死後30年ほど経過した男性の白骨体が発見される。担当の近藤刑事は、現場所有者の母、横山菊枝と面会。彼女の舅姑がかつてアパートを経営していたことを知る。

2010年9月8日早朝。東京の公園で60代男性の遺体が発見される。担当は本庁の戸田警部。被害者久保田和夫の住所は養父市だった。戸田は、久保田の遺留品の雑誌『麗麗』に着目。折り目がついているページに名が記載されていた、モデル、カメラマン、スタイリストに会う。

<感想など>
400年前の江戸時代からいきなり現代へと一っ跳び。30年を過ぎた白骨体の発見、さらに場所を移しての殺人事件。その間には、加害者被害者のやりとりや男女の密会などの伏線が、ちらりちらりと顔をのぞかせる。登場人物が多く、関係も錯綜しているので、名前が挙がるたびにメモをして、時々前のページを繰りながら進んでいく。

経験豊かな刑事と若い鑑識課員、華やかな世界で働く若者たちと片田舎で静かに暮らす中高年。キャラクターがはっきりしており、このままドラマになりそうだ。刑事は持ち前の粘り強さとフットワークの良さで各地を飛び回り、様々な人間の生きざまを垣間見る。目的は事件解決だが、刑事の心情の方が興味深い。

戸田刑事には妻と二人の娘がいる。長女はすでに嫁ぎ、妻、次女は父親とよく話をするようだ。そんなことからも彼の温和な人柄が見て取れる。彼と会う人のほとんどが捜査に協力的なのは、彼の醸し出す優しさに、気持ちが和むからかもしれない。

犯人は中盤あたりで目星がつく。では動機は何か。共犯者が存在するのか。400年前の出来事がどのように関係するのか。読者は刑事と共にあちこちに散らばった点を、線で結ぼうとする。しかし加害者とみられる者のアリバイに阻まれ捜査は難航する。刑事とホシの頭脳合戦は終盤までもつれこみ、文字を追っているだけで緊張してくる。

すべてがドラマチックで飽きないが、どこか都合がよすぎる点が気になった。理髪店の主人や、ダイヤモンドホテルの女性従業員の話など、被害者の目撃情報が詳細すぎて、刑事が喜ぶ内容ばかりだ。加害者の生い立ちと動機も、本人に語らせるとまとまりすぎた感がある。遺伝学の話も真実には違いないのだろうが、辻褄合わせに使われているように感じてしまう。

加害者については、誰もが納得できる動機と、同情心を煽る生い立ちがプラスして、その人物に対する悪感情は湧いてこない。一方の被害者は、負の要素一切を背負わされたキャラクターで、悪い印象しかない。だから、だんだん加害者に肩入れしたくなってくる。刑事自身彼を尊重する。彼も再起を口にする。挑戦状とも思える言葉ではあるが、未来には明るさが見える。上で述べた都合のよすぎる展開が、かえって後味のすっきり感を演出していると思えた。

著者は幼稚園、幼児教育会社勤務の後、60歳から小説を書き始めたという。刑事の人に対する温かいまなざしには、著者の経験からくる願いが込められているのかなと、ふと思った。今度はデビュー作を読んでみたい。また今後どんな作品を発表するのかも楽しみだ。

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