マンチュリアン・リポート : 夢の国・亞洲文化宮

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マンチュリアン・リポート

20101206

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著 者: 浅田次郎
出版社: 講談社
発 行: 2010年9月

<内容・あらすじ>
『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』『中原の虹』(一連の浅田作品)に続く、軍閥割拠の時代の中国。そして軍部が権力を掌握する日本。序章に続き『満州報告書』と『鋼鉄の独白』が6章ずつ交互に配され、終章へとつながっていく。

昭和4年。志津邦陽(しず・くにあき)陸軍中尉は『治安維持法改惡に關スル意見書』をばら撒いた罪で逮捕され禁固刑を受ける。そんな中、彼は突然ある人物と面会させられる。その者は志津に対し、張作霖が爆殺された真相を探って報告するよう命令。志津は早速北京に飛び、張作霖と同じ列車に乗っていたという吉永中佐と会う。吉永は片足に義足をつけ、精神的に弱っている状態だった。志津は調査を重ねて全6通の『満州報告書』を書き上げ、依頼人に送る。

<感想など>
最近、清末から辛亥革命期、軍閥割拠の時代を描いた作品を読んだり観たりする機会が多いが、観れば観るほど、読めば読むほど、わからなくなってくる。人間関係、組織の関係、思想などが入り乱れる上、他国の介入があって、把握しきれないのだ。

今回は、最初に張作霖爆死の原因究明という目的が置かれ、解明に向かって物語は進む。これまでの作品でベールに包まれていた張作霖像が、徐々に鮮明になっていき、彼を取り巻く人々との関係性も明らかになっていく。著者の、張作霖に対する深い愛情が感じられる一冊である。

はじめのうち『鋼鉄の独白』には違和感があった。かつて西太后を乗せた御料車の「気持ち」が述べられた章である。つまり機関車を人格化しているのだ。きしゃぽっぽが整備士相手にしゃべる光景はどこかで見たことがあると思ったら、それは『きかんしゃトーマス』だった。(笑)「彼」の独白を読んでいると、どうしても正面に顔のついた機関車たちが思い浮かんで吹き出してしまう。しかし張作霖との会話になると笑えなくなってきた。

全編を貫くのは「反戦」の思想だと思う。張作霖を抹殺した真犯人は誰か、どうやって彼が乗る車両が潰されたのか、といった謎解きよりも、和平を望む叫びの方が重く響いてきた。著者が、龍玉を手に入れた張作霖の野望や苦悩を描こうとしているのもわかる。ただ、機関車との会話形式なので、創作的な色合いが濃い。この張作霖と、先日読んだ『大地』の王虎が重なった。どちらも出身が貧しく、大きな野望を抱き、息子に夢を託し、人の手で葬られている。彼らの生きざまが胸に迫ってくると同時に、公爵(機関車)の叫ぶ平和はどんどん遠くなってしまう感覚に陥った。

最後、春児が紫禁城の案内人として登場。TVドラマ『蒼穹の昴』の春児の老け顔を想像してみた。たおやかな美しさをたたえた中高年。どんな役者がふさわしいだろう。依頼人と春児の対面、というありえない設定も想像してみた。

リアルな面の裏に、ファンタジー的な面が顔をのぞかせる。読後「どこまでがホントなの?」とつぶやいてしまった。不思議感覚の残る作品だった。

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