大地(中)~第二部 息子たち : 夢の国・亞洲文化宮

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大地(中)~第二部 息子たち

20101118

著 者:パール・バック
原 題:Sons (1932年著)
訳 者:佐藤亮一
刊行年:1971年6月
出版社:旺文社文庫(特製版)

<あらすじ>
辛亥革命後の中国。王龍(ワンルン)の息子たちの物語である。長男の地主王の生活は、広大な土地から得られる収入が頼りだ。次男の豪商王は智謀を働かせて商売を広げていく。三男の王虎は軍閥の首領として領土拡大を夢見る。王虎は2人の甥を従軍させるが、地主王の息子は厳しい生活に耐えられず自殺。豪商王の息子は密偵として活躍。王虎は最初の妻の死後2人の妻を迎え、父となる。彼は特に息子を愛し、後継者として養育するが、息子は父の意に反して農業に関心を示していた。

<感想など>
大地を切り開いた王龍の姿はすでにない。王龍が中年以降に踏み込んだ快楽の道を、そのまま長男が歩んでいる感じだ。彼所有の邸宅はかつての黄家の様相を呈している。これと対照的なのが、質素だが着々と貯蓄する豪商王。この長男次男の複雑な関係と、彼らの妻同士の険悪な雰囲気には、息が詰まる思いだ。そんなドロドロした人間関係を嫌い、闘いに明け暮れる三男も、領地が自然災害で逼迫すると兄たちを頼る。兄たちも弟の武力を頼みに援助する。互いに牽制し合いながら損得勘定でつながる兄弟たち。各人の底に潜む感情が生々しい。

実質的な主人公は三男と言えよう。この巻では彼の活躍が華々しく展開する。王虎は10代の頃、父の愛妾梨花を密かに愛していたが、その気持ちが報われないのを知って家を出る。これが前巻の終盤だ。彼は仕えていた将軍を裏切り、勢力を拡大、ついに匪賊の大頭目を殺してその地を支配下に置く。そして頭目の妻と結婚。彼はその美しい妻を心から愛する。ところが彼女はある計画を胸に秘めていた。突然スクリーンを観るような感覚になり、ドキドキした。訳者が解説で語っているように、この巻はエンターテイメント性が高い。

王虎には近寄りがたい気迫と厳しさがある。それゆえ「虎」と呼ばれるのだが、そんな性格が形成された背景には大失恋があった。彼の激しすぎる感情が、人生を揺るがしたのだ。やがて女性を愛せなくなってしまった彼は、溢れるほどの愛情を息子に注ぐ。彼の才能が軍閥でしか生かされないのが惜しい。

軍閥というと武力で住民を圧迫するイメージから抵抗感が強い。しかし作者は批判眼だけで描いているわけではない。「自分は匪賊ではない」と、他の軍閥や匪賊(その境がどこにあるのかよくわからないが)と一線を画す彼の姿勢を、むしろ評価している面もうかがえる。彼が孤独を深めていく様子も細やかで、最愛の息子に思いが届かない切なさは、自業自得とはいえ胸に迫るものがあった。

持つ者と持たざる者、支配するものされる者、男と女。差別するものとされる者が鮮明に描き分けられている。著者の中立的な立場によって、状況が的確に伝わっていると思う。親子関係を通して時代の変化も明らかになり、「南の方の戦争」という表現が、不穏な空気をかきたてる。

登場人物一人一人のキャラクターが立っていて、ドラマを見ているようだった。実際本作は映像化されたようだ。最近この時代を描いた小説、映画と接する機会が多く、それぞれを関連づけて想像するのが結構楽しい。

今度、違う訳者の『大地』も読んでみたい。

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