マドンナ・ヴェルデ : 夢の国・亞洲文化宮

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マドンナ・ヴェルデ

20101107

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著 者:海堂 尊
出版社:新潮社
刊行年:2010年3月

<あらすじ>
山咲みどりは、産科医の娘、曾根崎理恵の依頼に驚愕する。代理母として理恵と夫伸一郎の子供を妊娠、出産してほしいと言うのだ。みどりは子宮を摘出した娘の願いを聞き入れる。ところが双子の妊娠を告げられた後、娘夫婦の離婚を知る。さらに子宮に戻された3つの受精卵のうち1つの精子が伸一郎のものでないことも知らされ、娘に複雑な思いを抱く。そんな中、通院しているマリアクリニックで青井ユミという若い妊婦と懇意になる。ユミは派手な身なりで言葉づかいも荒々しい。しかし率直に話すうちに、みどりは彼女の優しさに心がなごんでいった。

<感想など>
『ジーン・ワルツ』と同時進行の物語。『医学の卵』の主人公薫君が生まれるまでのエピソードが綴られた物語でもある。以前読んだ二編で完全な脇役だった山咲みどりが、今回は堂々の主役。彼女の手紙文は風流で、料理にも細かい気遣いをする。俳句主宰者の丸山が惚れるのもわかる気がした。

目次は歳時記のそれを見るようだ。第一章の晩秋から第十二章の仲秋までは、ちょうどみどりの妊娠、出産の経緯と重なる。彼女の詠んだ句も盛り込まれ、俳句のことをよく知らない私もその雰囲気を味わうことができた。

理恵が身を挺して法の整備を訴えようとしたことは、評価に値すると思う。しかし確実に着床させるためとしてとった手段(夫婦の受精卵以外のものを無断使用)は、いくらわかりやすく説明されても肯定できない。みどりが娘に欠けている人間性を自分のせいにする場面には心が痛む。いい年をした大人に、親はいつまで責任を取らなければならないのだろう。

みどりが住んでいるのは桜宮市。碧翠院の庭を散策しながらの句会では「でんでんむし」から『螺鈿迷宮』を想像して句を詠む。この想像はみどりだけのもの。彼女の心に沿っていくうちに、以前の作品の謎めいた雰囲気がよみがえってきた。

手紙文や過去の思い出だけに登場する曾根崎伸一郎もまた、特異なキャラクターだ。論理的に思考を組み立てている描写には異次元の人のように感じたが、産まれてくる子供を「人類の家族として社会全体で抱きしめてあげる」という考えには限りなく大きな愛を感じた。そのうち、メールや手紙ではなく実際に登場してもらいたい。

前作で青井ユミの目覚ましい変化に驚いたが、なるほど、その背景にはみどりがいたのかと、納得した。前の山咲みどりはどう描写されていたかが気になる。機会があればページをめくってみよう。ユミや茉莉亜院長の言葉を通して、こじれていた親権問題が解決に向かうが、何だかスムーズすぎる気もした。また、理恵が<クール・ウィッチ>と呼ばれるようになった背景には生い立ちが関係するのかと思ったが、その想像は外れた。それは彼女の持って生まれた性格であって、親がどうにかできるものでもないのでは?とみどりさんに言いたくなった。でもその気持ちもわからないではない。

マリアクリニックに通院する人たちにはみんなハイリスクがある。彼女たちの選択に対して、また55歳で孫の代理母を承諾したみどりの気持ちに対して、感想を述べることは難しい。それはきっと自分がその立場や主張から遠いところにいるからだろう。一方で、彼女たちに共感する人は多いと思う。作者は清川の口や理恵の行動を通して、医療の問題点を指摘しているようだが、非常に微妙な問題であることもうかがえた。

そのうち、『医学の卵』と同時期の、理恵としのぶちゃんの物語を読んでみたい。
(という希望を『ジーン・ワルツ』のレビュー最後でも書いていました!)

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「マドンナ・ヴェルデ」 海堂尊 :TK.blog

『マドンナ・ヴェルデ』  Madonna Verde  著者:海堂尊  出版社:新潮社 <簡単なあらすじ> 桜宮市に1人で住んでいる未亡人:山咲みどりのところに、帝華大で産婦人科医をしている1...

コメント

しのぶちゃん、理恵先生そっくりな性格になってたりして…

おはようございまーす。

今作品と『ジーン・ワルツ』はおっしゃるとおり非常に微妙な問題ですよね。
もはやエンターテイメントではなく小説という場を借りて
海堂氏は医療を斬りまくってますね^^;
(この小説だけでなく海堂氏の著書いくつかはそうですが)
医療界の方からいろいろと逆風もあるみたいですが、
それでも書き続ける揺るぎない海堂氏の信念はある意味スゴイです!

>みどりが娘に欠けている人間性を自分のせいにする場面には心が痛む。
>いい年をした大人に、親はいつまで責任を取らなければならないのだろう。
>理恵が<クール・ウィッチ>と呼ばれるようになった背景には生い立ちが
>関係するのかと思ったが、その想像は外れた。

『ジーン・ワルツ』では母親の登場シーンが少なかったため、
私も多少ならずとも生い立ちに何かあるのかと思ってましたが
今作品で彼女の持って生まれた性格だったんだと思いました。

私の両親も、私がなかなか嫁に行けないのは自分たちが私をわがまま勝手で
ズボラな性格に育てたせいだと責任感じてなければいいけど(笑)。

しのぶ、かおるの対面もあるかもしれませんね!

TKATさん、こんばんは♪
そっか、なかなかリクエストが回ってこなかったのは停滞してたからかも、ですね!
私は理恵先生の一面はどうしても受け入れられなくて、総合的にあまり
いい印象を持っていないのですが、あの感情に流されない冷静さを
好きな人はいるかもしれませんね。
おっしゃるように、しのぶちゃんは母の特徴をしっかり受け継ぎそうですね。
みどりさんがそんなこと言ってましたし。(この方のカン、すごいみたいだし…)
伸一郎さんにはいずれ出てきてもらいましょう。
今彼のことを「伸ちゃん」って書こうとしましたが、ちょっとイメージ
違うかなと思ってやめました(笑)
伸一郎目線の外伝、いいですね~。
でもあんまり難しくしないで、というお願いを付け加えよ~っと。
海堂氏にはこれからも信念を貫きとおしていただきたいです。

ところで、ご両親は可愛いTKATさんを手放すときがきたら、ホントお辛いのでは?
私も、台湾に連れて行った娘は可愛いので、手元に置いときたいです。
(って、最後の行に反応した文じゃないかも~)
結局親はいつまでも親なんだなあ、と老いた両親に会うたびに思います。

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