大地(上)~第一部 大地 : 夢の国・亞洲文化宮

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大地(上)~第一部 大地

20101105

著 者:パール・バック
原 題:The Good Earth (1931年著)
訳 者:佐藤亮一
刊行年:1970年7月
出版社:旺文社文庫(特製版)

<あらすじ>
舞台は清朝末期の農村。父と二人暮らしだった王龍(ワンルン)は念願の結婚をする。相手は富豪黄(ホワン)家にY頭(ヤートウ)として仕えていた阿蘭(オーラン)。夫婦は力を合わせて働き、生活は徐々に豊かになり、ついに没落した黄家の土地を買うまでになる。子供も生まれる。ところが洪水や飢饉で、一帯は猛烈な飢餓に襲われる。王龍は、家族でしばらく南方に移り住む一大決心をする。南の都市での生活は苦しくなる一方だった。王龍は車夫を、妻子は物乞いをする。あるとき富豪の没落によって王龍は思いがけない収入を得る。彼は家族を連れ、自分の大地へと戻っていく。

<感想など>
初めて読んだのは高校生の頃。凄まじい飢餓、貧困に驚いた当時の記憶が、今またよみがえってきた。清朝の時代を描いた映画やドラマはよく観るが、朝廷や街中を描いたものがほとんどなので、農村の風景はなかなか想像できない。農村を思い描けない状態は、当時も今も同じかもしれない。

後書きによると、著者パール・バックは、宣教師であるドイツ系の父とオランダ系の母との間に生まれたアメリカ人で、生後4か月目に中国に渡ったという。中国で18年過ごして中国語は堪能、中国情勢にも造詣が深く、アメリカの大学への進学はまさに「留学」だったとのこと。『大地』を南京で書いたのは1930年の40歳を迎える前。まさに歴史のうねりを肌で感じながらの執筆だったのだと思った。作品は第2部『息子たち』、第3部『分裂した家』へと続く。

王龍が結婚する朝思ったことが印象的だった。明日から父親の足を洗わなくてすむという安堵感だ。これまでこなしてきた家事をやってくれる人が来る。家の維持と繁栄のために妻を迎える時代だったのだ。新婦は彼が思い描いていた以上によく働く。生きていくための知恵も豊富だ。蓄財が可能だったのもすべて妻阿蘭のおかげと言える。

そんな阿蘭の姿は極めて地味で無表情に描かれる。だから後半の涙を流す場面が鮮烈だった。豊かになった王龍は快楽の味を覚え、第二夫人蓮華(レンホワ)を迎える。阿蘭が一粒だけとっておいた宝石を、王龍が奪ったとき、阿蘭はおそらく初めて泣く。極限の飢餓状態で生まれたばかりの子を殺めた時でさえ泣かなかった彼女が、だ。一粒の宝石は、初めて「自分だけのため」に持ったものなのだろう。阿蘭の感情の起伏に切なさを覚える。

王龍も、貧困状態を経験したはずの息子たちも、豊かになるとその時代を忘れてしまったかのようだ。しかし王龍は時々大地を耕しに行く。彼の日に焼けた背中と広漠とした大地が、一体となって見える気がした。

王龍というキャラクターには、人間のさまざまな欲望、感情が渦巻いている。土地に対する執着心や金銭に対する価値観は、若いころ大富豪である黄家に抱いた複雑な気持ちが反映していると思う。蓮華に対する想いは、ほとんど初恋の熱情である。同時に、妻に愛情を抱いていない自分に気づく王龍の心理も細かく描写され、彼の葛藤と男の我儘がリアルに映った。また、王龍は、他の兄弟や周囲の人から疎外される知的障害のある娘を、こよなく愛し、懸命に守る。そんな彼のいろいろな面を通し、その時代の空気が流れてくるような気がした。

なお、出版が古いため今の禁止用語も多用されている。しかしそれが状況をダイレクトに伝える役割を果たしている感もある。登場人物名の発音は記述のまま記載した。

第二部、第三部のタイトルからは、王龍が一代で築き上げた家の変化が予想できる。時代の変遷と子孫たちの変化を、続けて読んでいきたい。

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