悪人 : 夢の国・亞洲文化宮

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悪人

20100920

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2010年/日本/2時間19分(劇場で鑑賞)
監 督  李相日
原 作  吉田修一『悪人』
出 演  妻夫木聡 深津絵里 岡田将生
     樹木希林 柄本明 満島ひかり 
     宮崎美子 光石研 余貴美子

<あらすじ>
長崎で土木作業員として働く清水祐一(妻夫木聡)は、祖父、祖母(樹木希林)との3人暮らし。仕事と祖父母の面倒をみる単調な日々を送っている。そんな中、出会い系サイトを通して関係を持っていた女性、石橋佳乃(満島ひかり)を殺害してしまう。
佐賀の紳士服量販店で働く馬込光代(深津絵里)は妹との2人暮らし。職場と家の往復をする日々だ。あるとき出会い系サイトで知り合った男、清水祐一と会うことになる。

<感想など> 完全ネタバレです。
原作を読んでいたので、ある程度内容を知った状態での鑑賞となった。しかし、テレビの予告編で2人寄り添って日の出を見ている姿からは、希望の光を連想し、「ひょっとして…」と、原作とは違うパターンを思い浮かべた。結果的には、原作を読んだ者にとっても新鮮に感じられる展開となっており、観た人の数だけ解釈が存在するという、ごく当たり前のことを再認識した次第。

あの人は悪人か、悪人ではないのか。これに明確な答えを出せるかときかれれば、自信はない。永久に続く問答とも思える。主人公清水祐一が悪人かどうかという問いについて、恋人の光代がその答えに窮している(しかし心の底では決まっている?)のを見ると、鑑賞側も自分の心に問わざるを得なくなる。法律に照らしたり、彼の育ってきた環境を考えたりと、まるで裁判員になったような心境で考えをめぐらせる。すると「悪人」という言葉のもつ曖昧さに、光代同様困窮してしまう。

主人公の二人を取り巻く多彩な顔ぶれが、物語を一層重厚なものにしている。石橋佳乃の父(柄本明)は遺された者の怒りと悲しみをたたきつけ、その鬼気迫る姿はスクリーンから飛び出してくるようだった。清水祐一の祖母が深々と頭をたれる姿には目頭が熱くなる。一方「強く生きよう」と自分を奮い立たせる姿からは観ているこちらが勇気づけられた。(バスの運転手の一言が大きい!)嫌疑のかかった大学生増尾(岡田将生)の、誠意のかけらもない人間性には驚き呆れる。(もしかして究極のマザコン?)殺された石橋佳乃の、祐一に対する言葉は、爆弾のように私の心で炸裂した。どういう状態になったらこんな言葉が吐けるのか、と。こうしたたくさんの人々の目をカメラとすれば、そのレンズから見える祐一像は、何だかとても小さい。光代もまた同様に小さい。二人の孤独感が押し寄せてくるようだ。

親子関係にも考えさせられるところが多い。
石橋夫妻は娘の援助交際に驚愕し、「こんなはずじゃなかった」という思いを深める。夫は、娘を都会に出すことに賛成した妻を責める。それでも自分たちの娘への愛情は変わらないことを認識。夫婦関係の変化も含めた再生への道が、輝いて見えた。

祐一の母(余貴美子)には「元凶!!」と思わず心でつぶやいてしまった。彼女の母、つまり祐一の祖母は、娘の非情さをほとんどあきらめて、自分が彼の母として生きる覚悟を決めている。祐一の陰鬱さ、優しさなどの心模様を垣間見るとき、母、祖母の姿も浮かんできた。この親子三代の顔は、かなり似ている!!もちろんこの作品だから感じることなのだが。

激動に揺さぶられ続けた139分。一分の隙もない映像にくぎづけで、時間の経過も忘れていた。鑑賞からしばらくたった今になって、作品に描かれている心理の重みと共に、制作スタッフ、出演者の真摯な思いが胸の中で大きくなっていくのを感じた。

trackback

悪人 :龍眼日記 Longan Diary

清水祐一(妻夫木聡)は長崎で生まれ育ち、 現在は土木作業員として働きながら祖父母と暮らしている。 これといった楽しみもなく恋人もいない祐一は出会い系サイトで知り合った 保険会社勤めのOL石橋佳乃(満島ひかり)と時折会っていたが、 ふとしたことから佳乃を

「悪人」 :TK.blog

『悪人』    製作年:2010年 製作国:日本 監督:李相日  原作:吉田修一 音楽:久石譲 出演者:妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満...

コメント

No title

こんばんは

土曜日に「悪人」を観てきた者です。
私も、数日前に先に原作を読んで行きました。
本なので当たり前なのですが、一人で夜中読み終えて、
苦しくて、切なくて、悲しみで頭がいっぱいなので、
翌日表紙が明るそうな「阪急電車」を購入したのですが、
結局また映画を観る前に「悪人」の下巻を読んでしまいました。

本を購入してからちょうど1週間位なのに、一気に「悪人」の余韻でいっぱいです。
「鑑賞からしばらくたった今になって、作品に描かれている心理の重みと共に、制作スタッフ、出演者の真摯な思いが胸の中で大きくなっていくのを感じた。」という文章に、読んだ直後はただ切なくて苦しかったことが、色々考えられるようになったことと重なりました。また、「主人公清水祐一が悪人かどうかという問いについて、恋人の光代がその答えに窮している(しかし心の底では決まっている?)」という文章は、私が「光代は必ず祐一を理解して、待っていてくれるはず」という希望を持っているので、嬉しいコメントでした。きっと、光代の心は決まっていますよね。


近くに「悪人」を読んだ人がいなく、勝手ながら、「悪人」についてお話?できて良かったです。ありがとうございました。

No title

maiさん、こんにちは。
ようこそいらっしゃいました♪

私が原作を読んだのは2年くらい前で、細かい部分は忘れています。
そこで当時のレビューを今読み返し、少しずつ思い出しました。
しばらくたったらまた原作を読んでみたいと思っています。
また違った気持になるかもしれませんね。

maiさんの『悪人』に対する「想い」がひしひしと伝わって来て、
余韻がまだこの先も続いていきそうな気分になりました。
おっしゃるように、切ない気持ちをかきたてられる作品ですね。
登場人物それぞれの心理描写も巧みで、各人の立場を考えると
ますます色々な考えが浮かんできそうです。

「光代は必ず祐一を理解して、待っていてくれるはず」という
お気持ち、よ~くわかります。
極限状態で無二の相手に出会ってしまったのですものね。
二人は再会できるのか…。想像はどこまでも広がります。

余談ですが『阪急電車』、楽しめた作品でした。

TBさせていただきました

孔雀の森さん、こんにちは。
私個人的には映画の「悪人」は期待が大きかったせいか
「きれいにまとめたな」というのが一番の感想でした。
人を殺めた祐一の生い立ちや環境が同情できるもので
増尾がめぐまれすぎた生い立ち・・・というのもちょっと面白みに欠けました。
これでは祐一を「悪人」と思う人はいないですよね。
増尾の別の一面も描いて欲しかったです。
ラストの祐一が光代に対してとった行動も予想内でした・・・。
原作は未読なので是非読んでみたいと思います。
きっと原作ではきめ細やかな心の描写などが描かれているのでは?と思うのですがいかがでしょうか。

原作を再読したいです

sabunoriさん、こんにちは♪
私は原作を少し忘れた頃に鑑賞しているせいか、あまり両者を
比較せず、画面に集中していました。
ラストは、原作を読んだにもかかわらずびっくり!でした。
祐一の目が夜叉のようになり、殺意がはっきり見えたからです。
鑑賞からだいぶたって、色々な感想が頭を巡る中、一つの考えが
浮かびました。
祐一は彼女を殺めて後を追おうとしたのではないかと。
自分に非があるように見せた、とか、彼女に罪が及ばないように、とか、そんな生易しいものではなく。
原作を読んだ限りでは浮かばない感覚です。
なお、どうしてもタイトルの「悪人」という言葉にに引きずられて
読んだり観たりしてしまう自分を感じました。
おっしゃるように祐一が殺人に到った経緯がよくわかるだけに、
情状酌量の余地がありすぎる気がしました。
祐一がもっと極悪非道だったら…というのはやっぱりイヤかも(笑)
たぶん、原作には映画で描かれていない部分も多いかと思います。
私ももう一度読んでみるつもりです。

重い映画でした。。

おはようございます♪
原作を読まずにいったので最後まで目が離せませんでした。
最後に祐一が取った行動、ラストの顔の意味・・・
これは解釈が難しそうですねー。

>祐一は彼女を殺めて後を追おうとしたのではないかと。 自分に非があるように見せた、とか、彼女に罪が及ばないように、とか、そんな生易しいものではなく。

なるほど!確かに私も祐一の目に光代の罪をかぶろうとする優しさではなく、
殺意を感じました。光代はこの行動をどう受け取ったんでしょうね。

裁判員制度が始まってますが、このような作品を見ると、
表向きの事件を見ただけでは簡単に誰が悪人かを判断するのは難しいなと。
殺人を犯す行為が絶対的な悪であっても、それまでの経緯を聞いてしまうと
感情面で大きく揺さぶられてしまいそう…。
佳乃に罵られカッとなり殺してしまった祐一ですが、
その他のシーンを見ると根は優くとても悪人には見えないですもんね。

映画化するにあたりカットされた部分で、
原作にはまだまだカギとなる部分がありそうですね。
早速原作本を注文したので早く読みたいです☆

まだ引きずっています

TKATさん、こんばんは♪
この作品はほんとうに考えさせられますよね。

>最後に祐一が取った行動、ラストの顔の意味・・・
これは解釈が難しそうですねー。
観た人の数だけ解釈があり、正解不正解で論じられないことだと
思いました。

鑑賞から時間がたって今なお、「悪人」にこだわっています。
悪人の定義って何なのだろう。
「人間の根っこが腐った者」という解釈からすれば、祐一は
悪人とは言えません。
でも法律に照らせば彼は「悪いことをした人」なんですよね。
そんなことを堂々巡りしながら考えております。

>早速原作本を注文したので早く読みたいです☆
私も買ってしまったのですよ!上下巻で2人が表紙になっているのを。
その表紙の裏に、映画談議が書いてあるのです!!
鑑賞後原作を読みたくなってしまう人は多いのではないでしょうか。
なかなか上手な販売法だなあと、感心してしまいました。
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