終末のフール : 夢の国・亞洲文化宮

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終末のフール

20100808

  著 者: 伊坂幸太郎
  
  出版社: 集英社(文庫)

  刊 行: 2009年7月
   (単行本は2006年刊行)






<内容>
「終末のフール」「太陽のシール」「籠城のビール」「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」の各短編から成り、それぞれ登場人物が少しずつ重なっている。舞台は仙台。3年後に小惑星の衝突を控えている。8年前にこれが報じられたときは、世の中全体が殺伐として多くの人命が失われた。5年たった現在は犯罪も減り、小康状態を保っている。

<感想など>
『フィッシュストーリー』で小惑星の衝突は回避されたのではなかったか?と思ったが、それは『終末のフール』の後日談だとわかった。執筆は『終末のフール』の方が先である。

今回は各物語について一言感想を書いてみたい。

『終末のフール』
中年夫婦のもとに、長年家を離れていた娘、康子が帰ってくる。彼女は父が兄を死に追いやったと考えており、そんな父を許すことができない。今更ながら家族に対する自分の態度を顧みる男。彼は「死」までの3年間で変わることができるのか。彼の今後に興味を持った。

『太陽のシール』
富士夫、美咲夫婦はどんな決断を下すのだろう。運命の限られた小さな命。「でも小惑星は落ちないかもしれない」と、出産を後押しする富士夫。彼の優柔不断もこれで終わりかな?双子だったというオチも楽しい。

『籠城のビール』
元キャスター宅に侵入した兄弟には大きな恨みがあった。過剰報道が原因で妹が自死したからだ。しかし燃えるような復讐心は、やがて生きようとする気持ちに変化し、元の兄弟関係が復活。緊迫感漂う中、空気が少しずつ変わっていく様子に引き込まれた。

『冬眠のガール』
両親が亡くなった後、美智は父の部屋にあった2,000冊以上の本を4年かけて読み終えた。彼女は冬眠から覚めた動物のように、人々を訪ね歩く。限られた間でも人との関係を求める姿からは、より自分らしく生きようとする姿勢がうかがわれた。

『鋼鉄のウール』
〈ぼく〉は中断していたボクシングを再開しようと思いたち、ジムに足を運ぶ。そこには5年前同様、会長と苗場さんの姿があった。〈ぼく〉の目から見た苗場さんは美しい。読んでいる自分までファンになりそうだ。きっと〈ぼく〉も素敵な男の子に違いない。試合が行われる見込みもないのに日夜トレーニングを積む姿からは、元気をもらった。

『天体のヨール』
何と、天体に詳しい元同級生、二ノ宮が、かの小惑星を発見したと言う。主人公の矢部はこれまで勝ち組だと思いこんでいたが、今となっては優越感なんて全く無意味だと考える。彼は他の登場人物と違って、死に向かっている。思わず「ストップ!小惑星は落ちないんだから!」と叫びそうになった。

『演劇のオール』
倫理子は役者である。早乙女さんの家では孫娘を、亜美ちゃんのところでは姉を、勇也と優希の家ではお母さんを、そして一郎と一緒のときは恋人を演じる。小惑星騒ぎがなければこんな出会いもなかったはずだ。倫理子は知らないうちにみんなの人間関係をつなぎ合わせる役どころを演じていたわけだ。勇也と優希がビデオの最終回を観ることができたのは偶然?それとも必然?

『深海のポール』
レンタルショップの店員、渡部が主人公。彼は、父、妻子との4人でマンションに暮らしている。マンションの屋上にやぐらを組みたて続ける父が、最初は頑固に思えたが、希望を失わない姿には勇気が出る。渡部の「延滞料金100万円だと言ってみたかった」というセリフが面白い。渡部もまた、人々のパイプ役的人物だ。

読んでいくうちに、自分ならどういう心理状態になるだろうと考えてしまった。この物語は、毎日のほほんと暮らしている自分たちに対する警告なのでは?と、ちょっと緊張が走る。終末までの3年は長いのか短いのか。全体に漂う落ち着いた雰囲気には、安心と不安両方を感じてしまう。

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「終末のフール」 伊坂幸太郎 :TK.blog

『終末のフール』  著者:伊坂幸太郎  出版社:集英社   <簡単なあらすじ> 「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」...

コメント

自分なら…と考えてしまいますよね。

こんばんは、孔雀の森さん^^
この「終末のフール」は私が初めて読んだ伊坂作品なんですよー。
どんな楽しい本だろうとワクワクしながら読むと…
なんともいえない不安感に陥った記憶が^^;

藁をもつかもうとする人、落ち着いて暮らしている人、
それぞれの感情がよく描かれて楽しくはあるんだけど
自分だったらどうするんだろうと思わず考えちゃいます。

>『フィッシュストーリー』で小惑星の衝突は回避されたのではなかったか?と思ったが、それは『終末のフール』の後日談だとわかった。

『フィッシュストーリー』は今作品の後日談だったんですか!
知りませんでした~。教えてくださりありがとうございます^^
っていうことは回避された訳だから今作品の人達は助かるんですね。
それを知った今なら不安感なく読み直せるかも(笑)。

私の記憶力も終末的…。

TKATさん、こんばんは♪
今気づきました。私、2年前にコメントしていたのですね!
すっかり忘れていました。
覚えていれば読んですぐうかがったはずなのに。
わ~ん、私の記憶力も終末的だ~(泣)

もし自分が登場人物たちと同じ状況に陥ったら…
私も思わず考えてしまいました。
「回避される」と思わずに読んだ方がリアルな状況を疑似体験できるのかも。
でもこれは怖いですね~

色々な人たちがいるけれど、落ち着いている人の方が多くて、
こういう気持ちになるまでの苦労を考えさせられました。

フィッシュストーリーはなぜか映画の印象の方が強くて、
レンタルビデオ屋さんや、方舟の人が「終末のフール」の人物と
かぶって見えてしまいます。
だからフィッシュストーリーの後日談と勝手に思っているのです。
(というか、そう思い込んで安心したいのですね、私)

今度はどの伊坂作品を読もうかな~と、思っているところです。
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