「文革」を生きた一知識人の回想 : 夢の国・亞洲文化宮

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「文革」を生きた一知識人の回想

20100523

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著 者: 朱 沢秉

原 題: 狗崽子雑記

訳 者: 細井和彦  李 青

出版社: ウェッジ

刊 行: 2010年2月









<内 容>
第一章 十年間の悪夢
 ジャーナリストだった父が右派分子として投獄され、家族が離散した。
 著者は「犬っころ」と呼ばれ、理不尽な差別に耐える日々をおくる。
     
第二章 苦界に船を漕ぐ
 知識分子として農村に下放され、日々過酷な労働を課せられる。
 著者は身分的差別のためその境遇から抜け出せないが、条件のよい場所に
 移動できる者もいた。
 
第三章 一筋の光明
 撫州師範学校の教師となり、妻水鏡との間に子供が生まれる。念願だった
 大学受験の申請は却下され、通勤条件の厳しい職場の異動もままならない。
 文革は終わったが父親の名誉回復を願い出ても容易に受け付けられない。


<感想など>
理不尽な境遇の描写としては、今まで読んだ中では一番激しいものだった。
映画などで文革におけるつるしあげの凄まじい場面は見ているものの、
それらはすべて人が作り上げたもの、つまり作品に過ぎなかった。
また、10年ほど前に出版されたあるドキュメンタリー作品は、
耐えに耐えた人々を称えることが主だったと記憶している。
今回読んだ手記は、理不尽さを徹底的に分析、糾弾し、
その時代背景に踏み込んで書かれており、終始戦慄をおぼえながら
ページを繰っていた。

著者は1947年生まれで北京の中学を卒業後、江西省に下放される。
父親が反革命罪で投獄されると家族も全員反革命の烙印を押され、
紅衛兵の標的となる。
労働者階級との間には厳然とした差別があり、
どんなにその人物が優秀であっても這い上がることが
できなかったという。
「犬っころ」という最下級を示す言葉が繰り返し使われ、
その卑下した状況にはどうしようもない暗闇を感じた。

この手記の中では、多くの人が尊い命を落とす。著者の父母や伯母、
親しい人々が、失意の中で亡くなっていく。
著者の父の場合はその死もすぐに知らされないが、これには
この時代ならではの理由があったのだ。
匿名でその死を知らせてくれた者にとっても、
その行為自体命がけだったとは、にわかには信じがたい。
その後父の名誉回復のために奔走する姉と著者の姿、
たらいまわしにする関係機関の状況については、
ただ驚くばかりだった。すべてが想像もつかない出来事である。

先日、紅衛兵に蹂躙された人々と、元紅衛兵の人々とを取り上げた
ドキュメンタリー番組を見た。
本書の著者同様、蹂躙された人々はその恨みを決して忘れないという。
元紅衛兵にしても、若い頃固く信じて行ったことが180度間違いだったと
批判されやりきれない思いにかられるという。
彼らの中には自分の存在価値に疑問を持つ人もいることだろう。
あの狂気は何だったのかと、誰もが思うことだろう。
中国では、こうした立場の人々が共存しているのである。

共訳者の細井和彦氏が後書きで述べているように、私も、以前読んだ
『上海の長い夜』や『ワイルド・スワン』には、物足りなさを感じていた。
それは時代のせいだろう。
今ようやく激しい思いを吐露できるようになったのだと思う。
著者と同じ気持ちを抱く人々は、数限りなくいることだろう。
今後、あの狂気の時代を斬るような作品、手記が次々と出るような気がする。

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