孤高のメス ― 外科医 当麻鉄彦 ― : 夢の国・亞洲文化宮

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孤高のメス ― 外科医 当麻鉄彦 ―

20100503

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著 者: 大鐘稔彦
出版社: 栄光出版社
刊行年: 2005年1月

<あらすじ>
甦生記念病院の外科医当麻鉄彦は、名門医大を卒業後東京やピッツバーグなどで腕を磨いた経歴を持つ。優れた手技や温厚な性格から、彼は同僚や患者から大きな信頼を得ていた。近隣地域の近江大医学部助教授実川からは、生体肝移植手術の共同執刀を依頼され、これを承諾、見事な手術をする。結局移植を受けた乳児は死去、実川はバッシングを受けるが教授に昇進する。
町長の大川が甦生記念病院に担ぎ込まれる。当麻は、患者は肝移植によってしか助からないと、院長の島田に手術を打診する。島田は大川の再出馬を希望する立場から、自病院での肝移植を承諾、秘密裏に工作を進める。


<感想など>
上巻632ページ下巻635ページをGW前半で読了。一気に読ませる内容である。
実は続編の『孤高のメス 神の手にあらず』を先に読んでいた。途中で前編の存在を知ったが物語の勢いを止めるつもりはなかった。ラストを知っており、折にふれ続編の光景が目に浮かぶ、という、ちょっと特異な読書体験だった。

物語の中心を貫くのは、目の前の患者を救うことに尽力する医療従事者である。
その主人公、当麻鉄彦があまりにも完璧すぎるからか、周りの人間の俗っぽさにかえって興味がわいた。その一人が、近江大学医学部助教授の実川である。医療に対する姿勢は真摯で、手術の腕も超一流である。しかし彼の頭には常に出世があり、生体肝移植もその足がかりなのだ。彼は、年下の当麻を尊敬し、世俗にまみれない姿を心底羨ましいと思いつつ、やはり出世街道をはずれるわけにはいかない。彼の矛盾から発する苦悩が重く響く。

医者としてのモラルを欠く人物に対しては容赦ない。作者自身の怒りがその人物に注がれていると思えるほど、辛辣な描写である。出勤しても新聞ばかり読んでいる医者。緊急時に連絡がつかないようにする医者。手技が下手なのにやたら威張る医者。患者自身も賢くならなければいけませんと、言われている気分である。

甦生記念病院の島田院長は、医者としての気概はあるのだが、経営者の立場がからむと高潔な精神だけ唱えているわけにはいかない。当麻に、肝移植を行う大義名分としてレシピエントを「将来の義父」とするよう提案し、当麻もまたこれを了承する。目の前の患者の救命を第一とする当麻と、病院のために町長に生きていてもらいたいと
する院長。さらに形式上婚約することになった大川翔子。一つの医療行為にさまざまな思惑が絡み合い、真の医療とは何なのかを考えさせられる。

終盤に台湾高雄の病院や医者の姿が描かれる。続編はここからのスタートで、主人公が海を渡った経緯がようやく理解できた。

今までさまざまな医療小説を読んできたが、その中でもこの作品の術野の場面は、他と比肩できないほど専門性が高いと思う。内臓の状態、手術の用具、手の動きにいたるまで、すべてが詳細である。素人では理解不能な用語で埋め尽くされているページもあり、正直のところその光景が眼に浮かばない場合が多い。それでも未消化にならないのは、専門用語がかえってリアルな感覚を与えるからだろうか。

近々堤真一主演の映画が公開されるらしい。著者自身も役者の台詞に感動したとのことで、どんな作品なのか気になるところだ。

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