伊坂幸太郎『ラッシュライフ』 : 夢の国・亞洲文化宮

スポンサーサイト

------

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』

20100306

ラッシュライフ本

  出版社: 新潮社(文庫)


  刊 行: 2005年5月(単行本は2002年刊行)



<内容・感想>
舞台は仙台。登場人物たちは、ある時系列の中で出会い、すれ違い、別れていく。中心となるのはエッシャー展のポスターと、「好きな日本語を書いてくれませんか?」と道行く人に声をかける外国人女性。時系列や人物が複雑に交錯しており、あらすじは書けそうもない。しかし、最後まで読んでから、気になるところを再読すると、不思議現象は解明され、時系列が整頓され、人間関係も把握できてすっきりした。今回は登場人物を2人一組ととらえて考えることにする。

黒澤と佐々岡
ポリシーある泥棒と元画商。黒澤がある部屋に上がりこんできたところに佐々岡が<帰って>きた。やがて2人は同級生同士であるとわかり身の上話が始まる。黒澤はいつでもどこでも冷静沈着。権力にこびず弱者の立場を理解しようとする、その一貫した姿勢が好きだなあ。佐々岡は彼に再会して決心が固まる。黒澤は人の生き方に指針を与える何かを持っているように思える。

戸田と志奈子
佐々岡を陥れたのが戸田。画家の志奈子は、その戸田に振り回されっぱなしである。拝金主義の戸田が、最後で思い通りにならなかったのが痛快だった。

青山と京子
サッカー選手の青山と精神科医の京子は、ともに配偶者がいて不倫関係にある。京子は青山と一緒になりたくて、彼の妻を殺す計画を立てるのだが…。青山が妻と愛人の間で右往左往する姿と、京子が「バラバラの死体がくっついた」と恐れおののく姿は、醜く映る。人間の深奥を見せられた気がした。

塚本と河原崎
この人たちの心理が一番わかりにくかった。教祖である「高橋」を解体しようと言う塚本。塚本が「解体」するそばで、その構図をスケッチする河原崎。教祖に心酔しきった男たちの向かう先はどこなのか。彼らの一瞬の動作が、青山と京子の運命を左右したと考えると、本当に人生には何が起こるかわからないと改めて思う。「激しい思い込み」には震撼した。

豊田と老犬
理不尽なリストラ、40回もの不採用通知、妻子との別れ…。登場人物の中で一番辛酸をなめているのは、この豊田ではないだろうか。偶然ついてくるようになった老犬は、ピンチの豊田を何度も救う。拳銃を手に入れ、襲い掛かってきた青年を撃ち、郵便局強盗を犯し、さらにリストラを言い渡した舟木宅に侵入。しかし黒澤に会って気持ちが変わる。ここでも黒澤が大きな影響力を及ぼす。作者の彼に向ける目が優しいと思った。大事なものは何ですか、と思わずみんなに問いかけてみたくなった。

最初は何の関係もない人々が、偶然の重なりでつながっていく。こういうストーリーが好きなのは、自分もまた、誰かとつながっていたいと考えているからだろうか。物語に明確な主題は見つからないが、未来が開けているような感覚は心地よかった。

trackback

「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎 :TK.blog

『ラッシュライフ』    著者:伊坂幸太郎  出版社:新潮社 新潮文庫 <簡単なあらすじ> 才覚に富んでいるが傲慢でお金が...

コメント

そういやもうすぐ奈良でエッシャー展が始まる。。

>今回は登場人物を2人一組ととらえて考えることにする。

おお!このような感想の書き方があったとは!
確かに時系列や人物が複雑に交錯なのでブロガー泣かせですよね(笑)。

自分の感想を読み直すより孔雀の森さんの感想を拝見した方が
内容を徐々に思い出すのはなぜ…。せ、せつない(泣)。

>こういうストーリーが好きなのは、自分もまた、誰かとつながっていたいと考えているからだろうか。

そうかもしれないですね。私も誰かと繋がっていたいから
ブログをしたりSNSをしたりしていうのかもと改めて思っちゃいました。
ブログを通しこのように孔雀の森さんと出会えたのも偶然の出会い。
ということでこれからもよろしくでーす♪

エッシャーの絵、興味津々です♪

TKATさん、こんばんは♪
私はTKATさんのレビューを大いに参考にさせていただきました。
自分と違う視点に出会うのが、ブログ交流の楽しみですね。

死体がバラバラになったり、くっついたり、という現象は、
不思議としか言いようがありません。
ところが、それが河原崎の証言から解明されてしまうとは、
考えてもみませんでした。
偶然の重なりができすぎているような気もしましたが。

エッシャーの絵は、実物を見てみたいです。奈良で開催ですか。
今まで名前だけは知っていましたが、こうして小説で読むと
興味がわいてきます。
ボブ・ディランといい、エッシャーといい、聴覚、視覚に訴える場面では、追体験したくなります。

ブログでの出会いとつながり、大切にしたいです。
こちらこそ、今後ともよろしく!!です♪
非公開コメント
プロフィール

孔雀の森

Author:孔雀の森
いろいろな出会いを
大切に♪

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最近のコメント
カテゴリー
最近のトラックバック
最新の記事
リンク
ブログ内検索

Pagetop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。