有川 浩『フリーター、家を買う。』 : 夢の国・亞洲文化宮

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有川 浩『フリーター、家を買う。』

20100114

フリーター


出版社: 幻冬舎




刊行年: 2009年8月






<あらすじ>
武誠治は大学卒業後就職した会社を3ヶ月で退社、以来フリーター生活を続けている。怠惰な性格から一つのアルバイトも長続きせず、エリートサラリーマンの父親との折り合いは悪くなる一方だ。そんなある日、突然母親が鬱状態になる。嫁ぎ先の名古屋から駆けつけた姉の話によれば、母は長年近所から嫌がらせを受けている上、父親は自分以外に無関心で母への理解がないのだという。母にとっては、環境の変化、つまり転居が一番の治療法で、そのためにはまず資金作りをしなければならない。誠治はアルバイトと母の介護をしながら本格的に就職活動を始めるが、前途多難な状況だ。工事現場で一緒に働く年配労働者たちは、そんな誠治のよき相談相手である。

<感想など>
タイトル『フリーター、家を買う。』は、正確には第5章のタイトル、『元フリーター、家を買う。』である。これだけみると、ああ、フリーターを脱却したのだな、と判断できる。しかしその経緯はまさに紆余曲折。家族関係、近隣との関係、介護、就職活動、会社での仕事、資格取得…。誰もが思い当たるであろう出来事が次から次へと現れて、まるでドラマ仕立ての生活百科だ。

母親の鬱状態を最初に知ったのが遠方に嫁いだ姉で、一緒に住む家族が気づかなかった、という事実には驚いたが、ありえなくもない。父親はお金を自分のためばかり、家族に対する思いやりは微塵もない、と、娘に糾弾される。プライドが傷つけられますます頑なになり、母の通院に付き添おうともしない父。序盤は、この家族に未来はあるのか、と心配になる。

やがて主人公は一念発起。しかし第二新卒と言われる彼に内定への道のりは遠い。そんな彼を助けたのは工事現場の先輩たちだ。同年代の父親に理解を示し、父親対処法のアドバイスをする。こうして誠治は父のプライドをくすぐる方法で、就職活動について相談すると、父子の間に氷解の兆しが見えてくる。父親が指摘する履歴書の書き方や、面接での応対の仕方などはどれも説得力がある。さらにこれを実践した誠治が結果を出すと、そのアドバイスが最強に思えた。まさに「シューカツ者必読書」だ!

後半は、誠治が就職した「大悦土木株式会社」での仕事が中心に展開される。現場上がりで入社したその会社では、人事も経理も、つまり全てを任される。今度は採用側の気持ちが語られ、さらに業務のための資格取得が細かく提示される。いつのまにか、以前の怠惰で言い訳ばかりしていた誠治が姿を消し、謙虚で、誠実で、真面目な誠治がてきぱきと働いていた。いやあ、実際はこううまくいくはずないよ、と思う人もいるだろう。私もそのうちの一人だが、こういう物語もいいではないか、とも思う。有川作品でおなじみのベタ甘恋愛は、今回は封印かと思われた矢先、最後の最後でちょっとその兆しが見えた。そんな心遣いのある展開が嬉しい。

強い意志と行動力を持った誠治の姉亜矢子。営業でも現場を手伝ってしまう豊川、一流大学卒で現場監督志望の真奈美。いずれも興味深い、個性的な人物だ。最後に描かれた豊川の視点が面白かった。ほかの人物のサイドストーリーも読んでみたい。

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『フリーター、家を買う。』    著者:有川浩  出版社:幻冬舎 <簡単なあらすじ> 新卒で就職したのもの3ヵ月で辞めてしまっ...

コメント

タイトルにちょっと騙された・・・

すっかり忘れた頃に図書館から手元にきました♪
楽しい内容の本だとばかり思っていたので、読み始めてびっくり。
最初はブルーな気分で読み始めたのですが、家族再生に奮起する姿や
父子との関係を見てると明るい光が見えてき、途中から安心しながら読めました^^
と思ったら後半はフリーターが元フリーターになってるし(笑)。
しかもいつのまにか恋の花が芽を出してるときてる!

>ほかの人物のサイドストーリーも読んでみたい。

同じく読みたいです~。
引っ越しして母親の状態がどうなったのかも知りたいですね。
有川さんの著書っていつも続きやサイドストーリーが読みたくなっちゃう。
魅力ある登場人物の描き方がうまいんでしょうね^^

私も騙されました…

TKATさん、こんばんは♪
私もタイトルに騙されたクチです。
「フリーターにだって家が買えるんだぞ!」というアピールかと
思ってしまいました。
ホントだとすれば「ま、フリーターでいっかー」という若者が増えて
困ったことになりそうです。
さて物語の方ですが、最初はほんとうに深刻な状況でしたね。
特に、お父さんはこの苦境をどう理解するのか、変われるのかと
心配になりました。
TKATさんがおっしゃるように、この世代の特徴が見えますね。
ともかく、よい兆しが見えて、安心しました。

>魅力ある登場人物の描き方がうまいんでしょうね^^
ほんと、そうですね。その人物を深く知りたくなるんです。
物語の登場人物にすぎないのに、いつの間にかこちらの胸に
飛び込んできて、独り歩きしてるんです。

今回はこの物語で、社会のいろいろなことを学ばせてもらった
気分です。
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