母なる証明 : 夢の国・亞洲文化宮

スポンサーサイト

------

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

母なる証明

20100112

          

2009年/韓国/2時間9分(劇場で鑑賞)
監 督  ポン・ジュノ
英 題  MOTHER
出 演  キム・ヘジャ  ウォンビン  チン・グ  ユン・ジェムン

<あらすじ>
漢方薬品店で働く母親(キム・ヘジャ)は、夫を亡くしてから一人で息子トジュン(ウォンビン)を育ててきた。ある日女子高生が殺害される事件が起こり、トジュンが容疑者として連行される。母親は彼の無実を証明するため、弁護士を頼んだり、息子の友人ジンテ(チン・グ)の身辺を探ったりする。
以下は完全なネタバレです。

<感想など>
この作品を好きかと問われたら迷わず「嫌い」と答えるだろう。もう一度観たいかと問われたら、これも迷わず「観たい」と答えるだろう。嫌いなのに観たい。矛盾した回答だが、これが正直な気持ちである。

まず「嫌い」と答えた理由。誰一人として共感できる人が登場しないこと、制作側の、人間を見つめる目が悪意に満ちているように感じたこと、救いが全くないこと…などなどだ。今まで観てきた作品の多くは、どんな非情な人間でもどこかに許せる一点があった。(そういう作品ばかりを観てきたせいだが)だからバッドエンドでも今回ほど「嫌い」とは思わなかった。

次に再鑑賞したい理由。すべての台詞や場面に想像を膨らませる要素が含まれていると思ったからだ。もう一度観たら新たな発見がたくさんあるはずだ。そして極端な話、真犯人さえ実は違うのでは?と疑うかもしれない。この作品は限りない好奇心を引き出してくれる。おぞましいものも、その目をしっかり開いて見よ!という声が聞こえたような気がした。

トジュンが連行された時点では、本当に冤罪だと信じて疑わなかった。警察の捜査はずさんだし、トジュンの行動に怪しい点は見つからないからだ。
それに、この作品の邦題「母なる証明」から、物語は、母の息子に対する想い→無罪を証明するための奔走→冤罪が晴れたときの情景、というぐあいに展開するのだろう、とほとんど信じ込んでいた。
前半は、犯人探しはこれから始まるのだ!と、ミステリー感覚でこの展開を追っていた。

さて、実際彼女は奔走する。しかしその奔走が、だんだん息子のためと思えなくなった。
母とトジュンの関係は、彼に障害があるとはいえ、同じベッドで寝るところ、バス停で息子の後始末してやるところなど、その緊密さは異常に映る。トジュンが収監された後の母親は、まるで肉体の一部を失ってしまったかのようだった。彼女が奔走するのは当然である。奪われた肉体の一部を取り戻さなければならないのだから。息子のため、というより自分のための奔走である。一方のトジュンは、母と離れてから、明らかに変わっていく。ここでの生活はいいと、母親に言ってみたり、時折記憶がよみがえってきたり。別居が、双方の心を変えたように感じる。

ところで、トジュンをいいように使っていた友人、ジンテにも、好奇心が膨らむ。
彼はトジュンの母親に犯人と間違われたことに怒り、金を要求。そして彼女の真犯人探しに一役買おうとアドバイスし、「この町の人々は信じられない」という意味のことを言う。(この台詞が意味深だ)
実際、彼の手腕は鮮やかで、殺された女子高生が援助交際をするにいたった経緯は、彼なしでは明らかにされなかっただろう。
ジンテの行動を振り返ると「ひき逃げ犯の教授を懲らしめてやろう」、「警察とは別に真相を探ろう」、など、権威に対する挑戦的態度がうかがえる。
終盤、焼け跡で嬉しそうに飛び跳ねるジンテと恋人の姿が映し出される。母親が放火して全焼させた男の家があったところだ。
もしかして、すべてはジンテが仕組んだことではないか。
彼は、自分の欲求を満たすためにトジュンの母を利用したのではないか…。
もちろん映画ではそんなことは一言も言っていない。

真犯人は誰か。
トジュンは携帯電話の画面に映っていた老人の姿を見て、はっきりとうなずく。
このときのトジュンの目は、以前のうつろな目とは明らかに違う。
だから、廃品回収で生計を立てているその男が真犯人だと、見ている私も確信した。
ところがその男が母親に話したのは、トジュンが女子高生を殺害したときの、凄惨な思い出だった。
それでも私にはトジュンが犯人とは信じられなかった。
老人の証言は、真実であると断言するに足るのだろうか、という疑いが頭をもたげた。
トジュンは焼け跡から、母親が常に携帯していた、ハリの入った箱を持ってきて、旅行前の母親に渡す。なぜ彼は焼け跡に行ったのか…。ジンテたちと一緒だったのでは?
そしてこれを渡すときの微笑は、以前とは違うように感じた。
彼の記憶力は戻っているのではないか。もう「バカ」と言われてもキレないのではないか。
妄想が膨らんでいく。

母親はすべてを忘れるという太もものつぼに、自分でハリを刺し、あたかもすべて忘れ去ったかのように踊りだす。バスの中で仲間と踊る姿は太陽の光で彩られ、金色に輝いている。
なんだか観客も含め全員が騙されているのではないかと思えてきた。
だからもう一度観て確かめたくなった。

「嫌い」というのは、見たくないものを見せられたことに対する反発かもしれないと、今これを書きながら思っている。

trackback

母なる証明 :龍眼日記 Longan Diary

静かな田舎町で起こった殺人事件。 女子高生が何者かに殺されその死体は建物の屋上に放置されていた。 その容疑者としてトジュン(ウォンビン)が拘束される。 自分の息子が人殺しをするはずはないと固く信じるトジュンの母(キム・ヘジャ)は 息子の無実を晴らすべく...

コメント

お見事!

孔雀の森さん、こんばんは。
この作品、おっしゃるとおりまさに好きじゃないけどもう1度観てじっくり確かめたい・・・
そんな映画ですよね。
それにしても作品解析、お見事です。
そうですよね・・・確かにあの老人の話を鵜呑みにする裏づけは何もないのです。
あのジンテのある意味妙な協力的な態度もひっかかる。
いや~もう2度と観ないだろうと思っていた作品ですが
(だって見てはいけないものを見てしまった罪悪感のようなものを感じてしまうんですもの)
確かめなければいけない!という使命感が湧き上がってきてしまいました。(笑)
トジュンは母にとって身体の一部・・・その通りですね!

こんばんは

わたしも2回劇場で観たのですが
再見したくなったのは
いろいろ確かめたいことがあったから。
そういう意味では,「後をひく」作品ですよねぇ。

真犯人はわたしはトジュンだと思うのですが
案外あの老人が・・・というのもアリですよね。
それに,あのジンテの胡散臭さ!
お友達ブロガーさんの記事で
この作品の原作みたいなのが(監督の作だそうで)あって
その中でジンテは犯人じゃないけど
この事件についてかなりのことを実は知ってて
老人からトジュンの犯行のことを聞いて(犯行直後)
あのゴルフボールを遺体のそばに置いてきたりしたそうですが・・・
映画になったときにはそういう設定を変えていましたが
ジンテが実は
トジュンのことを思いやるいい友人などではない,という雰囲気は
映画からも伝わってきましたね~

とにかくワケあり人間ばっかりで
母子の愛情もエゴや贖罪の匂いもぷんぷんして
誰にも感情移入できなかったのはよくわかります。
とにかく凄い作品ですよね。
好きではなくても,一度観たら決して無視できない・・・
そんなダークなパワーのある作品でした。

母子の相似性

sabunoriさん、こんにちは。
お褒めの言葉、照れくさいと言うか何と言うか…
恐縮です。
この作品を観て、今まで綺麗なもの、崇高なものをえり好みし、
恐ろしいもの、醜いものは、避けてきた自分に気づきました。
映像的に残虐なシーンは出てきませんが、人間の心をえぐる
という意味での残虐さはあふれているように思います。
ラスト前に薬草を切っている母の姿が再び映し出されたとき、
今度は指じゃ済まされないぞ…腕か、足か…と震えながら見ていました。
(私は基本的に血がダメなので…)
でも何もなく、肩透かしを食ったような感覚が忘れられません。
sabunori さんがおっしゃった、母子の相似性については、
ああ、なるほど、と思いました。
親子が似ている…そういう発想が全くありませんでした。
最鑑賞したらまた違った感覚が生まれそうですね。

原作に興味津々

ななさん、こんにちは。
ななさんは劇場で2回ご覧になったのですね。
場面ごとの綿密な解釈や、数々の鋭い推理については、
素晴らしい観察眼!と思いながら、たっぷり楽しませていただきました。
ところで、監督さんの原作には興味津々です。
観終わっても真相は何なの?という疑問が頭を離れません。
そうか~やっぱりトジュンが犯人か~…。
実は彼が犯人であってほしくないと、心の底で思っていたんです。
母親の子を想う気持ちとか、子がその気持ちにこたえる姿とか、
そんなありきたりの結末に涙、涙…を期待していたんです。
今では、甘かったな~私、という気分です。
ジンテはほんとうに身震いするほど恐ろしい人物。
そうですか、いろいろ画策するような人だったのですね。
そういう場面をすべて映し出していたら、想像の余地がなくなって
しまうから、ちらりと見せるだけでよかったのでしょう。

今年どのくらい映画を観るかわかりませんが、おそらく、
印象的な作品として間違いなくベストテンに入ることでしょう。
非公開コメント
プロフィール

孔雀の森

Author:孔雀の森
いろいろな出会いを
大切に♪

カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最近のコメント
カテゴリー
最近のトラックバック
最新の記事
リンク
ブログ内検索

Pagetop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。