伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』 : 夢の国・亞洲文化宮

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伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』

20100110



  出版社: 新潮社


  刊 行: 2007年1月





<内 容>

以下4編の短編集。

① 動物園のエンジン
主人公の思い出話。深夜の動物園で、シンリンオオカミの柵の前に人が寝ているのを発見。動物園職員恩田の話によると、その男は永沢という元職員で、彼がいると動物たちが活気づくのだという。

② サクリファイス
黒澤の本業は泥棒で、副業が探偵である。ある日副業の依頼を受け、東北地方の小暮村に山田という男を捜しに出かける。出会った村人の話によれば、村には昔から「こもり様」の風習があるのだという。

③ フィッシュストーリー
雅史は車中で、『僕の孤独が魚だったら』という、小説と同じフレーズがある曲を聴く。演奏途中に1分間の中断があると友人から聞いてそのレコードを購入、カセットテープにダビングしたのだった。ちょうどその曲が途切れたとき、突然女性の悲鳴が聞こえてくる。

④ ポテチ
泥棒稼業の今村がプロ野球選手尾崎の家に入ったときのこと。留守番電話に女性の声で「男につきまとわれているから来てくれ」との伝言が入る。今村と恋人大西は、指定されたコンビニで、電話をかけたと思われる小柄な女性と会う。

<感想など>
いずれも独立した作品で、物語上の関連性はないが、②「サクリファイス」と④「ポテチ」には黒澤という泥棒が登場、彼の人間性が興味深い。また、いずれも、一見関連がなさそうな人間関係や出来事が後でつながっていく点に共通性を感じた。

①「動物園のエンジン」は、こじつけとも思えるような推理や、ある人間に対する想像が、どんどん膨らんでいくところが面白い。「エンジン」とは、永沢さんが持っている、動物を活気づける不思議なオーラのこと。主人公たちが得た永沢さん情報は、結局真実なのか、違うのか。最後までモヤモヤは晴れなかった。

②「サクリファイス」は寒村の人間関係や風習がミステリアスで、読んでいるうちに背中が寒くなった。結局山田という男はいるのかいないのか。村の不思議と主人公黒澤の仕事の進展状況が終始気になった。黒澤は、物事をつきつめようとする面と突き放す面の両面を持ち合わせた、興味深いキャラクター。ラストは意外だった。ただ、オチにしてはストンとこない、奇妙な感覚だった。

③「フィッシュストーリー」は、映画の方を先に鑑賞したので、映像と一致する場面では登場人物の顔がちらちらと見えた。地味な原作が、映画では、色彩的にも、物語的にも、思いっきりはじけていたように感じた。30年前のレコーディングで無音とされた部分、「なあ、この曲はちゃんと誰かに届いているのかよ?」という叫びは、結果的に世界の危機を救ったことになる。原作ではその危機が具体的でないのに対し、映画では明確に示してあるのが良かったと思う。無関係に見える出来事が最後につながったとき、驚くとともに安堵感に包まれた。

4編の中では④「ポテチ」が一番好き。まず、今村と大西の出会いが突飛で面白い。あまり人間に深入りしようとしない人々だが、職業柄人間に対する興味が人一倍強いところには納得。今村がプロ野球選手尾崎の家に入った理由が、最後の最後にわかってほろっとくる。また、冷徹に見える黒澤が、誰かのために尽力する姿にも打たれた。泥棒稼業の黒澤も今村も、犯罪に手を染めていることに変わりはない。しかし悪人というより、むしろ善の塊(かたまり)のように見えるのだ。
だからどうなのだ、と自問しながらも面倒な問題にズブズブ入り込んでしまう黒澤。冷たい外見とは裏腹に、彼の胸のうちは情でいっぱいではないだろうか。今村の母親を想う気持ちが、彼の心のひだを動かして、ついに奇跡を起こしてしまう。
あの双子の兄弟が登場する漫画を思い出すと、感慨もひとしおだ。

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小説「フィッシュストーリー」 伊坂幸太郎 :TK.blog

『フィッシュストーリー』    著者:伊坂幸太郎  出版社:新潮社 ・『動物園のエンジン』 ・『サクリファイス』 ・『フィッ...

コメント

原作は地味でしょ(笑)?

映画→小説と私とは逆パターンでご覧になってらっしゃるので
感想を楽しみに待っておりましたよ^^ 
原作『フィッシュストーリー』はあっさりとしていて、よく映画で
あそこまで上手に話を広げまとめたなという感じがします。
この作品は繋がりが理解できた時、ホントに感動しますよね~♪

伊坂さんの作品はありえないシチュエーション(現実離れしたの)が多いですが、
それを全く気にさせず面白く感じさせてしまうところはさすが!という感じです。

最近、伊坂さんを読んでないなぁと図書館の蔵書検索をしたら…
2009年に出版された本を予約してないことに気付きました。
あぁ、孔雀の森さんのこちらの日記を拝見しなければ伊坂さんのことは
しばらく忘れていたことでしょう…(TT)。思い出させていただき感謝でございます♪

映画は鮮烈でした

TKATさん、こんにちは♪
おっしゃるように、現実離れした出来事なのにそれを
感じさせないところが素晴らしい!!
作者の手腕なのですね~

私は今まで、どちらかというと原作→映画のパターンが
多かったように思います。
映像を観た時の違和感がイヤで原作だけにとどめたケースも
多いかも。
でも映画『フィッシュストーリー』はすべてが鮮烈で、原作を先に
読んだとしてもそれにとらわれずに楽しめるだろうな、
と思いました。
私の場合、もしTKATさんのように原作が先だったら、時がたつと
原作の方を忘れてしまうかもしれません。

伊坂幸太郎作品は、只今『重力ピエロ』を予約中で、
あと6人!!
6人は長いですよね。貸し出し期限は2週間ですから。
黒澤さんに会える作品も発掘したいです。
楽しみが増えて嬉しいわ~ こちらこそ、情報を提供してくださる
TKATさんに感謝!です。
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いろいろな出会いを
大切に♪

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