黒木 亮『排出権商人』 : 夢の国・亞洲文化宮

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黒木 亮『排出権商人』

20091225

出版社: 講談社
刊行年: 2009年11月
<あらすじ>
新日本エンジニアリングの地球環境室長、松川冴子は、排出権ビジネスを成立させるため、マレーシア、中国、アルメニア共和国などを視察、各国企業との交渉に奔走する。
ニューヨークのカラ売り専業ファンド、パンゲア&カンパニーの北川靖は、排出権ビジネスに注目、排出権価格の推移を見守り、やがて勝負に出る。
国連CDM理事会理事、国枝朋之は、理事会で各国の利権を目の当たりにする。国益を考える各国代表は、激しい攻防を繰り広げる。
<感想など>
まずは、耳慣れない環境用語について、巻末の「経済・環境用語集」から抜粋してみよう。

排出権(carbon credit)
温室効果ガスを排出することができる権利。

CDM(clean development mechanism)
温室効果ガス削減義務を負っている京都議定書の付属書Ⅰ国が関与して、削減義務を負っていない非付属書Ⅰ国において排出削減プロジェクトを実施すると、CER(認証排出削減量)が発行される仕組み。

また、帯には次のように書かれている。
空気が大金に化ける。これが「排出権ビジネス」の実態だ。

(以上引用)

物語では、登場人物の台詞を借りてわかりやすく説明する趣向もあるのだが、理解が及ばない部分が多かった。
ちょうどCOP15開催期間と重なりタイムリーだと思ったものの、環境、経済、金融の専門用語が飛び交う文章は、正直のところお手上げ状態だ。
しかし主人公が祖母と自分の人生を重ね合わせるところや、中国企業との厳しい折衝、さらに出張先での食事などは、興味深く読めて、わからないなりにも充実感はある。

主人公松川冴子は40台半ばで独身、女性総合職第1号という立場だ。ビジネスの現場では同期の男性にどんどん先を越されながらも、着実に仕事をこなしていく。
マレーシアの養豚場での汚水処理、中国山西省の炭鉱メタン回収、中国ウルムチの風力発電事業…。排出権を求め、冴子はいつも飛び回るような忙しさだ。しかし台詞にはあまりきりきりした感じはなく「~だなあ」と伸びる語尾が印象的だ。

対照的なのがカラ売りファンドの北川だ。いつも目をぎらつかせて株価の動向を追っている。新日本エンジニアリングの仙波との闘いなどを見ていると、この人の生きがいはどこにあるのだろうと思ってしまう。一方の仙波は人を蹴落としてでも出世したいタイプで、物語の中では悪人的立場だ。
そんな自己の利益を求めて奔走する人間がいる中で、経済産業省技官の国枝は国益を考えながら常に公平な目で周りを見回している。

経済小説と呼ばれるジャンルと言えるだろうか。登場人物の人間性はさらりと描き、社会の動向を細かく分析していて、新聞の経済面を読んでいるような感覚だった。
また、各国各地域の食の描写が細かく、実際に食している気分だった。

ラストは衝撃的なレポートが公表される形をとっており、どんでん返し的効果を感じた。
いったい真実はどこにあるのか?冴子たちの努力はいったい何なのか?と、疑問が後から後からわいてくる。

これから、「排出権」の言葉には思わず反応してしまうような気がする。

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