池澤夏樹『カデナ』 : 夢の国・亞洲文化宮

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池澤夏樹『カデナ』

20091214





出版社: 新潮社




刊 行: 2009年10月





<あらすじ>
1968年夏、沖縄の嘉手納基地。アメリカ軍の北爆情報をベトナムに伝えるため、自らの意志で危険を冒した人々がいた。下記の4人である。
フリーダ=ジェイン:アメリカ軍基地の曹長。母はフィリピン人、父はアメリカ人で故人。
嘉手苅朝栄:サイパンで両親と兄を亡くし、沖縄に帰郷後幸子と結婚。妻は飲食店を、朝栄は模型店を経営。
タカ:家族は祖母と姉。ロックバンドに夢中。アルバイトでフリーダの家の庭を手入れする。
安南:ベトナム出身。サイパンで朝栄と知り合い、沖縄で再会。
この一方で、沖縄では、米軍の脱走兵を逃そうとする動きがあった。

<感想など>
物語は、フリーダ=ジェイン、嘉手苅朝栄、タカの「語り」から構成される。
フリーダは恋人でB-52の機長であるパトリックを裏切ることになっても、自分の正義を貫く。彼女は、その行為が罪であるかどうかを教会で悩み抜き、機密を盗み出すときの罪悪感と対峙する。純粋で、正直で、信念を持った女性なのだと思う。

天涯孤独の身となった朝栄からは、つき抜けた雰囲気を感じた。「与えられた」命で、自分に何ができるかを真剣に考えたのだと思う。精力的に動いているのにもかかわらず、ガツガツした感じがない。半生の過酷な経験が作り上げた自然体だろうか。

タカは無鉄砲に見えて実は思慮深い青年。前の2人のように砲弾をかいくぐった経験はないが、父違いの姉の存在、母の死からは、戦争の暗い影がうかがわれる。過酷な幼少時代を送ってきたはずだが、彼の全身は光を放っているように見える。それは、彼が未来へ走り続けている人間だからだと思う。脱走兵の逃亡の手助けや、スパイ活動は、結果的に未来につながるものであると、彼自身が本能的に認識しているのではないだろうか。

いずれも戦争の恐ろしさ、無意味さをよく知っており、戦争の被害をくいとめるために個人でできることを考えている。戦争の終結を願うのは、加害的立場にある者も同じだということがよくわかる。軍人の中には、爆撃機への乗務前に気持ちが不安定になり、機内で幻影を見る者も多いとのこと。戦争の無意味さを強く表している事実だと思う。

ちょうど沖縄の基地問題が話題になっている時で、実にタイムリーだった。

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