ビートルズを知らなかった紅衛兵 : 夢の国・亞洲文化宮

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ビートルズを知らなかった紅衛兵

20091119


 著 者:唐亜明

 刊行年:1990年3月

 出版社:岩波書店(同時代ライブラリー)





<内容・感想など>
副題は『中国革命のなかの一家の記録』。
著者は1953年生まれで1983年に来日、現在出版社に勤務し、小説や絵本の執筆、
翻訳を手がけるほか、大学講師もしているとのこと。
10人兄弟の8番目に生まれた著者は、13歳で文化大革命の嵐に突入する。
祖父母の話に始まり、国共内戦に身を投じた両親の状況、小学生時代の思い出、
文革で反革命分子として投獄された父への思い、辛い下放経験、家族の絆など、
歴史の波に翻弄された一家の様子が生々しく描かれている。
人民日報勤務の父と前線で看護師をしていた母は、ともに要人とのつながりが深い。
そんな環境の中で、著者の政治に対する感覚がとぎすまされていったのだと思う。
この1冊が中国の現代史をそのまま映し出しているともいえる。

タイトル中の「ビートルズ」は、誰もが知っているとされるアーティストの代名詞として
使用したのだろう。
それさえ知らなかったとは、いったいあの時代は何だったのか…。文革の10年を
振り返って検証したいという著者の熱い思いが、行間のあちらこちらにあふれている。
同時に、尊敬する指導者の過ちに苦しむ姿も見えてくる。紅衛兵として建国の英雄を
称えながらも、その英雄の行動が間違いであると認識する。
著者の矛盾との葛藤は、苦渋に満ちている。
しかしどんな境遇に陥っても諦めず、尽力する。ものすごいパワーの持ち主だ。
物語の中心を貫くのは、父母への尊敬の念である。兄弟は各地に下放されるが、
どこへ行っても心は一つ。父の釈放を嘆願するために団結して東奔西走する。
家族の写真がたくさん掲載されているところからも、家族の絆の強さがよくわかる。

さて、エピローグが書かれた日付が1989年12月31日となっている。
あの天安門事件が起きてから半年後だが、これに関しては一言も触れていない。
全くないところに、かえって著者の苦しい思いを感じてしまった。
微妙な時期だからこそ、この作品を書いたのではないかとも、思えてくる。

著者にとって文革とは何だったのだろう。文革末期には下放された土地を離れて
自宅に戻り、ひそかに勉強していた姿が描かれている。自由に勉強できない悔しさが
にじみ出ていた。
文革の10年は嵐のような毎日だった。しかし著者はそんな過酷な日々も決して
無駄ではなかったと考えているようだ。そうしたポジティブな思考が、生き延びる
原動力なのだろう。

中国近現代史を扱った作品では、最近、親に対する複雑な気持ちを描いているものを
続けて鑑賞した。『高考1977』と『千年の祈り』である。少し前の『胡同のひまわり』にも
同様の描写が見られた。
また、池莉の小説『所以』に描かれる母子の確執には、強烈な印象が残った。
そんな中、親に対する限りない慈愛、積極的な生き方を明確に描いている本書は、
ある意味新鮮だった。

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