海堂 尊『ジーン・ワルツ』 : 夢の国・亞洲文化宮

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海堂 尊『ジーン・ワルツ』

20090905


出版社:新潮社


刊行年:2008年4月



<あらすじ>
産科医、曾根崎理恵は帝華大学医学部で教鞭をとる傍ら、マリアクリニックで診療している。この病院では年々患者が減少し、院長の三枝茉莉亜が末期癌である状況から、5人の妊婦を最後に閉院することが決まっていた。そんな折、帝華大学の準教授清川吾郎は、理恵が代理母出産に関与しているのではないかと疑惑を抱く。マリアクリニックでは5人のうち1人が流産。4人の出産期が近く、中には帝王切開を予定している妊婦がいることから、理恵は清川の応援を依頼する

<感想など>
2回目の読書。
前回は主人公の行為が受け入れられず、
彼女への悪感情を蒸し返すのがいやだったので
感想を書かなかった。
その後『医学の卵』や『極北クレイマー』で
医学の根本や地域医療、産婦人科医療について
考えさせられ、主人公の背景も多少わかってきたことで、
もう一度本書を読む気になった。
奇数章は帝華大学、偶数章はマリアクリニックと、
場面が変わる展開もおもしろい。
現在も彼女の行為を全面的に受け入れることはできないが、
学生を前に講義する真摯な姿、
地域医療の活性化に向け奔走する姿は、
賞賛に値すると思えるようになった。

曾根崎助教の講義は発生学。
医師の卵に向けた言葉は、読者にもよくわかる。
ただ、その中でふと疑問が浮かぶ。
彼女は夫婦愛をどう考えているのだろうか、と。
彼女は顕微鏡下人工授精のエキスパート。
不妊外来を訪れる夫婦の想いは彼女の手に託される。
夫婦の希望がかなえばこれ以上喜ばしいことはない。
しかし受精に別の意志が働いたとしたら…。
講義ではここまで話していないが、
何となく悟らせようとする意図を感じた。

三枝茉莉亜院長の息子は、
『極北クレイマー』で逮捕された三枝久広である。
正常出産が当たり前だと考えられている中で、
妊婦死亡は遺族にとって受け入れがたい。
しかし妊婦や新生児の死亡率減少は
現場の産科医や助産婦の努力の賜物である。
そんな努力が水泡と化すような医師の逮捕劇を、
著者は登場人物の口を借りて非難する。
清川吾郎や曾根崎理恵も、
極北市での事件に対する姿勢は一致しているが、
厚生労働省や大学内の出世が絡むと立場が変わる。
理恵は権力機構に真っ向から挑む形で、
自身の医療姿勢を貫こうとする。
マスコミの力を借りてクリニックを再建しようとする姿は
颯爽としていて、女性から見ても惚れ惚れとするほどだ。

クリニックを訪れる5人の背景はさまざまで、
出産までの変化と分娩は見所の一つだと思う。
中でも20歳の青井ユミの変化はめざましい。
堕胎を希望していた彼女が生む決意をする。
しかしその後胎児の障害が判明。
それでもお腹の中の子に愛情を注ぎ、出産する。
曾根崎理恵の影響力にはあらためて感心する。
さらに三枝茉莉亜の神がかった存在感に圧倒された。

代理母出産については、以前タレント夫妻の状況が
話題になったときに色々と考えさせられた。
病気のことを思えば、理恵の選択は理解できる。
しかしその後の操作については賛成できない。
血液型が一致してもDNA鑑定をすればわかってしまうではないか。
(もっとも血液型が一致すればそれ以上の検査はしないかも知れないが)
いや、わかる、わからない、というより、
倫理的にどうなのか、人間と神の領域の境界は
どこなのか、という問題である。
マリアクリニックを守る手段として、ほかに方法はなかったのだろうか。

ふと、曾根崎理恵自身が父性を信じていないのではないかと思えてきた。
彼女の父親はどんな人なのだろう。
曾根崎理恵はどんな過程を経て、
冷徹な美女<クール・ウィッチ>になったのだろう。

東城大学医学部時代の彼女に会ってみたい。
また、『医学の卵』時代の彼女と、娘の忍ちゃんにも会ってみたい。

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「ジーン・ワルツ」 海堂尊 :TK.blog

『ジーン・ワルツ』  著者:海堂尊  出版社:新潮社 <簡単なあらすじ> 東城大学医学部を卒業し、帝華大学医学部産婦人科学...

コメント

大学生だった清川吾郎が帝華大学の準教になってる!

こんばんは^^
こちらの本、かなり前に読んでいたのに(感想の下書きも書いていた)アップするのを忘れてました^^;

女性の立場から興味深く読めましたが奥深い内容でした。曾根崎先生の授業はとてもわかりやすく妊娠前に彼女の授業を是非聞きたい!と思ってしまうほど。クリニック再建する姿も頼もしい。ただ彼女の思想というか行為には私も疑問が。人間と神の領域の境界は難しいですね(><)。

>東城大学医学部時代の彼女に会ってみたい。
そうですよね、薫くんの父親との恋愛中もどんな風だったのか知りたいなぁ。忍ちゃんはいつかどこかで登場しそうな予感がします^^

「ひかりの剣」が懐かしいわ

TKATさん、こんにちは♪
いろいろと考えさせられる作品でしたね。
確かに曾根崎先生の授業はわかりやすく、聞いてみたいですね。
教師としての曾根崎先生は、とってもいいんじゃないかと思うのですよ。
でも人間としてはどうなんでしょうね。
というか、なぜ作者はあのような人を登場させたのかしら。
私たちが持っているような疑問を引き出すのが狙いなのかも知れません。

>薫くんの父親との恋愛中もどんな風だったのか知りたいなぁ。
「医学の卵」から、薫くんのお父さんはとても素敵な人のイメージがあります。
だから曾根崎先生の行動が理解できないのかも。
ほんと、どんな恋を語ったのか、私も知りたいです。

>忍ちゃんはいつかどこかで登場しそうな予感がします^^
楽しみだな~
薫パパにも会ってみたいです。面白そうな人物のような気がします。
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