小野寺史宜『ROCKER』 : 夢の国・亞洲文化宮

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小野寺史宜『ROCKER』

20090727


  出版社: ポプラ社


  刊 行: 2008年11月



<あらすじ>
堀美実は聡明女子高校の2年生。ある日、声をかけてきた光倉元希を、いとこの白鳥永生に紹介する。元希は西高の2年生、永生は西高の教師である。永生のギターの腕がプロ級と知った元希は、永生に軽音楽部の顧問を依頼する。最初は頑なに拒否していた永生だったが、さまざまな出来事を経て、「ロック部」の顧問を承諾する。
美実は、総合格闘技選手の新妻里世や、クラスメートの柴田佐和らとの交流を通し、少しずつ自分と他人との壁を取り払っていく。
やがて彼女は、突然、プロのミュージシャンに混じって舞台で歌うことになる。

<感想など>
登場人物それぞれが大きな問題を抱えているが、
それが原動力となり、夢に向かって走り始める。
この物語は大きな夢の序章である。
夢に向かって突き進むことよりも、
夢を見つけることの方が遥かに難しいのだと
あらためて思った。

主人公の美実は、小学校時代親友の死にショックを受けて以来、
親しい友達がいない。
いとこの永生の家には頻繁に遊びに行くが、
それは、2人とも両親が離婚による心の傷を
共有していること、また彼が「親戚」だからだと、
彼女は思っている。
この2人が互いに感じる居心地の良さは、
親戚や男女といった関係を超えたものであるようだ。

美実の父は大学で数学を教える教授。
父の浮気が原因の離婚である。
永生の父はプロのミュージシャン。
永生はこの父を極端に嫌い、舞台への誘いを断り続ける。
美実の友人、佐和の父は、東高の校長。
彼女はこの父の存在を重く感じている。
それぞれ、父親を他人よりも遠い存在に感じながら、
意識せずにはいられない。
越えることのできない存在は、どこか疎ましい、
といった気持ちだろうか。
3人が父親との距離をつめていく過程は、
自分の生き方を見つめる過程でもあり、
読者である自分が、彼らの成長を見届ける
親のような気持ちになった。

教師の、「教師」を背負う姿も印象に残る。
永生は生徒や保護者とのトラブルを避けるため
携帯電話を使わない。
彼は「教師」を感じさせない、くだけた語り口をしているが、
かえって「教師」を強く意識しているのが伝わってくる。
永生の友人で東高校の教師、水面(ミナモ)は、
生徒からの告白に戸惑う。
やがて彼女は「同性にしか興味を持てない」自分の内面と
向き合うことになる。
今まで「教師」としての立場が
これを阻んできたようにも受け取れた。
美実目線で描かれる父親は数学の教授。
とても理解のある父親に思えたが、
罪悪感を一生背負う覚悟の背中が丸く、
寂しげに、脳裏に浮かぶ。
生徒を教え導く存在である教師。
同時に一人の生身の人間でもあるが、
この姿を正直に晒すことがなかなかできない、
でも時には晒さなければいけない、
なかなか辛い職業であると感じた。

登場人物それぞれの背景が丁寧に描かれているが、
説明過多であるのが気になった。
例えば美実の場合。
人との間に壁を作っている原因が
小学生時代のトラウマであると述べている。
確かに因果関係を明確にするための設定としてインパクトはあるが、
その設定がない方が自然ではないかと思う。
だいたい、自分の性格が形成された原因を
はっきり言える子がどれだけいるだろう。
大人になって気づく人もいる(私のように)。
美実は、自分自身を理路整然と語れる、
賢い少女だと言えよう。

美実が初舞台を踏むまでの様子は、
彼女と共に緊張しつつ、胸が高鳴った。
夢というのは、時として人から与えられた
チャンスに乗ることなのだなあと、その幸運の
尊さを思わずにはいられない。

美実の口調で書かれた文章はリズミカルで、
読後もさわやかだった。

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