酒見賢一『後宮小説』 : 夢の国・亞洲文化宮

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酒見賢一『後宮小説』

20090722


  出版社: 新潮社


  刊 行: 1989年12月



<あらすじ>
1608年、素乾国では腹帝の崩御により、17歳の槐暦帝が即位した。これに伴い後宮整備が進められ、宦官が全国を巡って宮女候補をスカウトした。13歳の銀河もそのうちの一人。彼女は大勢のクラスメートと一緒に、女大学で宮女としての教育を受ける。教室では理論面を瀬戸角人(セト・カクート)、実践面を菊凶(きくきょう)が担当。ルームメートには冷静沈着な江葉(こうよう)、貴族であることを鼻にかける世沙明(セシャーミン)、気位の高い玉遥樹(タミューン)がいる。銀河は双槐樹(コリューン)という背の高い美少女と知り合いになるが、実は彼女は命を狙われているために後宮に身を隠していたのだった。やがて、銀河が槐暦帝の正妃に選ばれる。

<感想など>
最初、カテゴリーを「歴史小説」にするつもりだった。
中国歴史学者の歴史観に基づく小説だと信じきっていたからだ。
語り手が歴史書として挙げる『素乾書』『素乾通鑑』等は
現存する書物に思えるし、登場人物の分析は、
学者の研究結果ときけば疑う余地がない。
作り話とは思えないのである。
途中で1989年のファンタジーノベル大賞受賞作と知り、
首を傾げてしまった。
「どこがファンタジーなの?この時代のファンタジーって
こういう感じ?」と。

よく考えれば、「素乾国」なんて聞いたこともないし、
登場人物の名前も奇妙だ。
カタカナ名は発音を表しているわけでもない。
でも、騙されたかと思った頃から、俄然、面白くなった。
主人公の銀河は、鼻っ柱の強い女性たちの中で
マイペースを貫き通す。
口には出せないような下ネタも、
好奇心旺盛な彼女がいるとさわやかになってしまう。

女大学とは、皇帝の寵愛を受ける方法を学ぶところである。
美しい男性菊凶が手本を見せるとなれば、
読者まで顔が赤らんできてしまいそうだが、
なぜか学生諸君に比べると冷静だ。
セシャーミン、タミューンといった色気のある女性の対極に、
江葉や銀河のような理論に強い女性もいる。
学問によって性を実証したい角人先生もまた、個性的な人物だ。
そして、謎の人物コリューンの正体がわかったときには、
なるほどファンタジーだと納得した。
シンデレラストーリーとは、こういうお話のことを言うのだろう。

やがて「素乾国」に危機が訪れると、銀河の活躍により、
後宮で軍が編成され、彼女に対抗していた者まで
武器を取るようになる。
そしてついに銀河は皇帝と、理論を実証する行為に出るのだった。
皇帝の優しさが溢れているシーンである。
この後すぐに彼が亡くなるのかと思うと切ない。
このように概略を書いていくと終始架空のドタバタ劇なのだが、
大真面目な書き方で、しかも文化的背景には多少事実も
含まれているようなので、事実であると信じたくなった。

現在文庫版が出版されているが、
私が読んだのは図書館で借りた初版本だった。
表紙に描かれた衣装はシンプルで、
「素乾国」の国状をよくあらわしていると思う。
衣装についての記述も興味深い。
映像化したら美しいファッションショーになるだろう。

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