伊坂幸太郎『死神の精度』 : 夢の国・亞洲文化宮

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伊坂幸太郎『死神の精度』

20090711


  出版社: 文藝春秋(文庫)


  刊 行: 2008年3月(単行本は2005年6月)



<内 容>
死神「千葉」と、死の運命を待つ人々が織り成す、以下6編の物語。
① 死神の精度 
家電メーカーのクレーム処理業務に携わる藤木一恵は、しつこい苦情電話に悩まされていた。しかし千葉は電話の相手に別の目的があると知り、例外の決断を下す。
② 死神と藤田
暴力団の組抗争。阿久津は、兄貴分の藤田の居所を言えと、対抗する組の栗木から脅迫され苦しんでいた。しかし千葉が口を割ってしまう。怒る阿久津に「藤田は今日は死なない」と言う。
③ 吹雪に死神
吹雪に閉ざされた洋館で、宿泊客が次々と殺害される。現場では千葉の同僚らしき姿が目撃されていた。やがて千葉は事件に隠された謎を明かす。
④ 恋愛で死神
荻原は向かいのマンションに住む古川朝美に片想い中。通勤途中声をかけるが、ストーカーに間違われる。やがて誤解も解けて2人は共通の話題で近づいていくのだが…。
⑤ 旅路を死神
殺傷事件の犯人森岡は、逃走中偶然居合わせた千葉の車に乗り込み、東北地方への運転を指示する。彼には幼少期に受けた強いトラウマがあった。
⑥ 死神対老女
海辺の美容院で、千葉は一人の老女に髪を切ってもらう。彼女は千葉に、若い男女を4人ほど、街中で勧誘し客として連れてきてほしいと依頼する。

上記ついての感想は、タイトル№①~⑥を用いて書くことにします。

<感想など>
金城武主演の映画『Sweet Rain 死神の精度』を先に観たからか、
主人公の千葉には自然と金城君が重なって見える。
読み終えた今では、金城武がモデル?と思えるほどだ。
映画に描かれていたのは上記①②⑥だけだったが、
他のエピソードも是非スクリーンで観たい。
どれも傑作である。

さて、千葉とはいったいどんな死神なのだろう。
物語の進行に伴い、その実態がわかっていくところが面白い。
彼ら調査部の死神は、情報部に指示された人物の「死」について、
7日間で「可」「見送り」の判断を下さなければならない。
(何だか会社組織のようだ)
「可」を前提で調査を行うのだが、
ごくまれに例外の「見送り」もあるらしい。

そんな「例外」が、①の藤木一恵である。
実は彼は大の「ミュージック」好き。
CDショップの試聴コーナーが彼のお気に入りスポットだ。
一恵が「ミュージック」で大成するかも?と想像して出した結論だ。
こんな個人(神?)的趣味で決めてよいものなのか。
死神にも個性があるから判断基準もそれぞれ、ということらしい。
ともかく千葉に憑かれた一恵は幸運としか言いようがない。

死神には感覚がなく、睡眠をとる必要もないらしい。
②では、千葉は阿久津とともにボコボコに殴られるが、
痛みはないらしい。
③ではグルメ料理に舌鼓を打つ人々の中で、
千葉だけは味わう振りをしている。
また、寝ていないのを不審に思われないために寝て起きた振りもする。
どうやら、死神は仕事をする上で高い演技力が求められるようだ。

それでは感情はどうなのだろう。
「ミュージック」を聴いているときは最高に幸せそうに見える。
また、雪を美しいとも感じている。
これは「プラスの感情」の表れだろう。
では、「マイナスの感情」は存在するのだろうか。
③では子どもを死に追いやられた親の気持ち、
⑤では壮絶なトラウマ、
⑥では不幸を一身に背負った女性が描かれている。
彼は、他人のマイナスの感情を理解できる。
しかし全編を通して自分の悲しみ、辛さ、怒り、嫉妬、悔しさなどは
描かれていない。
もっとも、死神が人の死をいちいち悲しんでいたら仕事にならないはず。
負の感情がないからこそ「死神」なのだから。

さて、この作品の最大の楽しみは、死神と人間とのズレや、
陳問答だと思う。
①では「醜い」を「見にくい」と勘違いする。
②では「年貢の納め時」と「年貢制度」を関連付けてしまう。
③では「甘く見る」を味覚の甘さと勘違いする。
④ではピザ宅配業者が玄関前まで届けに来ているのを見て、
依頼人の腹ペコさ加減を想像している。
⑤ では盛岡方面を指示した森岡に「名前が同じだから行くのか?」と尋ねる。
⑥ ではビラ配りの男に「ビラ」について教えてもらう。
上記はほんの一部に過ぎない。
こんなことを考える作者はもしや死神?(キャッ、スミマセンッ)

こうしたユーモアの源泉は、死神千葉の、
人間に対する飽くなき好奇心だと思う。
彼は他の死神に比べ仕事熱心であるらしい。
すぐに「可」の判断が下せてもじっくり調査する。
だからたくさんの陳問答や勘違いが生じるのだ。
人間の方も千葉の不可解な表現をおかしがり、訝りながらも、
結果的に癒されるケースがある。
⑥の森岡君は、千葉の奇妙な質問によって過去と向き合い、
④の荻原君は恋愛が実現する。
千葉は対象者に同情しない。
しかし彼に会って一時でも幸せを感じる者がいる。
これが読む者にとって救いとなった。

さて、晴天を経験した千葉は今後どうなるのだろう。
新たな感情の芽生えが予感でき、
これが彼の仕事に大きく影響するような気がする。

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「死神の精度」 伊坂幸太郎 :TK.blog

『死神の精度』   著者:伊坂幸太郎  出版社:文藝春秋 <簡単なあらすじ> 死神の千葉の仕事は、1週間後に死ぬことになっ...

コメント

お読みになったのね♪

こんばんは~☆
1年前に読んだ本だったのですでに内容を忘れている私^^;孔雀の森さんが書かれた内容を拝見しなんとか思い出しました^^ 不覚にも自分のブログには全体の感想を書いてても各内容は書いてなかった(TT)。

孔雀の森さんの死神データはすんばらしいですね!すっかり内容を忘れていた私は死神の陳問答6項目を読んで大笑いしちゃいました。私も読んだはずなのにネ(笑)。

>千葉は対象者に同情しない。しかし彼に会って一時でも幸せを感じる者がいる。これが読む者にとって救いとなった。
ですね。だから死を扱っていても重くないんでしょうね。

>読み終えた今では、金城武がモデル?と思えるほどだ。
私なんて映画も観てないのにすっかり死神=金城武のイメージで本を読んでました(笑)。金城武は大好きだけど死神の金城武とは知り合いたくないですな。いや、会えるなら死神でもいいか。いやいや、やはり素の金城武がいいなぁ。←スミマセン、独り言でございます。。

まさに金城武=千葉クンですね!

TKATさん、こんばんは♪
お互いかなりの読書量。いや、TKATさんのほうがずっと上を行ってると思います。
1年前読んだ本を忘れて当然ですよね。でないと新しい情報が入ってこないのですから。
忘れるのは健康である証拠!と思いましょう。(何か変?)

死神データ、褒めていただき光栄です。(笑)
よくこんなことを思いつくものだと、感心しながら読んでいました。
作者が死神の千葉クンになりきっているような気がして…。
でもこの千葉君、相当イケメンのようなのでなりきるのも楽しいかも。

TKATさんが映画を観ているものと思って書いてしまいました。
もしかして観ていなくても映像が浮かんでくるのではないでしょうか。
金城武ですものね♪ もちろん会うとすれば素の金城クンでなければ!!
何だか死神のイメージ、変わってしまいましたよ。
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