私説三国志 天の華・地の風 完全版 : 夢の国・亞洲文化宮

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私説三国志 天の華・地の風 完全版

20090707


著 者:江森 備(えもり そなえ)
刊行年:2008年(1998年光風社刊の作品を加筆、修正)
出版社:ブッキング
巻 数:全10巻



<内容・感想など>
職場の方からお借りした本。
主人公は諸葛孔明である。
赤壁の戦いから死去するまでの数奇な生涯が、
ドロドロの人間関係を中心に描かれている。
今まで抱いてきた孔明像を、この作品は
木っ端微塵に打ち砕いてくれる。
こんな孔明は孔明ではないという人もいるかも知れない。
私も最初は猛反発していた。
しかしそのうちに「これもアリかも」と思うようになった。


まず反発を感じたところを述べてみたい。
その一つは、中国の物語を読んでいる気がしないことだ。
舞台は確かに中国の地で三国志の時代。
地理、歴史、文化的背景も細かく書き込まれ、
その情景が鮮やかに脳裏に浮かぶ。
しかし中国特有のにおいが感じられないのである。
儂<ワシ>、細作<シノビ>といった日本の戦国時代を連想させる言葉が
多く使われているからか。
帯に記されている言葉「異色物語絵巻」のように、
日本の貴族社会が思い浮かぶからか。
それとも三国志の主役メンバー、劉備、関羽、張飛が
完全な脇役になっているからか。
こんな風に考えていくうちに、
違うのは「色」ではないかと気づいた。
例えば、同じ「金色<こんじき>」でも、
どぎつい黄色が基調となる中国の「金」ではなく、
ここに描かれているのは日本の「金屏風」の「金」である。
花の色もどことなく淡い感じがする。
つまり日本色が濃いということか。

二つ目は、愛憎の描写である。
それも孔明×周瑜、孔明×魏延といった、
思いもよらない組み合わせだ。
彼らの、恋愛感情とは言い難い、人間の奥底に潜む醜い塊には、
最初、本能的に拒否反応が出てしまう。
(しかし最終的には究極愛だと思えるようになる)
人間の表の皮を剥ぎ取り、剥ぎ取り、
最後に現れる生身の人間が恐ろしいのだ。
さらに、人間の人間に対する残酷な仕打ちにも耐えられない。
この作品には、自分にとって魅力的と思える人物が
誰一人として登場しないのである。

ならば、なぜ放棄しないで最後まで読んでしまったのだろう。
それは、ドロドロの塊を抱えた諸葛孔明がこの先どうなるかという
「好奇心」。
言葉を変えれば「怖いもの見たさ」である。
彼は、少年時代に受けた残酷極まりない虐待と、
師匠華紫陽から与えられた薫陶によって、
その生涯を決定づけられたといえるだろう。
とぎすまされた冷徹な心と類まれな才能があらゆる場面で効を発し、
彼の障壁となる者を次々と葬っていくのである。
本当に恐ろしい!
今まで見てきた孔明と違い、
彼は№1でないと気がすまないのである。
三国志の主役メンバーの中には彼の手にかかって
亡くなった者もいる。
恐ろしい!実に恐ろしい!
こうなってくると三国志ではない。
けれど確かに三国志である。(矛盾!?)

この作品の恐ろしさは物語だけではない。
読む者の神経を麻痺させる「毒薬」をもはらんでいるのだ。
次第に、この信じられないストーリーが
現実的に思えてくるのである。
作者もあとがきで述べているように、
戦場では女性の数は限られるはずだ。
同性を意識して常軌を逸した行動に出るのも何ら不思議ではない。

原作の登場人物に、どんな服を着せようと、
どんな人間に仕上げようと、それは読者の自由だと思う。
また、そんな虚構の人物に対し、毒づくのも賞賛するのも自由である。
こんなふうにさまざまな解釈を許してくれる「三国志」は、
何と懐が深いのだろう。
(と、勝手に解釈、勝手に感動。)

最後に。
あの徐庶の正体には、ほんとうにびっくり!である。
これは強烈なスパイスとなった。
孔明も孔明だが、徐庶も徐庶だ!!

途中南蛮制圧の場面では滞ったが、
その後は猛スピードで駆け抜けた、全10巻だった。

コメント

異色三国志

はじめまして。随分古い記事でしたが、天の華地の風の事がありましたので、書き込みにお邪魔しました。孔雀の森様の鋭い考察楽しくよみました。

>つまり日本色が濃いということか。
成程 私はこの小説をJUNE連載時から読んでいましたが、あれだけ濃厚な場面が多いのに十年以上読み続けられたのは、日本的描写のおかげかも知れません。

私も今までたくさんの三国志を読みましたが 仰るとおり歴史地理の考証も細かく往年の大作家の三国志にも引けをとらないと思います。これだけ人間書いた三国志もないではないかと。

昨年小林智美氏の美麗な表紙絵の新装版と一昨年ドラマCDも発売されました。
第壱話が出たのが昭和の時代。良い作品はいつまでも愛されますね 

人物解釈もいろいろですね

魔蘭さん、はじめまして♪
読んだのがずいぶん前なので記憶の彼方になっているのですが、
おっしゃるような「異色三国志」と感じたのは
はっきりと覚えています。
三国志を題材とした歴史小説、ドラマ、映画は数限りなく、
(オーバーですが)人物の解釈も様々ですね。
そんな中出会った本作には、かなり思い切った孔明像が描かれ、
賛否両論あるだろうなあと推察いたしました。
さらに年月が積み重なれば、その時々の風潮から、
また新たな人物像が生まれるのでは?とも思えます。
新しい表紙絵やドラマCDにも興味津々です。
ご紹介くださり、ありがとうございました。
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