延安の娘 : 夢の国・亞洲文化宮

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延安の娘

20090331

2001年/日本/2時間(レンタルDVD)
監 督  池谷 薫

<内 容>
日本人監督が中国で撮ったドキュメンタリー作品。
延安の農村に住む何海霞<ホー・ハイシア>は養父母のもとで育ち、22歳で結婚。義父母、夫、5歳の息子と暮らしている。彼女は18歳の時、実父母の存在を知り、以来ずっと探し続けていた。5年後にようやく父親の消息が判明。北京の父にすぐにでも会いに行きたいと言う海霞に対し、養父母は実父が延安に来るべきだと主張。海霞と家族たちとの間で奔走する黄玉嶺は、仲立ちとして村の長老に来てもらう。
海霞の父、王露成は小さな住居に妻と2人暮らし。北京のボイラー工場に勤めているがその収入は少なく生活は苦しい。元下放仲間から実娘の存在を聞かされるが会う勇気がないと言う。
<感想など>
「革命の聖地」と言われる延安なのに、どうしてこんなに荒涼としているのだろう。
突風が砂塵を巻き上げると、視界は見る間に遮られ、道行く人々は建物の方に逃げて行く。
農作業は人力が頼りで、大都市との貧富の差は歴然としている。
かつての下放青年たちの活動はどこに生かされているのだろう。
この地に住む人々にとって革命とは何だったのか。

27歳という海霞は小柄で、はにかんだ様子は少女のようだ。しかし顔に刻まれた皺からは、
実年齢をはるかに上回る年を想起させる。
口数が少なくおとなしそうに見える彼女が、実父母の話題になるとキリッとする。そしてこう言う。
「気にかけてくれる人がほしい」
彼女が生まれてこのかた嘗めた辛酸の数々は、私には想像もつかない。

そんな彼女をサポートするのは、元紅衛兵で投獄された経験を持つ黄玉嶺という男性だ。
村の人々と和気藹々と話す彼が、時には鋭い眼差しで昔を語る。気骨のある人物だ。
黄玉嶺は、恋人との間にできた子供がこの世に生を受けることなく葬られた経験を持ち、
海霞が他人には見えないのだという。
下放破壊罪に処せられ、労働改造所送りとなったとき「おまえは人間ではない」と言われ
精神がズタズタになったという黄玉嶺。断罪した幹部に対する恨みは深い。
彼自身の物語も、海霞の物語と平行して描かれる。

カメラは、何海霞、黄玉嶺を取り巻く人々を映し出していく。
養父母は海霞が北京に行ったまま帰らないのではないかと危惧し、
義父母は養父母との人間関係悪化を心配する。
そんな中、義理の姉は海霞の強い見方となる。出番は少ないが、彼女の白黒はっきりした主張は観る者にまで勇気を与えてくれる。確か海霞の北京行きには彼女も同行していたと思う。

ところで、村の道筋で麻雀卓を囲むおじいちゃんたちの存在感は大きい。
「老紅軍」といわれ、日中戦争や国共内戦を闘った人たちだ。
彼らの中では革命の勲章が今も光り輝いている。
彼らにとって下放青年たちは迷惑な存在でしかなく、自分たちの革命とは全然違うと主張する。

黄玉嶺は下放時代に恋愛沙汰を起こし投獄された王偉と会う。北京の幹部に真相(彼が無罪であること)を伝えてくれるよう頼まれ、彼のためなら、と引き受ける。
彼のためというのは実は自分のためでもある。
その幹部、郭忠民は自分を陥れた人物でもあるからだ。

何海霞の実父母探し、及び対面の過程は、彼女を取り巻く紅衛兵世代の、過去を見つめる旅でもあったと思う。
最初、なぜこれほどたくさんの人々が海霞の親探しをサポートするのかがよくわからなかったが、
中盤でようやく少しだけ理解できたような気がする。
彼女が北京で招待された宴会は、王露成らの同窓会でもあり、その席上でそれぞれが過去と向き合うのだ。
王露成は同級生の一人と激論を戦わせる。その同級生は「今さらかさぶたをはがさなくても…」と言う。
過去の理不尽な政策への不満と、それを思い出したくないという思い。
紅衛兵世代の人々の主張を代表するやりとりに見えた。
父の隣で何海霞は複雑な表情を見せている。

何海霞の北京行きに同行した黄玉嶺には、もう一つの目的があった。
郭忠民と再会し、王偉との約束を果たすことだ。
紅衛兵仲間と一緒に郭忠民宅を訪れるシーン。この郭さんが撮影をOKしたこと自体奇跡ではないか。
自分に非はないという郭氏自身の主張でもあるわけだが、こうして一堂に会した面々を見ているうちに、真実の所在を明らかにする困難さをひしひしと感じてしまった。

さてこの作品でいちばん泣けた場面。
「結婚前に知らせてくれれば…」と泣いていた王露成の奥さんが、何海霞の訪問時には
満面の笑みで出迎え、ネックレスをかけてあげたシーンである。
短い間にどのように自分の気持ちに折り合いをつけたのかはわからないが、この女性もまた
紅衛兵世代として、苦労は並大抵ではないのだろう。
何海霞が「おかあさん(王露成の妻)に」と買ったぬいぐるみの白さが今も瞼に焼き付いている。
王露成夫妻と何海霞の3人で並んだ姿は真の親子にも見えた。

実の母はとうとう姿を見せなかったが、いつか対面できる日も来るのではないだろうか。

最後に黄玉嶺が涙ながらに吐露した「俺の歴史を残したい」という言葉は、画面からその一語一語が飛び出してくるようだった。

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