笹本稜平『還るべき場所』 : 夢の国・亞洲文化宮

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笹本稜平『還るべき場所』

20081213


 出版社: 文藝春秋

 刊 行: 2008年6月



<あらすじ>
矢代翔平は4年前K2で恋人栗本聖美<キヨミ>を亡くしてから山を離れた。彼女が自分を助けるためロープを切ったと思い、そのショックから立ち直れなかったのだ。山岳ツアー会社を営む山仲間の板倉亮太は、そんな彼をブロードピークの公募登山に誘う。顧客には大会社の会長神津邦正と秘書の竹原充明がいた。亮太にとっては恰好のビジネスチャンスである。自社開発のペースメーカーを装着している神津は無酸素登頂を目指し、山岳経験の豊富な竹原とトレーニングを積んでいた。翔平は、亮太の仕事を手伝い顧客を登頂させた後K2に挑むという提案を受け入れ、準備に入る。
<感想など>
前半は登場人物の人生模様を交えながら、彼らの山に対する思いが詳細に綴られる。
山岳関係の専門用語が並び、思い描けない部分も多いのだが、なぜ山を目指すのかという
根幹は胸に迫るものがあった。
主人公、翔平の山に魅せられたきっかけや、仲間との出会い、山への畏怖、家族関係など、
後半へのシナリオが綿密に構築されていく。
同時に、日本エレクトロニクスの会長、神津の物語が平行して語られる。
還暦を過ぎ、大会社の重職にあり、そして心臓を患うという、深刻なリスクを抱えながら、
なぜ彼は命がけの登山にこだわるのか。
山にトラウマを持つ竹原をアドバイザーに迎え、彼はトレーニングに励む。
神津の執念には鬼気迫るものがあり、彼の姿そのものが「なぜ山に登るのか」の回答に思えた。

後半はブロードピーク登頂を目指す人々の物語である。
そしてその大半は山岳救助の場面に費やされる。
ツアー客を抱えた公募登山だから、当然彼らの登頂を最優先させなければならない。
しかしそのビジネスよりも優先しなければならないことが起こるのだ。
ニュージーランドのツアーを率いる友人、キースからの一報を受け、翔平と神津は
極寒の中に飛び出していく。
年齢も立場も越え、2人は阿吽の呼吸で突き進む。
文字を追いながら彼らと共に困難を克服していくような気持ちになる。
そのうち、「この救難は絶対に成功する」という強い確信が生まれた。
こうやって書いていると絵空事のようだが、ものすごく現実的な光景である。

最初、『還るべき場所』は恋人を失った翔平が人生の再出発を誓う場所だと思っていた。
これは確かにその通りだった。
そして彼だけでなく、この登山にかかわった人すべてに与えられる場所なのである。
生きていることの素晴らしさが描かれるラストは、何度でも読み返したい。

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