竹内 真『自転車少年記』

出版社:新潮社
刊 行:2004年5月
<あらすじ>
昇平と草太の出会いは4歳の時。昇平が坂の上から自転車で駆け下りて突っ込んだ先が草太の家だったのだ。草太は隣に住む一歳上の奏<カナデ>とも幼なじみで、後に2人は恋人同士に。奏に思いを寄せていた昇平は失恋の痛手を受ける。自転車競技に目覚めた草太は高校入学と同時に自転車部を設立。同じ高校に進んだ昇平、吹奏楽部の奏の協力により試合に出場できるまでになる。
昇平、草太の4歳から29歳までの成長記録に、音楽に打ち込む奏、職人として技術を研鑽する伸男らの人生も織り込んだ、思い出日記である。
<感想など>
4歳の時に知った自転車の醍醐味。そして親友との出会い。
こんな幼い頃に人生の根っことなるような出来事を経験するとは、まさに運命です。
失敗や挫折も含めた経験を人生の宝物にできた背景には、運のほかに彼ら自身の努力もあったはず。
そんな彼らの元に人々が集まり、それぞれが良好な関係を築き上げてステキな思い出アルバムが出来上がる…。
ちょっと古くさい表現かも知れませんが「青春の1ページ」と言いたくなる物語です。
まだパソコンも携帯電話もゲームも普及していなかった時代。
「特訓山」まで行った小学校1年生の時。
海まで行ったけれど復路は軽トラに乗せてもらった小学校4年生の時。
好きな人を乗せて海まで行った中学生の草太。
失恋でむしゃくしゃして家族と大喧嘩。プチ家出して海まで走った中学生の昇平。
自転車競技に目覚める高校生の草太。
進学で上京する時、人生の方向転換を決めた時、大切な人に会いに行く時。
彼らの生活の中心にはいつも自転車があります。
男の子同士のライバル意識や思いやり、ねたみや嫉妬など、お互いの間をいきかう感情が生き生きと描かれ、時にはうらやましくなりました。
男の子だけにスポットライトがあたっている風景には、入っていけない領域を感じます。
まるで奏<カナデ>の「疎外感」が乗り移った気分。
草太の恋人である奏を始め、昇平の恋人朝美、伸男の恋人美園など女性も多く登場し、それぞれ大きな役割を果たしているのですが、脇役の感はぬぐえません。
双璧である昇平、草太、そして地味だけど存在感の大きい伸男。
この3人がひときわ明るい光を放ち、限りない未来へ突っ走っていきます。
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