小川 糸『食堂かたつむり』 : 夢の国・亞洲文化宮

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小川 糸『食堂かたつむり』

20081014


 出版社: 新潮社
 
 刊 行: 2008年6月(初版は1月)



<あらすじ>
アパートに帰ると家財道具一切が消えていた。レストランの開店資金としてコツコツためた大金もない。同居していた恋人が持ち逃げしたのだ。残っていたのは亡き祖母から引き継いだ糠漬けの壺だけ。傷心の倫子は声を失ってしまう。今の自分にできることは料理だけだと考えた彼女は、高校卒業後上京してから初めて帰省する。母との確執は依然として残ったままだが、そんな母から借金をして、「熊さん」の援助を仰ぎ、「食堂かたつむり」をオープンさせる。

<感想など>
全体の半分がレシピと料理の風景です。もう、おなかがグーグー鳴ってどうしようもありません。
主人公の作る料理同様、文章にも味わいがあって、噛みしめるほどに香りがわき立ちます。
音読するとさらにまろやかになって、本当に極上の料理を味わっている気分。

相手の気持ちを考えて料理を作る。
わかっているはずなのに、いつも忙しさを理由に自分の都合を優先させている私。
倫子の作った料理を食べた人々が幸せな気持ちになるのは決して不思議現象ではなく、
食材に対する深い愛情、相手への思いやりによるのだなあと、しみじみと思いました。

おいしそう!でも悲しいかな、それぞれの料理の味も、形状も、自分の中ではおぼろげです。
ザクロカレー、林檎の糠漬け、牡蠣と甘鯛のカルパッチョ、和風だしのお茶漬け…
世の中には知らない味がたくさんあるのに、一生で味わえるのはどれだけだろう、
なんて考えてしまいました。

料理ついては、食材、手順、盛り付け、味、料理人の感情にいたるまで、精緻に描かれています。
「想像がつかない」と言いながら、勝手に想像をめぐらせて味わうのも楽しいものです。

こうしたリアルな描写がある一方で、母子の関係には全くリアリティがなく、
全体的にアンバランスな感じを受けました。
倫子が誕生した経緯に対しては、これまでの積み重ねが崩れていくような気持ちになりました。
母は処女。でも倫子は母の胎内から生まれた子。
発想としては面白いし、初恋の相手への想いをより強固にする点で効果的かもしれませんが、
やはり賛成できません。
著者は「注射器」で笑いを取ろうとしていたのでしょうか。
それともこれは母のついたウソで、真実は隠されているということでしょうか。
後者であってほしいのですが…。

あと二つ疑問点が。
彼女はなぜ忽然と姿を消した恋人を訴えないのでしょう。
100万円の束が数個。
プロが使用する料理道具一式。
これを盗んで逃げた恋人は犯罪者です。
彼を全く責めていないところにイライラしてしまいました。
また、1日1組限定なんて、採算取れるのでしょうか。
こんな風に非現実的な面に突っ込んでばかりいるからファンタジーを楽しめないのかしら。
あっ、このお話はもしかしたらファンタジー?

主人公が料理人として生きていく決心をする展開は大好きです。

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