斎藤 純『銀輪の覇者』 : 夢の国・亞洲文化宮

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斎藤 純『銀輪の覇者』

20081002


出版社: 早川書房

刊行年: 2004年6月 



<あらすじ>
昭和9年。「大日本サイクルレース」と称する自転車ロードレースが開催される。起点は下関、最終目的地は青森だ。響木、越前屋、望月、小松の4人は元々個人参加だったが、響木の呼びかけで途中からチームを組むことになる。出場者300人は一攫千金あるいは課せられた任務遂行を胸に秘めゴールに向けてひた走った。

<登場人物>
響木健吾:チーム門脇のリーダー。チェロ奏者、紙芝居屋を経験。
越前屋平吉:落語家。チーム門脇の一員。
小松:正体不明。チーム門脇の一員。
望月重治:正体不明。チーム門脇の一員。
ジャン・ブランジェ:フランス人。ル・ミロワール・デ・スポール紙記者。
明善寺恒章:明宝ミルクチーム主将。
山川:大会委員長。
雪野千洋:歌手。
鶴岡:往年のサイクルレーサー。
日沖:貧しい故郷を救うため一攫千金をねらう。
堤善衛:大会審判長。
諏訪:経済学の教授。
門脇:表向き運送業を営む。響木とは互いに恩義がある関係。
西陽介:ウェスト商会専務取締役。ウェスト商会チーム主将。
中条スギ子:日本女子大自転車部主将。社長令嬢。
箱石:中央新報記者。

<感想など>
レースの開催目的も、参加者の素性や思惑も、すべてが闇に包まれたままのスタート。
選手たちがしのぎを削っている間に、それぞれの人生が語られ、ベールが一枚ずつはがされていきます。
その過程が謎解きのようでドキドキしました。
現代の競技を扱った物語より重みが感じられるのは、目的が金銭や勝負にとどまらないからでしょうか。
国家の威信、故郷への想い、自分の人生、機密保持など、銀輪に課せられた任務は参加者の数ほどもあります。

レース未経験の越前屋、小松、望月が、響木の指示によって日に日に上達し、一人前のアスリートになっていく様子がまぶしく感じられました。
このようにチームが調子を上げている最中に発覚する真実の数々…。
さまざまな憶測に翻弄されながらも、4人の心が次第にまとまっていくところに、チームプレーの真髄を見たような気がします。
「チームプレー」で真っ先に思い浮かぶのは球技、プレイヤーの闘いの場はコートです。
サイクルレーサーの闘いの場は果てしなく続く(と思えるような)道。
心理的な駆け引きが大きく影響する点で、他競技とは違う深さがあることを、あらためて知りました。
先頭を入れかわりながら進んで各人の体力を温存したり、アシストを使って他チームを翻弄したりと、チーム走行では状況の的確な読みが命綱とも言えるでしょう。
この「チームプレー」の魅力に取り付かれた男たちは、自分たちの最終目的に疑問を持つようになります。
果たして彼らは最終的に何を選択するのか。
特に、響木の気持ちが銀輪の上でどう変化していくのかが気になって気になって…。

レースには2人の記者が同行します。
選手に食らいついて話を聞きだそうとする箱石にはこちらまで辟易します。
フランス人記者のジャンは、「ボンジュール野郎」という悪態を受け流し、流暢な日本語で選手たちに迫ります。
彼らを突き動かしているのは何なのでしょう。
話が進むにつれ、2人がこの作品を書いているような錯覚にとらわれました。

終章では参加者、関係者のその後が語られますが、できれば現代まで時間を延ばしてもらいたかったです。
彼らが現代のレースを眺めている様子をを見たい気もします。

『サクリファイス』の読後感じた疑問「肉体を極限まで酷使したその先に見えるものは何なのか」に対しては、響木の姿が十分その解答になっていました。

私にとっては満足度ほぼ100パーセントの作品でした。

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