有川 浩『塩の街』 : 夢の国・亞洲文化宮

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有川 浩『塩の街』

20080917


出版社: アスキー・メディアワークス

刊行年: 2008年(初版は2007年)



<内 容>
東京湾の埋立地に巨大な塩の結晶が落下、円柱状に突き刺さる。以後半年間で塩害による犠牲者は8千万に上り、国の機能は完全に停止する。自衛隊員の秋庭と高校生の真奈(当時)はそんな中で出会った。被害が広まりつつある時、塩害対策が進みつつある時のストーリーが、さまざまな人々によって語られる。
<感想など>
帯には「第10回電撃小説大賞<大賞>受賞作にして、『図書館戦争』シリーズでおなじみの有川浩デビュー作。本編大幅改稿、番外編短編四篇を加えた大ボリュームで登場」とあります。
後書きでは改稿までのエピソードが詳しく語られており、大賞受賞作も読んでみたくなりました。特に削除部分を。
いかに読者の心をつかむか。作者と編集者がこの一点を意識して試行錯誤を繰り返している様子が興味深いです。有川浩作品は後書きも面白い!

さてこの作品の内容ですが…。
塩害により国が崩壊するという発想そのものが奇想天外。
飛散した塩に触れた者、長時間見た者が塩と化して死亡するという展開には身震いしました。
『空の中』と『海の底』では、得体の知れない「生物」の究明が作品の根幹にありましたが、この作品では結局すべてが謎のまま。
人間が塩と化す原因も、大量の被験者を出しながら最後まで不明です。
(その実験過程については、例え小説とわかっていても肯定することができません)
不明瞭なところが多くて不安をかきたてられます。

その中で語られる恋の話はかなりベタ甘ですが、生きるか死ぬかの日々を過ごしている状況では、読む側も「甘み」をゆっくり味わう余裕はありません。
「ベタ甘シリアス」っていう感じでしょうか。

秋庭は真奈の保護者的存在で、真奈は彼に対し終始敬語を使っています。
やがて言葉や仕草で恋人同士とわかっても、どこかぎこちない感じです。
この<チグハグ感>は10歳の年齢差とは関係ありません。
平和なら出会わなかったであろう2人、いう設定が、そんな感覚を生んだのかもしれません。
しかし何もかも対照的な2人だからこそ互いを必要としているように受け取られます。
年月を経たら立場が逆転しそうな気配も。

ところで、秋庭は友人である入江の策略で、戦闘機で塩の結晶を攻撃する任務を負わされます。
真奈は当然大反対。しかし入江は作戦成功のために2人の恋を利用し、結果的には大成功。
よくできすぎたお話ですが、入江のキャラを際立たせるための展開と言えるでしょうか。
重苦しいストーリーで、この入江だけが軽く浮いている印象を受けます。
しかし彼の役柄は決して軽いものではなく、むしろ自己犠牲的な損な役回りです。
明るく見えるのは、話し方やゼスチャーといった表面的な特徴だけではないはず。
ともするとどん底まで沈みこんでいきそうなストーリーを、この入江が救っているとも思えます。

『塩の街』の登場人物が、これ以外のアナザストーリーに出ることは、作品の展開上不可能でしょう。
どの人物も独特の雰囲気を持っていて、またどこかで会ってみたいと思うのですが…。
<完結>の雰囲気を漂わせた作品でした。

trackback

「塩の街―wish on my precious」(文庫版) 有川浩 :TK.blog

『塩の街』     著者:有川浩  出版社:メディアワークス 電撃文庫 <簡単なあらすじ> 東京湾に巨大な白い隕石らしき物体...

コメント

おはようございまーす

これってデビュー作だったんですか!教えてくださり感謝です^^
自衛隊三部作の一つってことでいいんですよね?ちなみにこの三部作って
どれから読んでもいいのかしら?すみません、いつも孔雀の森さんに頼りっぱなしで^^;

有川浩さんの著書はそれほど多く刊行されてないから制覇しようと思えばできそうですが、
とにかく図書館の予約待ちが多い!まぁタダで読ませてもらうのだから仕方がないですけどね~^^;
有川浩さんの著書でベタ甘が全くない本ってあるのかしら。これも全部読まなきゃわからないか(笑)。

頼っているのは私♪

TKATさん、こんばんは。

>自衛隊三部作の一つってことでいいんですよね?
はい。あとがきによれば、他の2作は『海の底』と『空の中』ですね。
私の個人的な感想ですが、どれから読んでもいいように思いました。
ちなみに私は『海の底』『空の中』『塩の街』の順です。
リンクする内容はほとんどなかったと記憶しています。(あやふやで頼りないんですが:汗)

>とにかく図書館の予約待ちが多い!
そうなんですよね!もしかしてほとんど若者?(私たちも含めて:笑)
胸キュンのコイバナ、一途なコイバナもベタ甘に入れていいのかしら。有川作品はほとんど愛で埋め尽くされている気がします。ベタ甘が全くない本、さがしてみようかしら。

すごい世界でした…

孔雀の森さんに三部作の読む順序をお伺いしてたのを忘れて
『塩の街』から読んでしまいました^^;でも完結っぽいので
影響はなさそうですね^^

塩化という設定が奇想天外すぎて読み始めは何のことやら状態。
よくこんな背景にベタ甘を盛り込んだなとも思ったり(笑)。

ただ私が借りてきたのは文庫版で「塩の街、その後」が収録されてないんです(TT)。
早速図書館で収録されてるハードカバー版を予約し本日手元にきました!
野坂夫妻の出会いの話もあるようなので今から読むのが楽しみです^^

思い出せない…(泣)

TKATさん、こんばんは♪
有川作品の中でも、これだけはよく思い出せません。
書いてある内容はショッキングなことですよね。
でも、なぜか登場人物名も、作品に描かれている出来事も、
忘れてしまっています。
自分のレビューを読んでようやく、塩で固められる、という
奇想天外な物語であることを思い出しました。

TKATさんは文庫版に続き、ハードカバー版を読まれるのですね。
作家さんによっては文庫化に当たり改定する方もいるようなので、
読み比べるのも面白そうですね。私はまだそういう経験はありません。
ハードカバー版のご感想も楽しみにしています。
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