1978年、冬。 : 夢の国・亞洲文化宮

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1978年、冬。

20080617



2007年/中国・日本/1時間41分(劇場にて鑑賞)
監 督  李継賢(リー・チーシアン)
原 題  西幹道
英 題  The Western Trunk Line
出 演  張登峰(チャン・トンファン) 李 傑(リー・チエ)
      沈佳妮(シェン・チアニー) 趙海燕(チャオ・ハイイエン)

<あらすじ>
舞台は1978年冬の西幹道。11歳のファントウ(張登峰)は絵を描くのが大好きな男の子。内気なせいか、クラスメートからはたびたびいじめを受けていた。兄のスーピン(李傑)は18歳。近所の工場に就職したが、仕事をサボり、隠れ家で自作のトランジスタラジオを聴くのが日課になっている。
ある日兄弟は、舞台上で踊る一人の少女に釘付けになる。彼女の名はシュエン(沈佳妮)といい、兄弟の家のすぐ前に住んでいることがわかる。
<感想など>
煙突から昇る煙が空を覆いつくす。
列車から吐き出される煙が人々の間をぬって揺らめく。
画面全体がモノクロと青で閉じ込められ、観ているだけで息が詰まりそうだ。

時折流れる説明文によって、物語の概要を察することができる。しかし最小限の台詞と風景のみで進行していくドラマは非常にわかりにくい。
1978年の中国を経験しているとすべてがストンと心に入っていくのだろう。
私に分かるのは、文化大革命が終って間もない時期ということだけだ。

話はそれるが、ふと文革中とその後を描いた小説を思い出した。
池莉の『所以』である。
両親(特に母親)の愛情が妹にばかり注がれ、主人公は厳しく育てられる。母娘の間に軋轢ができて、彼女(姉である主人公)は外に目を向けるという話だ。
文革に翻弄された親の、やり場のない不安が垣間見える物語だった。

『1978年、冬』のスーピンらは十分な教育を受けられなかった世代である。母親が兄には仕事を、勉強を期待するのはごく自然な成り行きだと思う。
当然、2人の扱いは違ってくるが、かなり極端である。
小説『所以』同様、母親はヒステリックになり理不尽な物言いをするが、自分の言動の矛盾には気づかない。
彼女がどちらにも愛情をかけているのは終盤でわかるが、序盤は兄弟差別として映る。
兄弟の間に横たわる大きな溝。これが生じた背景は重く淀んでいる。

登場人物すべてが閉塞感を抱えながら、手探りの状態で生きているように見える。
私はスーピンと同年代なので、どうしても彼の心に沿って考えてしまう。
トランジスタラジオから流れてくる音楽や言葉は、手が届きそうで届かない世界だ。
その世界を知らないでただ黙々と仕事だけする人生なんて、嫌だ!!
とは言っていないが、ポーカーフェイスの裏からはそんな叫びが聞こえてくる。

ファントウは大好きな絵を親から禁じられる。「勉強しろ」とうるさいのだ。
シュエンから「展覧会が開けるほどうまい」と言われた時、彼の心には灯がともったのではなかったか。
彩色画を見せてくれるのでは?と期待したが、彼の絵はずっとモノクロのままだった。

スーピンとシュエン、さらにスーピンとファントウの間の距離感が、物語が進行するにつれゆっくり変化していく。
彼らの距離は30年を経ても変わらないと思う。
スーピンが一番輝いたのは、鉄屑を集めているときと、シュエンの前でシャッターを切っている時ではなったか。
同い年でありながら、こういう人生を歩んだ青年もいたのだ…と思うと苦しくなる。
私の中では、主人公はやはりスーピンだ。

trackback

1978年、冬 :龍眼日記 Longan Diary

北京から親戚の家を頼ってやってきたシュエン(チェン・チアニー:沈佳妮)に 淡い恋心を抱くスーピン(リー・チエ:李傑)とファントウ(チャン・トンファン:張登峰)兄弟。 文化大革命の影が残る1978年、中国東北部の田舎町を舞台に 幼い弟ファントウの目を通して

コメント

青が印象的でした

こんにちは!
確かに閉塞感がつきまとう作品でしたね。
淡々と進む物語の中、兄弟の母親が1人感情をあらわにするだけで
他の登場人物たちは喜怒哀楽がわかりづらいのなんのって・・・。(笑)
オフィシャルサイトを読んだところあの兄弟も父親もこの作品が演技初体験だったとか。
そのあたりのそっけなさが母親の感情的なのと好対照で
この作品の味になっているのかもしれませんね。
ところで私も孔雀の森さん同様、母親はスーピンに対して
よい感情を持っていないのだとばかり思っていました。
兵役へ出発するシーンの母親の態度で初めてあぁ、スーピンに対しても
大きな愛情を持っていたんだなぁと初めてわかりました。

静かに流れる物語

sabunoriさん、こんにちは。
私もオフィシャルサイトで父親や兄弟が演技初体験ということを知りました。
だから台詞が少ないんだろうか、なんて短絡的に考えてしまいました。(笑)
確かに、登場人物の喜怒哀楽がわかりにくかったですね~
特にお父さんがわからなかったです。お母さんの存在感が大きすぎて、かすんでしまったのかしら。
淡々とした展開をにらんだキャスティングだったのかもしれませんね。

>青が印象的でした
夜の部屋の青さ、朝靄のうすい青などを思い出しました。
この青に包まれると息が詰まりそうになったのを覚えています。
この色彩は美しいというより、ちょっと辛さをともなっていたようにも感じます。
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