帚木蓬生『三たびの海峡』 : 夢の国・亞洲文化宮

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帚木蓬生『三たびの海峡』

20080613



 出 版: 新潮社
 種 類: 文庫
 刊行年: 1996年 (初版は1992年)


<あらすじ>
朝鮮半島の貧しい農家に生まれた河時根<ハー・シグン>は、農作業中父親の換わりに日本へ強制連行される。筆舌に尽くせない屈辱や暴力を受け、仲間は次々と亡くなる。そんな中、彼は監視人を殺害して逃亡。やがて日本人女性千鶴と恋仲になり結婚、2人で帰郷する。しかし千鶴は乳飲み子と共に日本への帰国を余儀なくされる。河時根は後に出会った女性と結婚して商売を始め、40数年たった今では有力な実業家だ。3人の息子もいる。そんな時昔の恩人である徐鎮徹からの手紙で、千鶴が亡くなったこと、彼女との間にできた息子、佐藤時郎が会いたがっていることなどを知る。

<感想など>
朝鮮の人々に対する強制連行の実態が克明に描かれており、ノンフィクションドラマを見ているようだった。
この歴史的事実はしっかり把握しておこうと思う。
過去の記憶と現在の風景が交互に進行するが、混同することはない。過去を振り返る時の河時根の痛みが伝わってきて、この感覚により両時代の隔たりをはっきりと意識させられる。
主人公の、青年から老年に移った瞬間の空気は、張りつめたような静けさをたたえ、ゆっくりと展開する。
息子、佐藤時郎とは再会である。しかし時郎にとって父は初対面も同じだ。
時郎の発した「初めまして」の響きが重い。

後半まで息つく間もなく読んだ。
「三たびの海峡」を渡ろうとする決意から、彼の恨みが決して消せないものであることは明確だ。
四度目はもうないのだ。
しかしこの終わり方で本当にいいのか。
河時根が手紙の内容を忠実に実行し、それが成功したとして、これまで流した血や汗を拭い去ることができるのか。
この復讐劇を、亡くなった者たちも望んだだろうか。
韓国の息子や時郎、そしてその家族はどうとらえるだろう。
特に時郎は…。
最後の最後で複雑な心境になった。

ふと、一連の、金城一紀作品が頭に浮かんだ。
この『三たびの海峡』の後にそれらを読んだら、前とは違った感覚を抱くと思う。

なお、三國連太郎主演の映画もあるようだが、今は観る気になれない。
この本の衝撃から立ち直った頃に探してみよう。

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