ブレス : 夢の国・亞洲文化宮

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ブレス

20080506

 2007年/韓国/1時間24分(劇場にて鑑賞)
 監 督  キム・ギドク
 英 題  BREATH
 出 演  張 震(チャン・チェン) チア
       ハ・ジョンウ  カン・イニョン

 「死刑囚の男と訪問者の女」ときくと
 『私たちの幸せな時間』が記憶に新しい。
 登場人物の心の変化がつかみやすく、
 死刑囚の来歴が詳細に説明されていた点で、
 この作品は非常に分かりやすかった。
 常識の枠内での展開だったといえよう。

 『ブレス』には常識の枠など最初からない。
 前宣伝の「平凡な主婦が一人の死刑囚に同情した」
 というのは違う気がする。
 夫の浮気だけがその原因であるようにきこえるが、それも違う。

 究極のエゴイストなのだ、彼女は。
 『ブレス』は人間の奥底に潜む欲望を曝け出した点で『私たちの幸せな時間』をはるかにしのぐと思う。
さて、あらすじは次の通り。
「死刑囚チェン・ジン(張震)が自殺を図った」というTVニュースを観たヨン(チア)は、突然彼への面会を思い立つ。彼女は刑務所入り口で「昔の恋人だ」と嘘をつき、チェン・ジンとの面会を果たす。ヨンが話す臨死体験談を、彼は夢中で聞く。次回からヨンは面会室に四季を表わすディスプレイをして、自分の写真をチェン・ジンに渡すのだった。やがてヨンの行動は夫(ハ・ジョンウ)に知れ、チェン・ジンを慕う男(カン・イニョン)は嫉妬にかられる。

まず、監房での自殺未遂がこんなに大きく報道されるのか、と疑問がわく。
次に刑務所でこんなことはありえるのか?と、びっくりする。
家族が暮らす家は生活観が乏しく現実から遠い。
妻の前で浮気を正当化する夫が、事(妻の行動)が発覚した途端相手に別れを切り出すところなど、彼の「浅さ」にとまどってしまう。
奇妙な点を数えあげたらきりがない。常識では推し量りがたい物語だ。

ヨンの行動が突飛なら、チェン・ジンの心の変化も唐突だ。
彼女の溺れたときの臨死体験は、呼吸~ブレス~に深く関わっている。
喉を突いて自殺を図った彼と、息ができない状況がトラウマとなっている彼女。
生々しくてこちらまで息苦しくなってくる。
2人のキスは、温かさとか思いやりなんていう生半可な優しさはなく、互いを吸い尽くすほどの激しさだ。
彼らは呼吸(ブレス)に飢えている!!
ヨンのディスプレイが春、夏、秋と移ろうにつれ、2人の互いを求める気持ちも激しくなる。
これは「愛」と言えるのだろうか?

なお、チェン・ジンに恋焦がれる囚人の一途さが痛い。ガラスの心がパリパリ音を立てるのが聞こえるようだった。
「愛」と「憎」が紙一重であることを彼は暗に語っていると思う。
その彼や、監房の壁に線画を彫り続ける男、さらに共に生活する囚人たちからは、ある種の連帯感がうかがえる。
傷つけあいながらも時には支えあう仲間だ。

この監房も、ヨンの一見開放的な自宅も、本質的に変わりはない。

彼女にとって問題だったのは、アーティストとして充実しているかどうかではないだろうか。
刑務所でのディスプレイと歌は、彼女にとっての表現形態であり、誰かのためなんていう考えが最初からあったかどうかはわからない。
あの2人の姿は、鮮やかな背景に浮かぶ一つの映像だ。
ヨンはその「画」を最初から思い描いていたのだ。
彼女の行動は自己実現の方法の一つではないだろうか。
そして相手の「ブレス」さえ奪おうとする独占欲。
そんなところに彼女のエゴイスティックな面を感じてしまう。

家族3人の明るい笑顔からは「再生」が連想できるが、全く逆のパターンも想像できてしまう。
そんなことを考える自分が恐ろしい。

さて今回の目的は張震であり、その目的は充分達せられた。

trackback

ブレス :龍眼日記 Longan Diary

それは愛なのか同情なのか 天国なのか地獄なのか 死を目前にした男と5分間だけ死んだことのある女 余命わずかでありながらいくどとなく自殺を図る死刑囚チャン(チャン・チェン:張震)。 一方浮気が発覚しても悪びれる様子もない夫(ハ・ジョンウ)から心が離れて

コメント

早い!

孔雀の森さん、おはようございます。
早い!もうご覧になられたんですねー。
こちら関西は今月末から公開。もう少しの辛抱だわ。
鑑賞まで孔雀の森さんのレビューはおあずけにさせていただきますね、
読みたい誘惑に駆られるけど。
なんだかとっても観ごたえありそうで期待が膨らみますー。

GWの思い出♪

sabunoriさん、こんにちは。
まだ観ていない方が大勢いるのに書くのは悪いなあと思いつつ、すぐ書かないと忘れそうで…。
上映館が遠くて、今を逃したらナイ!と焦り、行って来ました。
片道の時間が上映時間をはるかに上回るなんて…トホホ…
でも東京散策も兼ね、GWのいい思い出になったかな。
私にとっては印象に残る作品でした。
人によって好き嫌いが分かれるようにも思えます。
sabunori さんのご感想、楽しみにしています。

ホント早い!

こんばんは♪
チャン・チェン出演とあってもちろんチェックはしてたのですが、もう公開してたんだとこちらのブログで知りました^^;←相変わらず最新情報を孔雀の森さんから得る私(笑)。

韓国映画で一体会話はどの言語?チャン・チェンは韓国語まで習得したのかな?と思ってたのですが、公式HPを見ると声を失った死刑囚という設定なんですね。

>人によって好き嫌いが分かれるようにも思えます。
私の場合はチャン・チェンしか目に入らず、内容自体理解できないかも(笑)。レンタルDVD鑑賞の予定なので観るのはおそらく来年あたりかしら…。

チャン・チェン!!

TKATさん、こんにちは♪

以前コメント欄で、TKATさんから今後のチャン・チェン出演作を教えていただいたことがありました。この作品もそのときに知ったような気がします。だからTKATさんには感謝!です。

>声を失った死刑囚という設定なんですね。
そうなんです。
チャン・チェン目的といいながらチャン・チェンの様子などは全く書いていない私。言葉では言い尽くせないんですもん。
台詞がない分、表情や動きの変化に見ごたえがありました。

DVDを鑑賞されたらぜひ感想をお聞かせくださいネ。

孔雀の森さん、観て参りましたー。
そうか!彼女は究極のエゴイスト・・・その通りですね。
あれは同情でも愛でもない。本当にそうだと思います。
ラストシーンを見て「彼女にとってチャンは一体何だったんだろう」と気持ちがザラついたのですが、
そう考えると妙に納得です。
元の家族のもとに戻ったところでうわべだけの家族を演じる日々に戻るだけ、という気がします。
それにしてもキム・ギドクという監督・・・私はちょっと苦手です。(笑)
力強さは感じるものの説得力がない・・・。(多分これは私が理解力が欠如しているのかも)
あ、張震!
彼は素晴らしかったですね。あの絶望に満ちた目が忘れられません・・・。

TBありがとうございます♪

sabunoriさん、こんにちは♪
レビュー、存分に楽しませていただきました。
土をこねてばかりいるヨンの夫が浮気するのももっともだ、というご意見に、うなづいてしまいましたよ。
刑務所で浮気する妻と、その間子供の面倒を見る夫。何だかすごく奇妙な光景で、受け入れがたかったです。
私は『私たちの幸せな時間』ではオイオイ泣いてしまったクチですが、なぜか残ってません。
でもこの『ブレス』はいつまでも残ってます。チャン・チェンの存在感が理由の一つですが、やはり味わったことのない奇妙な感覚を消せないのもその理由かも。
ともかく忘れられない作品の一つになりました。
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