春江一也『上海クライシス』 : 夢の国・亞洲文化宮

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春江一也『上海クライシス』

20080304


出版社: 集英社インターナショナル

刊行年: 2007年4月 


<あらすじ>
主人公は在上海日本国総領事館に電信官として勤務する香坂雄一郎。彼はライラ・エルデンというウイグルの女性と電撃的な恋に落ちる。彼女は故郷ウルムチを出て上海に着くや富豪老人に囲われたが、機をみて脱出したのだった。彼女の兄ヤマン・エルデンはかつてウルムチのホテル爆破事件に関与し、追われる身である。時を経て彼はアメリカ人ビジネスマンとして再び中国の土を踏み、妹との再会を待っていた。やがてライラは雄一郎の前から忽然と姿を消す。公安は雄一郎とライラが接触した事実を突き止め、ライラの身の安全と情報提供を交換条件として提示する。
<感想など>
中国に興味を持ったきっかけはTVのシルクロード番組だった。
1984年の初海外旅行で最初に観光した所は、ヤマン、ライラ兄妹の故郷ウルムチだった。
主人公香坂がのめりこんで読んだという井上靖著『楼蘭』は、私も夢中になって読んだ。
冒頭から感情移入して、気持ちが高ぶったまま最後まで突っ走った。

『プラハの春』『ベルリンの秋』『ウイーンの冬』に続き今度の舞台は上海だ。主人公の名は「香坂」だが、どうしても三部作で活躍した堀江亮介のイメージと重なってしまう。恋人との邂逅や、仕事に真摯に取り組む姿や、趣味であるオペラを楽しむ様子などは、亮介そのものである。名は違っても主人公はいずれも作者の分身なのだ。

物語の場面は、上海を中心に新疆ウイグル自治区、アフガニスタン、アメリカ、日本と、めまぐるしく移り変わる。
20世紀から21世紀にかけて起こった数々の悲惨な事件や、深刻な環境問題もからみ、この1冊がまるで近現代の歴史書のようだ。
中国の暗部も指摘しており、これがどのくらい信憑性があるのかはわからないが、ビジネスに関わる人々への指南書的役割も感じられる。

政治経済の現実面から、ライラをあやつる謎めいた人物といった非現実的な面まで、物語は時にはハードに、時には幻想的に描かれ、雰囲気もめまぐるしく変化する。
香坂とライラ、ライラとヤマンが再会する時は来るのか。
ライラの心を操っているのは何者か。
謎の死を遂げる者たちは誰の手にかかったのか。
登場人物に寄せる期待感と、ミステリーを追うときのゾクゾク感が、ラスト1ページまでぐいぐいと引っ張ってくれる。

いかなる理由があろうと、テロ行為は絶対に許されない。
この主張が物語の中心を貫いているから、出来事、登場人物、舞台となる地域など、構成要素が広範でも全体の統率が取れるのだろう。
正直なところ登場人物が多すぎてはじめのうち人間関係が把握できなかった。しかしその主張がわかるとそれぞれの役割も見えてきて理解できるようになった。

この作品は、著者の友人である上海領事館の領事が自殺した事件をもとに描かれたという。
ラストの風景は優しい光に包まれ、著者の亡き友への想いが風に乗って伝わってくるような気がした。

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