重松 清『カシオペアの丘で』上・下 : 夢の国・亞洲文化宮

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重松 清『カシオペアの丘で』上・下

20080221

 

出版社:講談社

刊行年:2007年5月



<あらすじ>
東京でサラリーマン生活を送る俊介は、30年前故郷の北海道北都市を離れて以来帰郷していない。しかし40歳を目前に「ガンで余命3ヶ月」の宣告を受け、妻子を残し逝くことに苦悩し、故郷の家族、友人らに思いを馳せる。
北都市で遊園地の園長をしている敏彦は、ある日幼なじみの俊介からメールを受信するが意味不明の内容に困惑する。敏彦の妻で小学校教師の美智子は、突然の俊介からの連絡に心が落ち着かない。
やがて幼なじみの雄司が、俊介の一家と、凶悪事件で娘を失った川原を伴い、「カシオペアの丘」にやってきた。

<感想など>
読めば読むほど心が重くなっていく物語。ガンに蝕まれていく男の姿がありのまま描かれ、時には「ここまで書かなくても」と感じることも。病床で見る景色や聞こえてくる音、心の動きはあまりにもリアルで、作者の想像とは思えないほどだ。
正直言って読むのが辛い。でも展開が気になってどんどん読んでしまう。

弱冠10歳の子供が背負った荷の重さに、読みながら悲鳴をあげそうになった。
40年前に起きた炭鉱事故。俊介の祖父の決断により、敏彦の父親は見捨てられた…。
何も知らず仲良く遊んでいた2人の関係が、ある日を境に大きく変化する。敏彦は半身不随の身になってしまう…。
当時の幼ななじみ、敏彦と美智子は夫婦であるが、美智子にとって俊介は特別な存在である。これは夫には絶対言えないことだ。
3人と気さくに言葉を交わせるのは雄司だけだ。

それぞれが善人で節度ある人間である。決して相手を責めず、自分の中だけで耐えている。互いに真綿で首を絞めあっている状態だ。
あやまっても相手を苦しめるだけ…。しかし死期が迫った時、ふと、それは「逃げ」ではないかと俊介は思う。
死ぬ前にやっておきたいこと。今まで考えたこともない諸々の事柄を否応なく突きつけられる。

人生では、許せない、許す、許してほしい、と思う場面が必ず出てくるだろう。そんなとき、当事者はどう考え、どう対処すべきか。物語は一貫してその「許し」について問いかけてくる。

ところで、途中まで、川原さんという「浮いた存在」が気になって仕方なかった。
「娘を殺害した犯人が、妻の愛人だった」とは、いかにもドラマくさい。その河原さんと死期の近い俊介の対面にも作為を感じてしまった。
でも終盤にさしかかった時、ふと河原さんが中心人物のように思えてきた。

彼は妻を許すことができるのか。

俊介をはじめとして、当時の幼なじみは互いに傷口を開く作業を始める。通常不必要であり、やるべきではないことだ。それをあえて実行するところを、川原さんに見せている。
まるで川原さんの「許し」を待つかのように周囲の人々は動く。

やはり作為的である。涙を誘おうとしている。と思いつつ、登場人物たちの真摯な思いを大事にしなくては、という気持ちにさせられる。

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