帚木蓬生『千日紅の恋人』 : 夢の国・亞洲文化宮

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帚木蓬生『千日紅の恋人』

20080207


出 版 : 新潮社

刊 行 : 2005/8



<あらすじ>
主人公宗像(ムナカタ)時子は38歳。最初の夫を交通事故で亡くし、2番目の夫とは離婚。現在は老人介護施設でパート勤務し、亡き父の遺したアパートの管理をしている。住人の中には一筋縄ではいかない者が多く、時子は家賃を催促したり、洗濯物の干し方を注意したり、警察との間に入ったり、近所の苦情を聞いたりと、苦労が絶えない。
近くに住む母峰子と一緒に行くカラオケ教室では〈サイゴン・スコール〉が十八番だ。
そんなある日「独身部屋」と名づけられた201号室に若い男性が入居してくる。


<感想など>
一見、登場人物は平凡な人々ばかりで、描かれているのも日常茶飯事だ。特別に大きな事件が起きるわけでもなく、大きな山場があるわけでもない。
しかし読み終わると、一つ一つの出来事が深く胸に刻み込まれているのがわかる。
なぜだろう…
そう考えた時、前言を撤回したくなった。
やはり彼らは平凡ではないし、出来事も日常茶飯事ではない。
矛盾しているかもしれないけれど。
これは作者の筆のなせる技ではないだろうか。
「感涙の最終回」まではすべてを、淡々と、抑えに抑えて綴ろうとしているのではないだろうか。
ラストまで読んで初めて、淡々と進んできた出来事の大きさに気づく、というわけだ。

帚木蓬生氏の他作品同様、女性の心理が丁寧に描きだされている。
例えば、自慢気な奥さんとの会話を早々と切り上げる様子や、「汚部屋」の住人に対する嫌悪感、〈サイゴン・スコール〉を歌うときの気持ちなどなど。
女性独特の心模様が、どうしてこんなに細かく表現できるのだろう。

それに比べ、相手の男性、有馬さんの描写は表面的だ。好人物で、スーパーの仕事に熱心で、お年寄りの相手が上手。20代後半という若さの割には落ち着いている。
それくらいだ。
ところで有馬さんの氏名は「有馬生馬」。
もしかして「白馬の王子」とかけてる?作者はパロディのつもりなのか。
もっとも有馬さんが乗っているのは青い乗用車だが。
こんな連想をすると、しっとりとした物語なのに笑いがこみ上げてくる。

もう一度元に戻るが、やはり彼らは非凡だ。
主人公時子の面倒見のよさは並みではない。
スタイルはいい、歌はうまい、料理も上手。思いやりにあふれている。
ヒロインに値する女性である。
有馬さんも美男子だ。こんな人いるのか?と思うほど人間ができている。
やはりドラマだ。

小説を読んで感動すると、よく実写版を想像する。しかしこの物語に限っては映像を観たいと思わない。
魅力あふれる人物たちの姿を、文字列の中を泳ぎながら思う存分想像したい。
季節の移ろいを、折り重なる言葉から感じてみたい。

そして。月下老人はやっぱりいたのだ、と思う。

コメント

同感です

ぼくははじめてこの作家を読みました。女流の恋愛ものはそうとう読んでいましたが、この作品は性愛の場面がなくて心理の細やかさのみで見せてくれてよかったです。
たんたんと来た流れが最後になって逆流もあり、芸のある作家だと思いました。
あなたがここで書いている文章にもひかれました。この本の本質をよくとらえていると感じました。

再読したいです

天地わたるさん、こんにちは♪
読んでからだいぶたつのでかなり忘れてしまっていますが、
読後感のよさは覚えています。
いただいたコメントを拝見し、自分のレビューを読み返して、
その時の湧き出るような感動を、思い出しました。
帚木蓬生作品では、医療を扱った物語を多く読んできたので、
このような日常を淡々と描いた話は異色だと感じました。
また読んでみたい作品の一つです。
コメント、ありがとうございました。
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大切に♪

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