春江一也『ウィーンの冬』 : 夢の国・亞洲文化宮

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春江一也『ウィーンの冬』

20070829

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  出版社: 集英社インターナショナル

  刊 行: 2005年 




<あらすじ>
『ベルリンの秋』のその後。外交官堀江亮介の弟洋三は、在イラク日本大使館一等書記官だったが、バグダッドで交通事故死する。亮介は外務省から社団法人事務所に出向後、ウィーンに特務要員として派遣され、日本のカルト宗教集団が絡む事件を極秘調査する。その最中、恋人だったシルビアが病死。悲嘆にくれながらも亮介は覚悟を決め、鍵を握る重要人物を追う。やがて事件はさらに大きな事件に絡んでいることが判明。
<感想など>
たまたま図書館で見つけた作品。『プラハの春』『ベルリンの秋』と共に『中欧大河ロマン三部作』と呼ばれているそうです。前の二作は主人公の恋愛に焦点が当てられていたのに対し、この『ウィーンの冬』は特務要員としての亮介の活躍が中心に描かれ、ハードボイルド的な展開が楽しめました。

第一作で20代だった主人公もすでに50歳。離婚、弟の死、窓際族を経験してまさに不遇の時代と言えそうな、精神的にどん底の状態です。そんなとき突然「ウィーンへ行け」という命令が下ります。
三部作の中ではこれが一番好き。不運を背負った男の一発逆転劇。「中年の星」に拍手を送る感覚と、事件解決に向かう過程のドキドキ感から、一気に読んでしまいました。

亮介の任務は銃の携行を命じられるほど危険で、住居も職場も一般には秘密裏という状態。
尾行することもされることにも慣れていて、その尾行をまく技術も超一流。24時間監視され、監視しているような生活。こうした環境がどこまで本当なのかはわかりませんが、あまりにもリアルな描写に、その情景が浮かんでくるほどです。
日本の宗教団体による拉致殺害事件、武器の大量輸送、北朝鮮による拉致事件、湾岸戦争…と、世界を震撼させる事件が様々な背景で絡み合うところには、鳥肌が立つほどの緊迫感があります。
高度な知恵や能力のぶつかり合いも大きな見所です。

後半は、悪を貫こうとする者と阻止しようとする者のせめぎ合いが詳細に綴られ、人間の倫理観について考えさせられます。三村という信者の男がとる行動に関して、主人公亮介が「日本人の死生観」の一言で説明してしまうのは腑に落ちませんが、これはラストで引き立つキャラクターに仕立てるため、という気もします。
三村のとった行動はあまりにも「きれい」すぎて、いかにも「物語」なのですが、物語として描かれるということは現実に起こりうるわけで、ぞっとします。
(彼は「核」を悪者から遠ざけるために自らを犠牲にした)

弟の死が偶発的ではなかったこともわかり、すべての出来事が絡み合った糸でつながっているように構成されています。
もう一度読むと、その糸を少しはほぐすことができるかも知れません。

コメント

こんばんは♪

『ベルリンの秋』のその後があったんですね!知りませんでした。
主人公もすでに50歳!現代にあるような事件っを扱ってるという点も今(2005年)を意識したストーリーになってますね。これらの事件も少なからず著者の体験をベースに描かれてるんでしょうか。

主人公を思い出し理解しようと思うなら、もう一度『プラハの春』から読むしかないのかしら・・・。こりゃ『ウィーンの冬』を読むまで時間かかりそう^^;

TKATさん、こんばんは。

この本の最後に「本書は史実ならびに著者が知りえた情報をもとに書き下ろしたものですが、あくまでフィクションです」の一文があります。
読んでいくうちに「主人公=著者」と思い込んでしまうのですが、こういう読書傾向に対する「一言」なのかな、とも。

>これらの事件も少なからず著者の体験をベースに描かれてるんでしょうか。

「宗教団体の事件に対する日本の警察機構の甘さ」について主人公が述べる場面がありますが、これはやはり世界各地を飛び回った著者ならではの意見だと思います。

私はこれを初めて読んでも充分楽しめるのではないかと思いました。前の二作とは趣がだいぶ違うからです。人によってその感覚は違うと思いますが。

ふと『夏』はないんだろーか、と思ってしまいました。
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