春江一也『ベルリンの秋』上・下 : 夢の国・亞洲文化宮

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春江一也『ベルリンの秋』上・下

20070713

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 出版社: 集英社
 種 類: 文庫
 刊 行: 2001年 



<あらすじ>
『プラハの春』のその後。外交官堀江亮介はプラハから帰国して本省勤務となる。1973年には東ドイツ大使館に赴任、死去したカテリーナの娘、シルビアと再会する。二人は恋仲となるが亮介は既婚の身。後に離婚をめぐり泥沼状態に。
一方、ソ連崩壊を予測する論文をめぐり、東西両陣営では様々な憶測が飛び交う。
そんな中、東欧諸国では社会主義脱却へのシナリオが整いつつあり、DDR(東ドイツ)でも壁崩壊へと向かっていた。こうした動きに警戒を強めるソ連。謎の殺し屋が秘かに追ってくるのを亮介は感じとり、その真相を知った瞬間…。
<感想など>
アンドロポフ、ブレジネフ、ホーネッカーといった歴史上の人物に感情を吹き込み、物語を動かすところに壮大さを感じます。こうした人物に付随する政府要人の動きもまた興味深く、面白さの点ではここに描かれる恋愛ドラマより上。

まずはKGB暗殺作戦の秘密要員、コンスタンチン・スミルノフに要注目!
彼は『プラハの春』でカテリーナを暗殺したユルゲン・ヘス。元シタージの特務要員でしたが、この物語では名を変え、ソ連に「飼われた」殺し屋として暗躍します。(以下「ヘス」と記します)

もう一人要注目なのが、DDR国家治安省「シタージ」局長(後に第一次官)のラインハルト・シュナイダー。亮介の亡き恋人の元夫であり、現恋人シルビアの父親。何とも複雑な間柄。(つまり亮介は母娘を恋人にしたということ)
今回はこの人物が陰の主人公だと思っています。「シタージ」のまとめ役でありながら、あるシナリオを着々と作成していきます。
自らの感情を、そして最も愛する者をあえて裏切り、正義の追求に命をかける生き方を選択するとは…。もう「敬服」の一言に尽きます。
しかし同時に、彼の人生とは何だったのだろうと考えさせられます。その計画を実行するためだけの人生だったと思うと胸が痛くなります。亮介との距離が縮まっていく過程では、静かな感動に包まれました。

ヘスの真の標的を知ったときの驚き!これは亮介と共に味わう驚愕ですが、この緊迫感がたまらない!!
ヘスはDDR(東ドイツ)によって人格を壊され、彼はそれ以降復讐劇を演じ続けたとも言えます。『プラハの春』には「ヘスが夫人の不倫現場を目撃し、その相手を殺す過程は、すべて国家によるワナだった」という内容が描かれています。人間の心を破壊され、狂気に駆り立てられていくヘスは、正義を忌み嫌い、正義を敵とし、結局は正義に敗れるという末路をたどります。彼にも「何のための人生?」と問いかけたくなりました。
こういう人物が、本当にいたのでしょうか。

ところで、この作品もラストが消化不良です。
なぜこれも「あの人は今」で終わるのでしょう。
読者が一番知りたいのは、亮介とシルビアの「その後」。
もしこれを描かないなら、DDR側検問所での再会で終わるべきです。
もしかしたら、こうした読者の要求をよく理解した上での「策」かもしれません。
あるいは主人公=著者であることの「照れ」でしょうか。

コメント

こんばんは。

おお~、こちらも早速読まれたんですね♪私は最近ビールを飲みながらテレビで阪神戦を見ており、アルコールが入るとどうも読書が進みません(^^;)。

『ベルリンの秋』ですが、孔雀の森さんの感想を読んでも半分も内容を思い出せません(汗)。先に読んだ『プラハの春』の方が記憶にあるのはなぜだろう?いつになるかわかりませんが、必ずもう一回読みまーす。(『アフリカの蹄』もね♪←どちらかと言うとこちらの方がより読み直したい)

そうそう、サム・リーも出演してる『ピンポン』、主役は窪塚洋介ですが中村獅童の顔の怖さがとっても印象に残ることでしょう(笑)。

TKATさん、おはようございます♪

>私は最近ビールを飲みながらテレビで阪神戦を見ており

お会いしたことはないけれど、何となく姿が想像できてほほえましいです。

>先に読んだ『プラハの春』の方が記憶にあるのはなぜだろう?

『プラハの春』の方が格調が高いような気がします。駆け出し外交官としての主人公は初々しいし、恋愛劇も切なさが前面に出ているし。
それに対し『ベルリンの秋』は恋人との関係は現実的です。歴史の転換についての描写は秀逸だけど、『プラハの春』の盛り上がりには負けるかなあ。
私も『プラハの春』の方が記憶に残るかも。

以前読んだ本の中には、感動したんだけど内容をすっかり忘れているものが多いです。
私はほとんど読み返したことがないのですが、もう一度読むと感動もひとしおかもしれませんね。

『ピンポン』は面白そうですね♪
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