春江一也『プラハの春』上・下 : 夢の国・亞洲文化宮

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春江一也『プラハの春』上・下

20070705

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 出版社: 集英社
 種 類: 文庫
 刊 行: 2002年 (初版は2000年)



<あらすじ>
1967年の春、プラハ。ある日、外交官の堀江亮介は東ドイツ人の反体制活動家、カテリーナ・シュナイダー(グルーペ)と娘シルビアに出会う。亮介とカテリーナは恋に落ちるが、シタージ(治安機関)に監視される彼女との恋愛は茨の道である。
チェコスロバキアでは経済改革と自由化に向け気運が高まりつつあったが、周辺の東欧諸国首脳陣はこの動きを封じ込めようとしていた。
1968年春。カテリーナは身の危険を覚悟で国際放送番組のナビゲーターを務める。番組の反響は大きく、周辺諸国はますます自由化に対する危機感を強める。そしてついにソ連の軍事介入という事態に…。
<感想など>
遠い昔、高校の世界史でさっと通り過ぎただけの東欧諸国事情。教科書の数行が何百倍にも膨らんで、目の前にパーっと広がった感じです。
チェコスロバキアの共産党第一書記ドゥプチェクが、身近な存在に思えたり、東ドイツ国家元首のウルブリヒトの非情さが腹立たしくなったり。東欧諸国の首脳陣たちに個性という色をつけて物語に登場させたことで、歴史が身近で流れていくようです。
第三者の立場である日本人外交官が、いつしか立場を越えて「プラハの春」を応援するようになります。そして読んでいる自分も、彼と一緒に「プラハの春」を体験している気分になりました。
たびたび登場する「モルダウ」も懐かしい響きです。このメロディを口ずさむと、モルダウ(ブルタバ)のゆったりした川の流れが想像できます。「プラハの春」に湧く民衆の声と、川の流れと、そして湧き上がってくるような旋律。読書でこんな雰囲気を味わえるとは♪
ところで、亮介の恋人カテリーナが、どうしても生身の人間と思えません。あまりにも高貴で、意志が強くて、その反面ガラスのもろさもかかえていて、実体のない者としか映らないのです。ひたすら大事なものを守ろうとする姿、闘士として権力に立ち向かう姿からは、十字架を背負った者の悲哀を感じます。亮介は幻影を抱いていたのでは?
一方、彼女をつけねらうヘス(東ドイツ秘密特務機関要員)は、究極の悪役。しかし彼を狂気に走らせたのが国家の作戦であることを思うと、彼もまた時代の犠牲者に違いないのです。(彼はラストで行方知れずに)
物語の冒頭は現代(1992年)の日本です。チェコスロバキア首相を招いた公式晩餐会に亮介が招待された場面から始まります。故宮澤元首相のスピーチに引用された、ソ連軍侵攻を伝える電報は、まさしく亮介が打ったもの。この後、物語は1967年にさかのぼります。
最後は当然晩餐会に戻ると思いきや、物語は「あの人は今?」を簡単に伝えるだけで終わります。これが私にとっては消化不良です。
亮介は、当時をいまだに引きずっている様子。不整脈もこれが原因のようです。この晩餐会では、彼の中の何かが変わらないと意味がありません。彼がわざわざつけていった思い出のカフスボタンに、誰か気づく人がいてもいいはずですが…。「最後には絶対シルビアが登場する」という私の確信は大ハズレでした(笑)。

この作品は、2002年宝塚歌劇団星組によって演じられ、また、昨年NHK-FMでラジオドラマ化(高橋和也、若村麻由美主演)されたそうです。
でも映画化はまだのよう。もし映画化するとしたら、主役の日本人俳優はドイツ語、チェコ語を駆使しなければならないだろうから、たいへんでしょう。
また、原作の壮大さにどんな素晴らしい映像もかなわない、ということになったりして…。

先日観た『善き人のためのソナタ』より20年前の時代ですが、DDR(東ドイツ)の国家体制など共通する部分も多く、映像を思い浮かべながら読んでいました。
続編『ベルリンの秋』は、時代も舞台(東ドイツ)もこの映画とぴったり重なるので、こちらも楽しみです。

コメント

こんばんは♪

感想をアップされたんですね♪
私は大分前に読んだので詳しい内容はあまり覚えてないのですが、面白かったという記憶だけはしっかり残ってます。

東欧諸国事情は私も疎いのですが、この本を読むとチェコスロバキアの当時の世界にどっぷりハマってしまいますよね。
ちなみに私が今行きたい国ベスト5にチェコは入ってます♪

>この作品は、2002年宝塚歌劇団星組によって演じられ

そうなんだ!どんな配役だったのか気になります。

>最後は当然晩餐会に戻ると思いきや、物語は「あの人は今?」を簡単に伝えるだけで終わります。これが私にとっては消化不良です。

そうだったような気がする・・・。
スミマセン・・詳細なことは忘れてしまっており、ラストさえも孔雀の森さんの感想を読んで徐々に思い出してきました^^;
私ももう一度読み直してみようかなと思ってます。

TKATさん、おはようございます♪

>ちなみに私が今行きたい国ベスト5にチェコは入ってます♪

私も行ってみたいです♪思わずガイドブックを手にとってしまいました。

>どんな配役だったのか気になります。

堀江亮介を香寿たつき、カテリーナを渚あきが演じたそうです。宝塚には疎いので、どういう役者さんか知らないのですが。
なるほど舞台で映える作品かも、と思いました。

この作品を読んでから、東欧という未知の世界に興味がわき、気が向いたとき調べたりしています。ホントに足を運ぶ日が来るかも知れません♪
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