善き人のためのソナタ : 夢の国・亞洲文化宮

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善き人のためのソナタ

20070626

yokihito.jpg  2006年/ドイツ/2時間18分(劇場にて鑑賞)
  監 督  フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
  原 題  Das Leben der Anderen
  出 演  ウルリッヒ・ミューエ  マルティナ・ゲデック
        セバスチャン・コッホ  ウルリッヒ・トゥクール


<あらすじ>
1984年の東ベルリン。ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は、劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)と女優クリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的である証拠をつかむよう命令される。彼は早速2人が住む部屋に盗聴器を仕掛け、監視を始める。最初のうちは彼らの行動を逐一報告していたヴィースラーだったが、やがて2人の人間としての感受性、生き方に感化され、任務が遂行できなくなる。そしてついには2人を守る行動に出て、これが国家保安省に知れ左遷される。郵便を開封する業務を黙々と続けていたある日、ベルリンの壁崩壊のニュースが流れるのだった。
<感想など>
シュタージという監視システムに何の疑問も感じなかったヴィースラー大尉。序盤における彼の動作は操り人形のようにぎこちなく、自分からの言葉はすべて一方的で、人の話もただ聞くだけです。彼の行動には、コミュニケーションとして成立する部分が極めて少ない。孤独を孤独とも感じない。そんな彼が変化していく様子は、静かでありながら怒涛のうねりのようでした。

彼の対極にいるのが劇作家のドライマン。常に芸術の高みを求め、真理の追究をする人物です。いかなる圧力にも屈せず、自らの危険を顧ずに西側との接点を求める姿は、DDR(東ドイツ国家)にとっては危険人物にほかなりません。
でもヴィースラーとドライマンは、一途な点においては似たもの同士。ヴィースラーがドライマンの生き方に強く共鳴したのは自然だったのかも知れません。

ドライマンの恋人でありながらIM(インオフィツィエル・ミットアルバイター:非公式の密告者)として彼を「売って」いた女優クリスタ。彼女は常に受身で、正義に対する感覚も希薄です。女優としての自信の揺らぎ、傷つくことへの恐怖。そんな彼女自身の弱さが、大臣との関係に甘んじたり、恋人を売ったりする行動を生んだのでしょう。
彼女にはあまり共感できませんでした。ドライマンとの恋愛場面やヴィースラーが傾倒する様子は、物語の展開上では理解できます。彼がクリスタに「ファンです」と告げる部分は最高の見せ場。でも彼女に人間的魅力があるとは思えません。魅力をだんだんそがれていくような描き方には、観ている側が辛くなります。
彼女のような市民が圧倒的多数だったかも知れないと思うと、このゆがんだ社会に底なしの恐怖をおぼえます。

作品にはさまざまな書物が登場します。一つ目はブレヒトの詩集。ヴィースラーがドライマンの部屋から持ち出して読み、感化されるきっかけをつくった書物です。
二つ目は『善き人のためのソナタ』。演出家イェルスカの遺作となった楽譜。ドライマンのピアノ演奏を「盗聴する」ヴィースラーの表情が印象的です。
そしてドライマン作の『善き人のためのソナタ』。
ヴィースラーと、この3編との出会いは実に運命的。

ドライマンがおびただしい量の報告書を読んで真実を知る過程では、ヴィースラーとの距離が縮まっていくのを感じました。しかし2人の直接的な出会いは描かれません。だからこそより強い結びつきを感じます。
ものすごく低い確率の中でドライマンは生き延びたのだなと思うと、感無量になりました。


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