塚本史『白起』 : 夢の国・亞洲文化宮

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塚本史『白起』

20070228

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  出版社: 河出書房新社

  出 版: 1998/07



<あらすじ>
紀元前330年から257年に生きた、秦の将軍白起(はくき)の物語。子供時代、白起をいじめた少年たちが次々と狩猟民の罠にはまって絶命する。彼は木に登って無事だったが、この時「下等な人間は泥から生まれたのだ」という思いを胸に、故郷を出る決心をする。
秦の権力者魏冉(ぎぜん)のもとで、周辺諸国をやぶる常勝将軍として活躍。紀元前260年の長平の戦いでは趙軍に大勝したが、彼の活躍により自分の地位を危ぶんだ宰相范雎(はんしょ)は、以後白起の出兵を認めなかった。范雎に疑念を抱く白起は、その後危機の際の出兵を要請されても拒否し、ついに昭襄王に自害を申し渡される。

<感想など>
題名が『白起』なのに、彼の人物像が浮かんできません。
ほとんどのページは彼の周辺の人物や史実について述べており、全体として説明口調。
これまで読んだ歴史小説がヒーローの物語だっただけに、当てが外れた感じです。
でも、この白起は後世に語り継がれるような人間的魅力を持った人物ではなかったようです。残虐的な面で有名らしいので、周りにポイントを置いた描き方が合っているのかも知れません。

興味があったのは墨家の姿。先日観た映画『墨攻』から約100年後の世界を描いています。この物語では非戦非攻を訴える墨家は、<秘かに民衆を思想改造する呪術師>という扱いです。『墨攻』以来墨家びいきになった私にとって、彼らの結末は非常に残念。
墨家の若いグループは、作った武器を売って金に換えますが、長老たちはこれに反対。彼らは仲間割れした後、窑洞(ヤオトン・崖に作られた洞穴式住居)に立てこもりますが、秦の捕虜とともにここに閉じ込められます。そして窑洞が破壊されそのまま埋められます。死者は40万。白起が指揮した<長平の戦い>の結末です。
白起にはヒーローのかけらもありません。

血も涙もないような人物ですが、初恋を何十年も引きずっているところ、顔を見たこともない父に思いをはせるところには、人間的な面が垣間見えます。
自害の前に「自分が愛されると思ったことがない」ということをつぶやきます。「下等な人間は泥から生まれた」と胸に刻んで闘ってきた彼は、いくら勝とうと、階級が上がろうと、幸せを感じた時はなかったのだろうと、不憫に思えてきました。
宮城谷昌光著『奇貨居くべし』『孟嘗君』『楽毅』(未読)の内容も重なっています。『奇貨居くべし』の呂不韋(りょふい)は男前で頭脳明晰で優しさも持っている、まさにスーパーマン。でもこの物語での彼は、鷲鼻のずるがしこい商売人。孟嘗君については、宮城谷作品でも本書でも、尊敬すべき品格ある人物。
登場人物の描写の違いも楽しめました。

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