2016-06 : 夢の国・亞洲文化宮

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神なるオオカミ

20160619

神なるオオカミ

2015年/中国・フランス/2時間1分(レンタルDVD)
監 督  ジャン=ジャック・アノー
原 題  狼图腾 Wolf Totem
原 作  姜戎「狼图腾」
出 演
馮紹峰(ウイリアム・フォン)竇 驍(ショーン・ドゥ)
巴森扎布(バーサンジャブ) 尹鋳勝(イン・チューション)

<あらすじ・感想など>
2004年発表のベストセラー「狼图腾」(ジャン・ロン)が原作。特典映像には、準備に7年の歳月をかけた、という監督の談話や、モンゴル狼を訓練する様子も収録されていた。本編以上に興味がわいた。

文化大革命で下放された大学生、チェン(馮紹峰)はヤン(竇驍)とともにパオで生活しながら厳しい大自然に立ち向かう。族長のビリグ(巴森扎布)の教えから、狼を畏怖する心も学ぶが、いつしかチェンは狼の子を育てたいと考えるようになり、それを密かに実行する。

ストーリー展開として、主人公の狼に対する思いやほのかな恋心などが描かれているが、映画の大半は狼の姿である。群れで疾走する光景、天に向かって吠える姿、こちらをじっと見つめる鋭いまなざし、そして狩り。狼が監督の心をつかんで離さない、というのがよくわかる

さらに衝撃的なのが、凍りついた動物が雪原に突き刺さっている場面だ。人間模様はちまちましたものに過ぎない、なんて感じてしまうほど、厳しい光景だった。

自然に手を加える人間に対する批判も描かれる。ならば野生動物を調教して映画を撮ることはどうなのか?…などと、普段考えないことが頭をよぎる。そんなことを言い始めればきりがないはずなのに。

ともかく、本作の主人公が神なるオオカミであることは確かだ。
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若葉のころ

20160618

五月一號

2015年/台湾/1時間40分(劇場で鑑賞)
監 督  周格泰(ジョウ・グーダイ)
原 題  五月一號
出 演  
程予希(ルゥルゥ・チェン) 任賢齊(リッチー・レン)
賈靜雯(アリッサ・チア) 石知田(シー・チーティアン)
邵雨薇(シャオ・ユーウェイ) 鄭暐達(チェン・ウェイダー)
庹宗華(トゥオ・ツォンホァ) 王宇婕(ワン・ユージエ)

<あらすじ>
バイ(程予希)は17歳の女子高生。台北で祖母(應采靈)、母(賈靜雯)と暮らしている。ところがある日突然、母が交通事故で意識不明に。そんな中、バイは偶然、母がリン(任賢齊)という人物に宛てた未送信メールを発見する。彼女は親友ウェンウェン(邵雨薇)、同級生のイエ(鄭暐達)との三角関係に悩み、上海に住む実の父(包小柏)を頼ることもまままならず、不安定な気持ちを抱えていた。彼女は母になりすましてリンと会う約束をする。

<感想など>
ここ数年観てきた若者中心の台湾映画では、どちらかといえば男子の気持ちの方が主体だった。そんな中、今回は女子の方がメイン。あの「藍色夏恋」で、ルンメイちゃんがボーリンくんを振り回して困らせている場面がよみがえった。あの時もずいぶんひどいことを…と思ったが、本作はその比ではない。窓から服を投げるところで唖然としてしまった。ストーカー行為から先に進めない男子には納得できるが、いきなりその行為に走ろうとする女子の激情は理解しがたい。

もう一つ、理解に苦しむシーンがある。
過去のパートで、リンが「発見」してしまう場面。いきなり入りこんで男性教員(庹宗華)に突進していくところが解せない。マドンナ教師に憧れていたわけでもないだろうに。しかし、教育現場であるまじき行動を阻止したい、という一途な思いであるとすればわからないでもない。リンは心に深い傷を抱えたまま、大人になった今も前に進めないままでいるのでは?そう考えると、あのシーンは当時の教育、ひいてはあの時代に対する批判とも受け取れる。

やや違和感のある場面について書いたが、全体的にはみずみずしい場面、特に水の風景が印象的だった。ホースの水を頭からかぶるバイ。雨上がりの水たまり中を飛び跳ねていくワン。雨の中バスケットボールに夢中のリン(石知田)。過去と現代が交差する中で、水は時に勢いよく、時にゆるやかに、若者たちに寄り添う。光の加減にも、目をくすぐられている感覚になる。終わってみると、内容よりも映像効果の方が記憶に残っていることに気づいた。

そんな風に考えていくと、次々と印象的な場面がよみがえる。
過去の二人が訳した詩が、1文ずつ交互に語られていくシーン。訳し方の違う文章が重なり合って、二人の鼓動がスクリーンを通して伝わってくるようだった。この作品を観る前はビージーズの曲を思い出すこともなかったが、観ていくうちにだんだん懐かしくなっていった。

レコードをフリスビーのように次々と飛ばすシーンも心に焼き付いている。やってみたい!と思いつつ、もったいな~い、と、躊躇してしまいそうな私。

ところで、日本のサイトで下調べをしながら、知っている俳優はリッチー・レンだけだと思っていた。アリッサ・チアって誰?という感じ。でも観始めてすぐ、それが賈靜雯とわかった。相変わらずキュートでかわいらしい。私は彼女のメリハリのある声が好きだ。「王蕾」の語りを聞きながら、心が浮き立つのを感じた。

山河ノスタルジア

20160614

山河ノスタルジア

2015年/中国・日本・フランス/2時間5分(劇場で鑑賞)
監 督  賈樟柯(ジャ・ジャンクー)
原 題  山河故人 Mountains May
出 演  
趙 涛(チャオ・タオ)  張 譯(チャン・イー)
梁景東(リャン・ジンドン) 劉 陸(リウ・ルー)
董子健(ドン・ズージェン)  張艾嘉(シルビア・チャン)

<あらすじ>
1999年、山西省の汾陽(フェンヤン)。タオ(趙涛)は幼なじみのジンシェン(張譯)、リャンズー(梁景東)の2人から想いを寄せられ、野心家のジンシェンと結婚。リャンズーは街を離れる。

2014年。タオはジンシェンと離婚し、汾陽で事業を営んでいた。息子のダオラーは父ジンシェン、継母と共に上海で暮らしている。一方、炭鉱での仕事が長いリャンズーは肺を患い、妻(劉陸)と幼い子と共に帰郷。タオから治療費を渡される。そんなある日、タオの父が急死し、葬儀のためダオラーを呼び寄せる。ダオラーはオーストラリアに移住することをタオに告げる。

2025年。オーストラリア。19歳のダオラーと、中国語しか話せない父との溝は深まるばかり。そんなある日、中国語教師ミア(張艾嘉)がかけた曲に懐かしさを感じる。ミアとの交流を通し、彼は母の面影を探すようになる。

<感想など>
最初に、聞き覚えのあるメロディと、懐かしい雰囲気のダンスシーンが飛び込んできた。この音楽、後で調べたら「ゴー・ウェスト」というタイトル。みんなの視線が西欧に向いているように感じられた。1999年のパートでは、主人公タオが、人生の岐路で、自分の気持ちよりも金銭の方を重視する。結婚話を告げられた父親が、口では「自由にしなさい」と言いながら陰でがっかりしている様子が印象的だった。親にしてみれば優しそうなリャンズーの方がずっと良かったのだろう。相手が違ったら?と思わず想像してしまった。

サリー・イップの「珍重」も懐かしい。テクノ風メロディに乗る広東語がゆったりと流れていく。人々が惹かれる気持ちはよくわかる。「英語と西洋」、「広東語と香港」が希望と結びついていた時だったのかもしれない。

時代はいきなり2014年へ。その間の出来事をすべて割愛するとは…と意外だったが、ドラマにありがちな修羅場など、この作品では無意味だろう。裕福な雰囲気を漂わせているタオと、病に苦しむリャンズーの再会が切ない。どちらが幸せか、などと比較したくなるが、それも無意味であると思い直した。

そして時代は近未来の2025年。発達したIT技術とか、熟年女性との恋愛関係とか、正直言って必要のない事柄に思えたが、変わらないモノだけは心に残った。

その一つがレコードプレイヤーから流れる「珍重」。ある年代にとっては懐メロである。レコードについては、1999年にはすでにカセット(さらにCD)が普及していたことを考えれば、さらに時代をさかのぼった「お宝」と言えそうだ。レコードは、近未来にはどんな風に扱われるのだろう。
また、タオが着ていたレインボー柄のセーターが、犬の服に作り替えられていた。誰もが気づく「変わらないモノ」として、生き生きと描かれている。
そしてタオが包んでいる餃子。2014年のパートでは、タオが息子と別れる前の晩に餃子を作っていた。2025年の風景も変わらない。息子の気配を感じたタオの静かな表情が胸を打つ。

観る人によって印象的なところも違ってくるだろう。当たり前のことだが、今回は特にそれを強く思った。すべてのカットに何かしらの意味を持たせているのでは?と画面に見入った。賈樟柯作品ではいつも「分かりにくいメッセージ性」がもどかしかったが、今回は以前より分かりやすく、後味もいい。

10年後の再鑑賞が楽しみだ。

風櫃の少年

20160605

フンクイの少年2
1983年/台湾/1時間41分/劇場で鑑賞
監 督  侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
原 題  風櫃來的人
出 演
鈕承澤(ニウ・チェンザー) 林秀玲(リン・シウリン)
庹宗華(トゥオ・ツォンホァ) 張 世(チャン・シー)
顔正国(イェン・チェングォ) 張純芳(チャン・チュンファン)

<あらすじ>
澎湖島の風櫃(フンクイ)。阿清(鈕承澤)は高校中退後、ケンカや悪ふざけに明け暮れる日々を送っていた。あるとき彼は仲間と傷害沙汰を起こして町に居づらくなり家を出る。3人の行先は阿栄(張世)の姉(張純芳)が住む高雄。彼女の世話で彼らは下宿を確保。向かいの部屋に住む黄錦和(庹宗華)と同じ工場でアルバイトを始める。阿清は黄錦和の恋人小杏(林秀玲)が気になって仕方がない。

<感想など>
「台湾巨匠傑作選2016」でドキュメンタリー映画「台湾新電影時代」を観て、挿入されていた本作の映像が頭から離れなくなった。特に上に掲げたおバカたちの踊りが、もう笑えて笑えて…。彼らは一人の少女に向かってアピールしているのだ。少年のころにはこんなひと時があるのだ、と思わせる一場面。

写真右端が、現在活躍している鈕承澤監督である。なんだかそのまま大人になったような…なんて言ったら怒られるだろうか。この阿清クン、風櫃を出たときは何も考えていない、ただ突っ走るだけの少年に見えたのだが、初恋を経験した後にちょっと大人の雰囲気になる。仲間の2人が悪ふざけをしているときに、自分の未来を見つめて日本語を勉強したり、人の気持ちを察したりするようになる。彼には「芽」がある。実は父は野球のボールを頭部に受けて以来、介護なしでは生活できない身。彼の中では常に元気なころの父と、現在の父が交錯している。父の死を経て、彼はまた一歩成長したように見えた。

ただ、かっこよさという点では先輩の黄錦和に及ばない。この黄錦和を庹宗華が演じていたのね。今の恰幅のよさからは想像もできない細い身体。(笑)黄錦和という人物は、仕事先のモノを盗んで横流ししたのがばれてクビになり、その後台湾を離れる。小杏は、阿清らと一緒に遊んでいても彼のことが頭を離れない。けれども錦和が高雄に帰ってくると知って、あえて台北に行く。そんな小杏の決意には驚くとともに、彼女を応援したくなった。

ふと、「モンガに散る」(鈕承澤監督)を思い出した。趙又廷演じるモスキートの母親役が、小杏役の林秀玲で、しかも美容師。髪に人一倍気を使う小杏と重なるのである。小杏は艋舺界隈で暮らすことになるのでは?もしかしたら恋人との間の子供をその地で育てることになるのでは?などと勝手に想像してしまった。なお、鈕承澤がモスキートの父親役であるが、あの阿清が小杏と恋人関係になるとは思えない。相手はやはり黄錦和?(完全に妄想…)ちょうど小杏が台北に出ているときに、「モンガに散る」のストーリーが展開している。年代的にみて、小杏とモスキートの母親が同じ、というのはあり得ないが、それでも艋舺のどこかに黄錦和や阿清の姿もちらついてしまう。(笑)

兵役を前にした青春の1ページ。時折流れるクラシック音楽が、はじけ飛ぶ彼らの姿から遠いと思いつつ、ノスタルジーがかきたてられた。80年代は私にとっても青春時代だったんだなあ、と。

オマールの壁

20160604

オマールの壁2
2013/パレスチナ/1時間37分(劇場で鑑賞)
監 督  ハニ・アブ・アサド
出 演
アダム・バクリ エヤド・ホーラーニ
サメール・ビシャラット
ワリード・ズエイター リーム・リューバニ

<あらすじ>
パレスチナ自治区。パン職人の青年オマール(アダム・バクリ)は、友人のタレク(エヤド・ホーラーニ)やアムジャド(サメール・ビシャラット)と抵抗運動を続けている。ある日3人で検問所を銃撃した後、彼はイスラエル秘密警察に捕まり、仲間を売ることを条件に釈放される。しかし仲間内でも互いに不信感をもち、恋人のナディア(リーム・リューバニ)さえもオマールを疑っていた。そんな中、アムジャドからナディアが彼の子を身ごもっていると聞かされる。

<感想など>
始まった時点で、中途半端な終わり方ではないだろうと思わせる、緊迫した展開である。恋人、仲間に会うため、いつも命がけで分離壁を登るのだが、一体いつまでそうしなければならないのか思うと息が詰まりそうだ。彼らの屈託のない笑顔の裏に、死と隣り合わせの生活を余儀なくされる者の恐怖、怒りが張り付いているようで、時に目をそらせたくなる。

オマールは、仲間であるタレクの妹、ナディアと恋仲であり、互いに結婚を望んでいる。ところが捜査官のラミ(ワリード・ズエイター)は真犯人を言わないと彼女にまで危害が及ぶと脅迫。八方ふさがりの彼が何とかその状況を打破しようとする姿が切ない。というよりも凄まじい。狭く行きどまりの多い路地を駆け抜け、飛び越えていく姿には、くぎ付けになった。その一方で、騙し、騙されることに慣れきっているラミの緩さが腹立たしくなった。白髪交じりの口髭を見ると悪寒が走る。それもまた作り上げられた存在なのだと思うと、何を憎んでよいのかわからなくなる。

負の連鎖を思わせるラスト。音のないエンドロールがさらに追い打ちをかけて来るようだった。

プロフィール

孔雀の森

Author:孔雀の森
いろいろな出会いを
大切に♪

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