2013-02 : 夢の国・亞洲文化宮

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しあわせ中国 盛世2013年

20130227

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原 作:陳冠中『盛世 中國,2013年』2009年刊行
監 修:辻康吾
訳 者:舘野雅子 望月暢子
刊行年:2013年10月
出版社:新潮社

<あらすじ>
舞台は近未来(2009年からみた2013年)の中国。作家の陳は、久しぶりに会った友人の方草地が「1か月がなくなった」と言うのを不思議な気持ちで聞いた。次に会った韋希紅(通称“小希”)は、陳がかつて心を寄せていた女性で、今は母親と食堂を切り盛りしている。一人息子の韋国は大学院生で共産主義青年団に所属。小希との間には深い溝があるようだ。大多数の国民が幸福感に満たされている中、彼女の心には憤懣があふれ、ネット上で過激な発言を繰り返していた。陳は彼女に心を動かされ、共に人生を歩みたいと思うようになる。

<感想など>
「盛世」のスタートは2008年ごろ。その直前の一か月は、国内が荒れ、厳罰が多く適用され、ひどい状況だったのに、「盛世」が始まった途端、みなその時のことをすっかり忘れてしまい、すっかり幸福感に浸りきっている。そういえば六四天安門事件を語るものもいなくなり、下の世代は事件さえ知らないありさまだ…。

といっても、本書はあくまで虚構であると作者も言うように、これをそのまま中国の実態として鵜呑みにしてはならないだろう。しかし発禁処分を受けたという帯の文面には、秘匿案件が隠されている感があり、好奇心をそそられる。また、実際の事件や実在人物が数多く描かれているので、どうしてもドキュメンタリーのように映る。「謎めいた国」の先入観や、「近未来」2013年の設定、昨今の日中関係などから、出来事の一つ一つがリアルに響いてきた。ほんとうに「1か月なくなった」と信じてしまいそうだ。

主人公の「陳」は著者を連想させるが、方草地や小希をはじめ、韋国、ギター弾きの張逗、党中央政治局委員の何東生らの語りにも、著者の意思が入っていると思う。小説上の「陳」は大多数の国民同様幸福感を抱いているが、体制に反発感を持つごく一部の人々と接する中で、次第に疑問を持つようになる。それでも最後まで彼は、幸福感と危機感の間を行き来して、自分の立ち位置を結論付けるまでには到らない。そんな曖昧な終わり方からは続編が連想されるが、続編というのはつまり、今現在からみた近未来。作者の意図をますます知りたくなる。

人の感性や考え方が、いとも簡単に左右されてしまう恐怖。自分もまた「盛世」の幸福感に浸りきっている一人では?と思うと、よけいに背筋が寒くなってきた。「せいせい」と「へいせい」って、何だか語感が似ているようで…。

これを読んでいる最中、たまたま神保町で原書を見つけて買ってしまった。
オックスフォード大学出版社による繁体字版。

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青春ララ隊

20130218

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2011年/台湾/1時間44分(江の島アジア映画祭2013で鑑賞)
監 督  楊力州(ヤン・リージョウ)
原 題  青春啦啦隊
英 題  Young at Heart: Grandma Cheerleaders
出 演  青春啦啦隊

<内容・感想など>
舞台は台湾の高雄。平均年齢70歳以上の男女によるチア・リーダーチームを追ったドキュメンタリー映画である。彼らが所属するのは「長青学苑」と呼ばれる高齢者向けの生涯学習施設。2009年高雄で開催されるワールド・ゲームズに向け、先生を中心に、厳しい練習を積み重ねる。その過程にはさまざまな問題が立ちはだかっているが、チームは着実に力をつけていく。最近、高齢者主演の作品に目が向くのは、自分がその年に近づきつつあるからだろうか。

とにかくみんな元気溌剌!!
最高齢だという88歳の女性は、しなやかな動きとピンと伸びた背筋、機転の利く話し方から、20歳は若く見えた。また、参加したばかりの86歳の男性は、最初のうち慣れない様子だったが、時間の経過にともない、おちゃめな面が出てきて、終盤ではすっかり中心人物になっていた。彼の飄々とした物腰から、ふと、まる子のおじいちゃんが思い浮かんだ。一人一人を紹介していたらきりがないほど、各人個性豊かである。

最初「ドキュメンタリーだから素人の朴訥とした語り口、長回しの場面が多いかも」と思ったら予想外。カメラの前の彼らは立派な役者である。明るい国民的気質に加え、チアをやりたいという人の多くは、勝気だったり、身体を動かすのが得意だったりと、役者の条件を備えているのだろう。映画を撮るために精鋭を集めてきたのではないか(つまりオーディションをしたのではないか)とも思える、バリバリ体育会系の練習風景である。女性は太めの人が多いが、スカートからのぞく足はいずれも筋肉質。男性の上半身もその年齢にしてはムキムキだ。(笑)そうそう、ボディビルダーとの共演は最高に楽しい場面だった!

そして何といっても、先生の存在は絶大である。みんなの体調を考慮しながら、的確な指示を出してまとめあげる。チアの指導だけでなく、個人的な悩みをきいたり、家族と話をしたりと、生活にも細かく気を配る。そんなリーダーとしての彼女の力量を証明する物語でもあった。

ところで彼らが目指す「ワールド・ゲームズ」とはどんなイベントなのだろう。2009年高雄で行われた第8回大会には、202の国と地域から約5000人が参加したとのことで、世界的規模の競技会のようだ。よく知られている競技に加え、エキジビション的な性格の種目が多く見受けられた。新しい趣向なのだろう。青春啦啦隊が応援していたのは「合球(Korfball)」というバスケットボールに似た球技。1チームの構成員は男4人女4人で、それぞれ黄色いゴールへのシュートで得点する。周りからは「バスケに似ているけどなんだろ?」という声がきこえてきた。

映画祭だけでなく一般公開を強く希望。なお、エンディングは最後までききましょう、と、付け加えておきます。


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<追記>
会場では台湾ならではのご飯が販売されており、肉まん、ソーセージをいただいた。ソーセージの甘みが台湾独特でちょっと懐かしかった。映画の合間には、地元サークルやジュニアダンスチーム、横浜中華学院の生徒さんによる踊り、さらに菅高校の生徒さんによる台湾の学校との交流報告なども楽しめた。手作り感が心地いいイベントだった。映画祭の存在を知ったのが当日だったため、あたふたとした一日だったが、来年からはもっと余裕をもって参加したい。

この日はついでに鎌倉まで足を延ばした。時間の関係で大仏様と長谷寺だけを駆け足で見て帰路に。鎌倉は近隣学校の遠足エリアでもあるというのに、なんと10年ぶりだった。もう少し暖かくなったらまた行こう!!

奪命金

20130211

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2011年/香港・中国/1時間46分(劇場で鑑賞)
原 題  奪命金
英 題  Life Without Principle
監 督  杜琪峰(ジョニー・トー)
出 演  劉青雲(ラウ・チンワン) 任賢齊(リッチー・レン)
     何韻詩(デニス・ホー) 胡杏兒(マイオリー・ウー)
     蘆海鵬(ロー・ホイバン)蘇杏璇(ソー・ハンシェン)

<あらすじ>
警部補のチョン(任賢齊)は、妻コニー(胡杏兒)がマンション購入の件を相談しても、いつも仕事優先で話は先延ばし。彼女は夫に相談せず購入資金を工面しようとする。
銀行員のテレサ(何韻詩)は営業成績を伸ばそうと、投資経験の少ない中年女性(蘇杏璇)にリスクの高い金融商品を売るが、その直後ギリシャの債務危機が起こる。
ヤクザのパウ(劉青雲)は仲間の保釈金を工面するため奔走、投資会社社長の旧友、ロン(姜皓文:パトリック・タン)を頼る。ところが株価暴落に正気を失ったロンは口座の不正操作に失敗、大陸マフィア(尹子維:テレンス・イン)に大損させてしまう。パウは高利貸しのユン(蘆海鵬)から強奪しようと彼の車中に潜伏。ところが直前ユンが何者かに殺される。パウはユンの金の入ったバッグを盗み出す。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含みます)
すべてはカネだ~!一攫千金!!と息巻く人々の姿が、時には喜劇的にも描かれ、終始釘づけだった。そのカネへの執着心も人それぞれ。さあ、自分は誰に近いだろうと考えてみると、やはりあの慣れないおばちゃんかな(笑)契約を焦るテレサに対する一挙一動が、ちょっと儲けてみたい人々の心を代表しているように映る。

しばらく前、同じく金融市場を扱った『盗聴犯~死のインサイダー取引~』で、限りない欲望の果てに身震いした経験から、本作品でも相当覚悟していた。けれども、今回は人々の醜さを映しながらも笑いどころがあったり、それぞれの人生が描かれていたりして、多少救われた思いだった。

前後する時系列の配置も、興味を掻き立てる一因だろう。時間が遡ることでパズルピースの一つ一つがカチッとはまるところに快感を覚えた。中盤での一番の謎は、貸金業者ユンが殺された背景だ。この事件を巡って登場人物の動きがだんだん詳細になり、ユンの人物像が浮かび上がる。最初テレサのもとを訪れた調子よさそうなおっさんが、ドラマ全体の鍵を握っていたわけだ。現場に居合わせたパウとテレサは、立場は違うし、会う機会もないが、瞬間考えたことは同じ。元々自分自身の富にはほとんど無関心だった二人が、多額の現ナマを前に変貌する。特に、忠義心の塊であるパウが、傷ついた友人を放って時間稼ぎをした結末に、胸がざわついた。そして、最初と最後が重なった。

劉青雲、任賢齊、何韻詩の3人は主演でありながら、言葉を交わす場面はない。こんな展開も珍しい。

パンフによれば、大陸での上映作とはラストが違うとのこと。でもそんな風につけ足したものより、今回の鑑賞作の方が断然いいと思った。パウとテレサに対し、もう地球の果てでも、どこへでも、飛んでけ~と、秘かに叫んだ私だった。あ、でも犯罪に加担するつもりは全くありません。念のため(笑)

<追記>
・顔に似合わず(スミマセン)シャキッとしたスタイルの劉青雲を、初めてステキだと思った。特に赤のハーフパンツが似合ってるなあ、と。

・ガス漏れ場面で、隣席のおニイさんが咳き込んでいた。任賢齊になりきっていたのかな。

・昨年末オープンしたばかりの新宿シネマカリテに初めて行った。座席はフワフワで前にも余裕がある。隠れ家的なこのミニシアターに、また行きたい。

プロフィール

孔雀の森

Author:孔雀の森
いろいろな出会いを
大切に♪

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