2012-08 : 夢の国・亞洲文化宮

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盗聴犯~死のインサイダー取引~

20120827



2009年/香港/1時間40分(劇場で鑑賞)
原 題  竊聽風雲
英 題  Overheard
監 督  麥兆輝(アラン・マック)  莊文強(フェリックス・チョン)
出 演  劉青雲(ラウ・チンワン) 古天樂(ルイス・クー)
     呉彦祖(ダニエル・ウー) 張静初(チャン・ジンチュー)
     方中信(アレックス・フォン)王敏德(マイケル・ウォン)

<あらすじ>
ジョン(劉青雲)、ヨン(古天樂)、マックス(呉彦祖)は港警察情報課の刑事。株の不正取引の疑いがある企業とその社長の監視を続けている。ある日株価高騰の情報を得たヨンとマックスは、誘惑に負け株取引を始めてしまう。末期癌のヨンには重病の息子がおり、家族に残す金が必要だった。マックスは婚約相手が富豪であることに劣等感を持っていた。最初は止めに入ったジョンも、上司グォン(方中信)の妻マンディ(張静初)と不倫関係を続ける中、すべてを隠し通す決心をする。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含みます)
今回の3人が『盗聴犯~狙われたブローカー』の3人とは別人とわかっているのに、なぜか比較してしまった。呉彦祖の役柄は全く違う。古天樂の役柄は厚い情と不器用さが共通点。そして劉青雲の役柄はかなりの部分、重なって見えた。何を考えているのかわからない作為の人、という点だ。ブローカーの彼は出所した後に生きる道を見出している。今回の彼は大物逮捕に大きく貢献する。裁かれるのだろうが今後も生きていくのだ。

ジョンの一番の謎は、上司(しかも親友?)の妻と逢引きを重ねながら平然としているところだ。元恋人同士の再燃らしいが、なんとも理解に苦しむ行動である。マンディの「自宅は夫からもらった」という台詞からは、愛情よりも物を優先したようにも受け取れる。とすれば、両者の一連の行動は計画的離婚に向けての道のりとも思える。一見蛇足のような展開だが、2人の人間性を暗示する意味で重要な部分と言えるかもしれない。

そんなジョンに比べると、ヨンはわかりやすい。家庭を大事にする彼は、勤務が夜に集中することに不満を抱いている。犯罪に手を染めたのも家族のためだ。切羽詰まった面持ちに、こちらの感情も揺さぶられる。

最も冷静に見えるマックスの意外な激情は興味深かった。ただ一つわからなかったのは、彼の「その後」である。車に乗っているのを見つかったところまではわかるのだが、あの後どうなったのだろう。見落としてしまったのだろうか。このモヤモヤをなんとかしたい。

主眼は職務を逸脱した警察官の転落に置かれているが、一方で生活者としての男たちの描写にも興味をそそられる。ヨンは良き家庭人でありたいとする思いに溢れている。これから家庭を築こうというマックスは「逆玉の輿」の立場が苦しそうで、結婚生活に不安を抱いているのがわかる。ジョンの場合は、指輪と花束を持っていくシーンを見ても、彼女に対して本気なのかどうかよくわからない。そしてマンディの夫グォンには、中間管理職の悲哀が漂っている。上司と部下の間でサンドイッチ状態、妻は部下と不倫中…。なんて悲惨なのだろう。彼はちっとも悪くないのに。

潜入調査の緊迫感あふれる場面や、株価高騰にわきかえる人々の姿に目を奪われながら、人間の奥底に潜む魔物にドキリとさせられる。何かのはずみでタガが外れてしまうこともあるのだ、なんて思うと、ちょっと震えがきた。


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川の流れに草は青々

20120826



1982年/台湾/1時間36分(レンタルVIDEO)
監 督  侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
原 題  在那河畔青草青
英 題  The Green, Green Grass Of House
出 演  鍾鎮濤(ケニー・ビー)  江 玲(ジャン・リン)
     陳美鳳(チェン・メイフォン) 古 軍(グー・ジュン)
     梅 芳(メイ・ファン) 崔福生(ツイ・フーション)

<あらすじ>
大年(鍾鎮濤)は、夫の転勤で退職した姉に代わり、村の小学校に赴任して来た。彼の下宿先は同僚の女性教師素雲(江玲)の実家が営む映画館の階上。二人は徐々に距離を縮めていく。大年が担任するクラスの児童はみんな元気いっぱい。そんな中、美しい少女が台北から転校して来る。彼女は、腕白トリオの一人文欽の従妹で、佩瑜という。文欽は彼女になにかと世話をやく。ある日河辺で授業をしているとき、クラスの周の父(崔福生)が電気で魚を捕っているところに遭遇。大年は父親に注意するが、翌日周は妹と共に行方不明になる。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含みます)
またまた懐かしい映像である。
まず、あの若い二人の先生の姿だ。小学校時代の美男美女カップル先生によく似ているのである。男の先生は大年のようにひょろりと背が高く、女の先生はややきつい顔立ちで厚化粧だったと記憶している。鈍感な私でさえ気づくくらいだから、きっと公認だったのだろう。そんな二人をひやかしたりしない周りの優しさも、作品と共通していると思った。

もう一つ懐かしいのはあの検便風景。今と比べると技術を要したものだ。あのように失敗し、怒られながら、子どもは成長するのだ。こんなふうに昔を思い出しては「懐かしい」を連発する自分は、もう年なんだなと実感…(笑)

今回借りた3本のビデオの中では一番楽しめた。
青い山脈とズッコケ三人組と一連の学園ものをミックスさせたような味わいで、笑いの要素も満載だ。お手々つなぎ合って仲直り!なんてやっぱり作り話だと思ってしまうが、こういうストレートな感覚を最近忘れているかも。暗い話題が多い昨今の教育現場と比較しても仕方がないだろうが、こういう開放的な明るさがあれば…と思わずにはいられない。ある意味理想的な環境である。

いたずらした子供を思いっきりひっぱたく親や、保護者を臆面もなく叱ってしまう先生。転校してきたマドンナに心浮き立つ子供たちと、不安げなマドンナ。学校に闖入して来る元恋人と、その後処理を親に頼む先生。先生の乗った列車を先回りして追いかけていく子供たち。彼らの足の速いこと、速いこと!まるで毎日が運動会のようだ。あの渦中に飛び込んだら長生きできるだろうか。(笑)


恋恋風塵

20120824

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1987年/台湾/1時間50分(レンタルVIDEO)
監 督  侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
原 題  戀戀風塵
英 題  Dust In The Wind
出 演  王晶文(ワン・ジンウェン) 辛樹芬(シン・シューフェン)
     李天祿(リー・ティエンルー) 梅 芳(メイ・ファン)
     林 陽(リン・ヤン) 陳淑芳(チェン・シューファン)

<あらすじ>
鉱山の村で育ったワン(王晶文)は、中学卒業と同時に台北に出て、仕事の傍ら夜学に通い始める。彼には進学の実力があったが、家族が多い上、炭鉱勤務の父親(林陽)が怪我をして収入が減ったため、家計を支える必要があったのだ。後に幼なじみのホン(辛樹芬)も台北に出てきて洋裁店に勤める。二人は互いに助け合いながら都会での生活をおくる。やがてワンに兵役の通知が来た。彼のもとには毎日のようにホンから手紙が届くが、しばらくたつと途絶えてしまう。彼女は郵便屋と結婚してしまったのだ。

<感想など>
ドラマの背景について説明がほとんどなく、後で調べたところ、時代は1960年代末から70年代とのこと。舞台は九份や十分、平渓線沿線、台北など。後年の観光地化など、当時の人々は予想もしなかっただろう。

ストーリー自体は普遍だと思う。慣れない環境で助け合ってきた二人だが、離れ離れになると、淋しさに耐えかねた方が別の相手と結婚してしまう… よくある話だ。でも見飽きた感じはない。健気な男の子とはかなげな女の子の組み合わせと、別れる運命にあるのではないかという予感が、なぜか昔懐かしい。

運命にあらがって夢をつかもうとする話が多い中、このドラマは日々の生活をなんとかしのぐ若者の姿を淡々と描写している。何のために彼はこんなに耐えているのか。それは家族の他に、いつもそばにいる女の子のためだ。口に出しては言わないが、彼にとって将来の相手は彼女ただ一人。周囲もみんなそう考えている。足手まといの女の子を日々守りながら、彼は家庭を築く日を夢見て頑張っているのである。

「運命」で思い出したのが祖父の「学問には縁のない家系」という言葉だ。夜学で勉強して進学の夢をかなえようとするワンだが、結局断念して兵役に就く。「そういう家系なのだ」という祖父の諦観が、彼の運命の受け入れに影響しているようにも見える。

また、体の弱い孫(ワン)を、医者よりも祈祷師に任せようとする祖父の姿勢には、最初、理解も賛成もできなかった。しかし最後、苦難を経て帰郷したワンにとって、祖父の、運命に身を任せるような姿勢は救いになっているように見えた。台風で作物が被害に遭うなど、人間の力ではどうにもならない出来事を、祖父は淡々と話す。ワンはそれを頷きながら聞く。労働争議で忙しい父とはまた違う生き方だと思う。

失恋してもなお彼女お手製のシャツを着ているワンが気になったが、新たな人生を歩んでほしいと願わずにはいられない最後だった。彼は今、どうしているだろう。


童年往時-時の流れ-

20120821



1985年/台湾/2時間18分(レンタルVIDEO)
監 督  侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
原 題  童年往時
英 題  The Time to Live and the Time to Die
出 演  游安順(ユー・アンシュン) 唐如韞(タン・ルーユン)
     田 豊(ティエン・フォン) 梅 芳(メイ・ファン)
     辛樹芬(シン・シューフェン)

<あらすじ>
台湾の鳳山。小学生の阿孝(アハ)は、祖母(唐如韞)、父(田豊)、母(梅芳)、姉、兄、二人の弟と共に暮らしている。生活を支える父は病弱で、阿孝が鳳山中学に合格した後に死去。高校生になってからの阿孝(游安順)は喧嘩や遊びに明け暮れていた。そんな中癌を患っていた母が亡くなり、認知症の祖母を四人の兄弟が看ることになる。阿孝には憧れの女性素梅(辛樹芬)がいる。彼女に交際を申し込むと大学合格が条件であると言われ、猛烈に勉強するが失敗してしまう。

<感想など>
侯孝賢監督の自伝的作品。主人公が過去を振り返る形で進行。その語りと緩やかな音楽が心地よい。

観始めた途端その世界に引き込まれたのは、あのおばあちゃんが、自分の父方の祖母によく似ているからだろう。そして、女の子のヘアスタイル。横分けの髪を後ろで切りそろえ耳を出している姉に、子どもの自分が重なった。あの簡素な風呂場と、土間の台所、畳をみんなで拭く光景にも、時代や環境は全く違うのに、既視感をおぼえた。淡々とした展開と、風景の一つ一つが胸にしみる。

半袖半ズボンから突き出た、男の子たちの細長い手足。片時もじっとしていない姿が懐かしい。昔男の子の間ではコマ回しが流行って、私も弟とやってみたことがある。たまにうまく回ると嬉しかったなあ。みんな浅黒く、似たような服を着ているので遠目には見分けがつかない。ただその中で一人、主人公の阿孝だけはわかる。小学生から高校生まで時間がとび、唐突に成長した阿孝が登場しても、動きが同じだからか、すぐに分かった。顔は全く似ていないのに。相変わらずじっとしていられない男の子なのだ。

暗い話である。元々広東省に住んでいた一家は、国民党に従って台湾に移り住んだ外省人。祖母は故郷に帰りたくて、度々徘徊しては連れ戻される。父は喀血を繰り返す。阿孝を含め子どもは5人いるが、母は1人を乳児期に亡くしている。誕生当時栄養不足で今も小柄な兄のことを、母は長女を相手に悔いるように話す。阿孝の中学合格は一家にとって朗報だが、女だからと合格した中学に行かせてもらえなかった姉は悔しくてならない。歴史に翻弄され続けたことがさりげなく語られている。そんな中、肉親の死は非常につらい。

主人公は苦労の多い10代だったはずだ。でも画面に映る風景はどこかのどかで、自然描写は美しい。例えば、祖母は奇異に映る言動を繰り返す一方で、3つの柘榴を使ったお手玉は抜群にうまい。阿孝は躍起になるが、祖母には到底及ばない。若かりし頃のおばあちゃんが目に浮かぶようだ。祖母の最期については、シーンは控えめで、ナレーションで詳細が語られる。気遣いの感じられる演出だった。

本作を含め侯孝賢作品を3本借りた。久々のVIDEOデッキ操作にちょっと戸惑った。(笑)遠方のショップで宅配手続きをとったので、返却期限のプレッシャーがのしかかっている。急がなければ!!

オロ

20120818



2012年/日本/1時間48分(劇場で鑑賞)
監 督  岩佐寿弥
出 演  オロ  ワンチェン  ラモ・ツォ
     ダドゥン  ラモ・ドルマ  モゥモ・チェンガ
     ツエワン  岩佐寿弥

<あらすじ>
オロは6歳の時チベットから亡命し、今はインドのダラムサラで学ぶ。寄宿舎は、チベット亡命政府管理下の「チベットこども村」にある。保護者的立場にいるのは初対面だった叔父で、彼の生活や成績には厳しい。同級生のダドゥン、ラモ・ドルマ姉妹は彼のよき遊び仲間だ。彼女たちの父親は映画監督で、今は刑務所にいる。家計はパンを売る母親が支えている。
冬休みには監督、監督の友人ツエワンと共にネパールのポカラへ旅行した。10年前監督が撮った映画に出演したモゥモ・チェンガと、息子夫婦、3人の孫が彼らを温かく迎えてくれた。オロは辛い体験を話し始める。

<感想など>
出演者たちの制作側に対する信頼がうかがえる作品だった。本来NGとしてカットされるような、オロの読み間違うシーン、何度も階段を上り下りする様子など、生の制作現場も多く見せている。このように展開に変化を持たせているからか、最後まで集中が途切れなかった。

話の筋だけ追えば「一少年の過酷な体験記」と言えよう。しかしオロ少年の屈託のない笑顔には、こちらも自然に頬が緩む。オロの友達やその母親の生活も、苦しいに違いないが、彼女たちはポジティブで力強い。結果的には観る者が励まされ、彼らのことがどんどん好きになっていく。これは監督の気持ちでもあるのだろう。

その監督が、後半オロとともに旅に出る。白髪で温和なその人は、風景や人々にすっかりとけこんで、映画を撮っている人には見えないのである。バスの中で寄り添う二人はまるでおじいちゃんと孫のようだ。ネパールで出会う人々も、彼らと家族同然に接している。三姉妹がオロに辛い体験を語らせるところは、やや演出気味だったが、これも彼が今後生きていくための試練である思えば、肯定的にとらえることができる。互いの出会いが、未来に向けプラスに働いているように感じる展開だった。

いつもスタッフの動きを細かく観察しているのだろう。旅の途中、オロがカメラを覗き込んで監督になりきってはしゃぐ場面がある。また、棒を操ってカンフーの動作をまねる。照れながらの歌はなかなかうまい。彼の中に無限の将来が見えてくる。彼同様、どの子どもにも等しく未来は開けていなければならないのだと強く思う。

年長者である監督、モゥモ・チェンガに、オロは濃やかな気遣いを見せる。こんなふうに、彼は子どもらしい笑顔の奥に、時折大人の一面が顔をのぞかせる。彼がこれまで封印してきた幼かった日々を思い、胸が痛んだ。

ところで、オロ以上に印象に残るのが、映画監督を待ち続ける女性だった。夫の無実を主張する彼女の眼差しは、相手の胸を一突きするほどの鋭さだ。二人の娘が母を見る目は尊敬にあふれている。家族がそろい、彼女の眼差しが柔らかくなるのはいつになるのだろう。

子どもが真に子どもらしく生きられる社会。
子ども村の子どもたちが家族と共に暮らせること。
このような希望が一日も早く実現しますように。

極北ラプソディ

20120815



著 者:海堂尊
出版社:朝日新聞出版
刊行年:2011年12月

<あらすじ>
極北市民病院の外科医、今中良夫は、院長世良雅志の片腕的存在である。世良は赤字建て直しの救世主として華々しく赴任したが、徐々に悪評が増える。あるとき、診療費を滞納した患者に対し診察を拒否した後、彼が死亡するという事態に直面、マスコミの攻撃にさらされる。そんな中、今中は雪見市の極北救命救急センターへの出向を命じられる。

極北救命救急センターには、桃倉センター長以下副センター長の速水、医師の伊達、看護師の花房、五條らが揃う。ドクターヘリパイロットの大月や、CS(コミュニケーション・スペシャリスト)の後藤も救急搬送に欠かせない人材である。今中は多忙の中、やりがいを感じていた。

極北市民病院に戻った今中は、世良と神威島へのドクタージェット・トライアルに参加。この地で長年医療に携わる久世と旧交を温めた世良は、地域医療向上への道を歩む決心をする。

<感想など>
『極北クレイマー』の続編にあたる物語。
今中の目に映る世良、速水らの姿を通して、地域医療の在り方が語られ、興味深い。
最初、世良の独断に今中が躊躇しており、こちらは世良の姿勢が掴みかねた。彼の言うことは正しい。けれど一連の措置は性急に映る。健全な医療体制を目指すためとはいえ、敵を増やすことが果たして成功につながるのかどうか。自分の過去ログを読み返すと、『ブラックペアン1988』『ブレイズメス1990』での世良とは、別人のようだ。彼はどういういきさつを経て、こういう気質になったのだろう。

一方の速水は極北救命救急センターで「将軍」と呼ばれる存在である。願いかなってドクターヘリを導入しても自身はほとんど搭乗しない。彼も世良同様傲慢な態度で周囲に接し、好印象とは言えない。しかしその言動は的確で、医療に多大な貢献をしているのはよくわかる。規則違反覚悟、しかも他社の人間のクビを承知で人命救助を独断するは正気の沙汰ではないが、それも神業的な手技あってのこと。ではその技術はどのように磨かれ、自信はどのように膨らんでいったのだろう。『ジェネラルルージュの凱旋』以前の彼をもっと知りたくなった。(ひょっとして読んでも忘れてしまったかも…)

再建問題が山積している極北市と、救命救急センターをバックアップする体制の整った雪見市。今中の目を通した両市の比較から、トップに立つ人材、地域医療の在り方を考えさせられる。終盤で彼らが口にする地方公共団体の境界、枠組みを越えた協力体制は、壮大なスケールに映るが、案外早期実現可能な策にも思える。彼らの言葉は力強く響いてくる。

ところで、速水、花房両人の登場は楽しみの一つだった。けれど、依然として並行線であることにヤキモキした。後で思いがけない再燃(自分にとってはどんでん返し)が待っていたが、何だかきれいに終わりすぎた感がぬぐえない。花房が話す経緯はいかにも感傷的。速水には患者しか見えていないというが、彼の側からすれば、彼女の奥に別の男が見え隠れするから身を引いた、ということではないだろうか。失恋したのは速水ではないのか。あっちがだめだからこっち、なんてどうよ?以上、あくまで速水の味方である私の推論。(笑)長い間に起こった複雑な事情を知らないからこういう感想になってしまうのかも。

なお、記者会見の画像をぱぱっと配信した西野君は気になる存在だ。彼と世良との間には渡海も一枚かんでいるはずで、是非その辺の人間関係も知りたいところ。そのほか、世良が世捨て人同然で久世の元を訪れるまでのいきさつにも興味津々。

諸事情は今後詳細に語られるものと信じて、楽しみに待つことにしよう。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアン・モンキー

20120812

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1993年/香港・台湾/1時間30分(レンタルDVD)
監 督  袁和平(ユエン・ウーピン)
原 題  少年黃飛鴻之鐵馬騮
英 題  Iron Monkey
出 演  甄子丹(ドニー・イェン)  于榮光(ユー・ロングァン)
     王静瑩(ジーン・ウォン) 曾思敏(ツァン・カーマン)
     任世官(ヤン・サイクーン) 袁信義(ユエン・シュンイー)
     李 輝(リー・ファイ) 

<あらすじ>
19世紀、清代の杭州。「鉄猿」(于榮光)と呼ばれる盗賊が指名手配されていた。彼は金持ちから金品を奪っては、民衆に分け与えているのだ。この土地に到着したばかりのウォン・ケイイン(甄子丹)、フェイフォン(曾思敏)父子は一斉取締りに遭い、フェイフォンは獄中に入れられてしまう。ケイインは息子を助けるため鉄猿と闘うが、鉄猿を英雄視する民衆は彼に冷たい。やがて、鉄猿の正体が百草堂の医師ヤンであること、住民が役人に搾取されていることを知ると、ケイインはヤンとともに立ち上がる。二人は、監督官ハンホン(任世官)の必殺技「金剛手」にさんざん苦しめられる。

<感想など>
中身の濃~い1時間半だった。久々に血沸き肉躍り、鑑賞後はすっきり爽やかな気分!勧善懲悪劇の中で、各登場人物のキャラクターがしっかりと描かれ、アクションシーンも盛りだくさん。サービスという点では今まで観た中のベストテン入りかな。そうだ、今度はそういう項目も考えてみよう!

今回の一押しは、于榮光演じる鉄猿君。于榮光といえば、私が見た範囲では悪役が多いのだが、このきりりとした正義の味方が一番似合っている気がする。何でもっと早く観なかったのだろう。アクションのキレも素晴らしく、容貌もステキ(なんて今まで思わなかったが)。かなり自分好み!(笑)

ケイイン、フェイフォン父子は本当の親子に見えた。顔つきだけでなく、正義感の強さ、茶目っ気、情の厚さに、共通するものを感じる。このコンビで続編もお願いしたいものだと思って調べてみると、な~んと、息子を演じた曾思敏は女の子というではないか!武術大会で腕を磨き、後に香港警察に所属したのだとか。あの子が世のために働いていると思うと、応援したくなる。

さて本筋に戻ろう。
はじめのうちヤンとシュウラン(王静瑩)の関係がよくわからなかった。師弟のようでもあり、兄妹のようでもある。娼婦だった彼女をヤンが身請けした過去シーンを見てからは、二人のさりげない表情が気になりだした。こういう控えめな愛情表現には好感が持てた。

本作の見どころは何といってもアクションシーン。強い男が二人がかりで悪者一人に挑む場面は、もちろん対決にほかならないのだが、三人の息の合った連係プレーに見えるのだ。最後、火の海に林立する柱での決選では、それぞれが幾度も落ちそうになる中、ぎりぎりのところでバランスを取りながらの攻防が繰り広げられる。

スクリーンで観たらもっともっと楽しめただろう。どこかで再上映してくれないかしら~ 


舟を編む

20120810

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 著 者: 三浦しをん
 出版社: 光文社
 刊 行: 2011年9月

<あらすじ>
玄武書房辞書編集部の馬締(まじめ)光也は、辞書「大渡海」編纂の中心的人物。10余年の間に、日本語学者の松本、古参の荒木、口が達者な西岡、整理上手な岸辺など、個性豊かな面々と出会い、共に仕事を進めてきた。下宿早雲荘のタケおばあちゃんと、彼女の孫で板前の香具矢もまた、馬締を支え続けている。

<感想など>
『舟を編む』ときいて、まず思い浮かんだのは、昔読んだ絵本『おばあさんのひこうき』だ。編み物上手のおばあさんが、飛行機を編んでいくお話である。『舟を編む』はもちろん、舟そのものを編むわけではない。ここでの「編む」は広辞苑での語義②の「諸書の文を集めて書物を作る。編集する」という意味である。でも、あのおばさんの編み物と似た作業だと思った。編み物が、編み目を一つでも間違えれば完全な作品に仕上がらないのと同様、辞書作りも、編集段階で言葉を一つ落とすことが致命的なミスになる。「ちしお(血潮・血汐)」の入れ忘れがきっかけで、異例の合宿になった場面では、ほとんど出来上がった作品を全部ほどいて編み直しているように見えた。おばあさんも、辞書編集部も、未知の世界に羽ばたく(漕ぎ出す)乗り物を作っているんだなあと思うとワクワクしてきた。

辞書編纂の過程が細かく描かれて実に興味深い。
まず、言葉に対し鋭敏で、執着心のある人々に感心した。松本先生はどんなときも言葉をメモする姿勢を保ち、研究が生活の一部、いや大部分を占めている。馬締もまた研究熱心で、一つ一つの言葉にこだわりを持ち、恐ろしいほどの集中力で取り組んでいる。そんな彼を辞書編集者に選んだのが、定年間近だった荒木である。人を見る目もまた大切ということだ。彼らの問答を読むうちに、自分が普段使っている言葉が気になりだした。

営業で腕を鳴らす西岡や、製紙会社の宮本など、編纂以外で活躍する人々も重要であることを知った。馬締の才能に対し劣等感を抱いていた西岡が、自分のコミュニケーション能力をフルに発揮していく様子や、紙に執着心を持つ宮本が成功を喜ぶ姿からは、仕事のやりがいについて考えさせられる。彼らの生き生きとした仕事ぶりが目に浮かぶようだ。

ところで、本書に描かれる「ぬめり感」を確かめたいと思い、手元の広辞苑をぱらぱらとめくってみた。なるほど。指が乾燥していても1ページ1ページついてきてくれる。中日辞典(小学館)は広辞苑よりも薄い紙質だがこちらもスムーズにめくることができる。これがぬめり感というのね。最近は電子辞書に頼りがちだが、面倒がらずに紙の辞典もひいてみよう。思わぬ発見があるかもしれない。

これを書いている途中で、松田龍平、宮﨑あおい主演で映画化されるという記事を読んだ。それからというもの、読み返したときに馬締クン、香具矢ちゃんの顔が二人に重なって離れない。ぼさぼさ頭を掻いたり、テンポのずれた発言をしたりする松田龍平。真摯に板前修業をする宮﨑あおい。いい配役だなあと思う。ほかにどんな人がキャスティングされているのかが気になるところ。

『舟を編む』と『大渡海』の装丁が同じデザインというのもおもしろい。
波間に浮かぶ銀の舟は小さいけれど、人々の叡智が積み込まれているのだなと思う。
一度『大渡海』を最初から読んでみたいものだ。

インドシナ

20120808

Indochine.jpg

1992年/フランス/2時間39分(レンタルDVD)
監 督  レジス・ヴァルニエ
原 題  Indochine
出 演  カトリーヌ・ドヌーヴ  リン・ダン・ファン
     ヴァンサン・ペレーズ  アンリ・マルトー
     ジャン・イアンヌ  エリック・グエン
     ジャン=バプティスト・フィン

<あらすじ>
1930年代のフランス領インドシナ。ゴム園を経営するエティエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、父(アンリ・マルトー)、養女のカミーユ(リン・ダン・ファン)と暮らしていた。アンナン皇女のカミーユは5歳の時、両親が事故死してエティエンヌに引き取られたのだった。エティエンヌはフランス人将校、ジャン=バチスト(ヴァンサン・ペレーズ)と恋人関係にあるが、カミーユも彼に熱烈に恋をしていた。やがてジャン=バチストは離島に左遷され、カミーユはフランス留学から帰ってきた富裕層の息子タン(エリック・グエン)と結婚させられる。しかし自由を提唱するタンの手助けで、カミーユはジャン=バチストを追う旅に出る。途中、奴隷労働から逃げ出した家族と共に、ようやく離島に到着するが、親しくなった母子が不当に殺害されたのを知り怒りが爆発、フランス軍人を銃殺してしまう。

<感想など>
60歳を超えた主人公エティエンヌが、義理の孫を相手に自身の半生を語る形で進行する。だが途中、カミーユが故郷を離れ発砲事件を起こし、ジャン=バチストと共に追われる身になると、主役が一時カミーユに移ったような展開となる。淡々とした主人公のナレーション部分と、その間に挿入された逃走劇は、物語全体に緩急をつけているようにも感じられた。

壮大な歴史ドラマであると同時に、フランス人エティエンヌの人間性を様々な角度から映し出していて興味深い。彼女は、経営者、娘、母、恋人と、色々な顔を持つ女性だが、時に娘の前では父の立場にもなる。二人で踊る場面などそのいい例だ。彼女を立派なレディにするためには、父の役割が重要だと考えているのだろうか。カミーユをリードするときのエティエンヌは、威風堂々とした父親に見える。

経営者としてのエティエンヌにも男性の風格が漂う。労働者を統率し、時には制裁を加え、一緒に汗も流す。元々カミーユの親の領地だったということで、後継者へのバトンタッチが念頭にあるのだろうか。彼女は支配側の人間であるが、父同様その土地に暮らす人々と折り合って生きようとしている。人々に隷属を命じる軍人とは性質が異なると思う。

立場と情のはざまに揺れ、最終的にカミーユと決別せざるを得なかったエティエンヌ。恋人との関係よりも、父親、カミーユ、男友達の軍人ギイ(ジャン・イアンヌ)、カミーユの息子(ジャン=バプティスト・フィン)との関係の方が印象深いのは、彼らの方が、彼女の人生の選択に色濃い影響を与えているように見えるからだろうか。

支配する側のエティエンヌが、実は見えない鎖に縛られて自由のない人生を送ってきたのに対し、カミーユは自由を求めて羽ばたいていく。演じるリン・ダン・ファンは、あどけない顔からは想像もつかない大胆さで、カトリーヌ・ドヌーヴ相手に勝負を挑んでいる。こうして考えていくと、ジャン=バチストは三角関係の要なのに、何故か印象が薄い。非人道的な行いに怒りをあらわにし、時に激しい気性をのぞかせながらも、彼の本心が伝わってこないからかもしれない。一体彼はどちらを本気で愛していたのだろう。

風光明媚な海、山、川。海に漂うサンパンや、樹木の生い茂るプランテーション。豊かな自然の中で繰り広げられる人間ドラマに、いつしか時間も忘れてしまった。

やはりカトリーヌ・ドヌーヴはどの立ち位置でも絵になる人だ。


盗聴犯~狙われたブローカー~

20120806



2011年/香港/2時間1分(劇場で鑑賞)
原 題  竊聽風雲2
英 題  Overheard 2
監 督  麥兆輝(アラン・マック)  莊文強(フェリックス・チョン)
出 演  劉青雲(ラウ・チンワン) 古天樂(ルイス・クー)
     呉彦祖(ダニエル・ウー) 曾 江(ケネス・ツァン)
     胡 楓(ウー・フォン) 葉 璇(ミッシェル・イップ)
     焦 姣(チャオ・チャオ) 黃 奕(ホァン・イー)

<あらすじ>
香港警察の刑事ホー(古天樂)は、株ブローカーのロー(劉青雲)の交通事故を調べる中で、車に高性能の盗聴器が仕掛けられてあるのを発見。ローに面会するがなぜか彼は頑なな態度である。やがてホーは、ローの背後にジョー(呉彦祖)という退役軍人の存在をつかむ。彼はアルツハイマーの母(焦姣)を介護しながら、ローの周囲を監視していた。警察側に追い詰められたジョーは次々と事件を起こす。そんな中、かつて株取引で巨万の富を得た「地主會」の存在が浮かび上がる。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含みます)
最初、白髪交じりの刑事が古天樂とはすぐに気付かなかった。絞りに絞った北大路欣也、に見えた。私の見た範囲では「軽いノリの兄ちゃん」のイメージが強く、今回の役柄はかなり意外。でもステキだ。

株取引の知識があれば一層楽しめるのだろうが、それがなくても値動きの緊迫した雰囲気や歴史的背景は伝わってきて、興味が持続した。また、劉青雲、古天樂、呉彦祖の織り成す人間模様に、後半曾江の重厚さが加わって、男たちの人間ドラマとして楽しめる。それに比べ女性たちの背景が薄い気がした。ローの妻(黃奕)やホーの妻(葉璇)は、解説で初めて立場を知った。でもウェートを置く部分に差をつけていると考えれば納得できる設定だ。

前半のローは謎めいた存在である。会社では威厳を保つが、奥さんの前では大人しい。狙われていることに気づきながら刑事の前では知らん顔をする。また「地主會」の面々の前ではヘコヘコするばかりで会社での態度とはまるで違う。周囲の圧力に抗えず、良心を封印して堕ちていった凄腕ディーラー。いろいろありそうな人物像にますます興味がわく。

ホーは正義感の塊のような存在で揺るぎがない。「盗聴犯」に投げられても傷つけられてもひるまないところがいかにも警察官、という感じ。そんな彼にも、悔いの残る過去があるようだ。出所したばかりの奥さんとの経緯については、ぜひその詳細を知りたくなる。なお、ジョーを救った後の詰めが甘すぎて、自分の首を絞めることにもなる。明らかに失態だが、そんな彼の人間味は好きだ。

作品の見どころの一つが、激しいカーアクションである。ジョーに追われるローの見事なハンドルさばきに始まり、ジョーのバイクの曲乗りにも釘づけだ。一体何台廃車になったのだろう?

盗聴する姿と、母を介護する姿とのギャップが大きいジョー。その狙いを早く知りたくて気が急いた。親を想う子の頭には、いつしか憎しみが渦巻いて、悲劇的な結末へとひた走る。最後はただただ執念としか言いようがない。登場した時から破滅的な顛末を約束されていたような人物だった。近くですすり泣く声が聞こえたが、その気持ちもよくわかる。

母が入院する病院の院長も、ジョーの不穏な動きに気づいており、彼の周辺はすべてがミステリアス。最後の方で病院のある実態がわかったときは、こんなのアリ?と疑問符が脳を飛び交うと同時に、刺激的だった。新たなスタッフが加わった今後を、ぜひ見たいものだ。

2時間余りの長丁場とは気づかないほど、サービス満点のストーリー展開だった。

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孔雀の森

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