2011-03 : 夢の国・亞洲文化宮

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恋愛通告

20110329

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2010年/台湾・中国/1時間38分(中国版DVD)
監 督  王力宏(ワン・リーホン)
英 題  LOVE IN DISGUISE
出 演  王力宏(ワン・リーホン)劉亦菲(リウ・イーフェイ)陳冲(ジョアン・チェン)
     陳漢典(チェン・ハンディエン)喬振宇(チャオ・チェンユー)曾毅可(ツェン・イークー)
     方大同(カリル・フォン)郎祖筠(ラン・ズージュン) 謝娜(シエ・ナー)

<あらすじ>
杜明漢(王力宏)は今を時めくスーパースター。ある日彼の乗った車が一人の女性(劉亦菲)と接触する。幸い相手にけがはなかったが、その彼女が突然車の前で箏の演奏を始める。明漢はたちまちその音色に魅了され、恋に落ちる。箏のケースから彼女が音楽大学の学生と知った明漢は、バンド仲間の魏志柏(陳漢典)と大学キャンパスに潜入。辺境の地から来た「阿徳」と偽り、民族音楽学科長の前で演奏を披露して入学許可を得る。探し出した箏奏者の名は宋暁青。明漢は、彼女が先輩の慕凡(喬振宇)に憧れていると知り、不本意ながらラブレターを書くのを手伝う。

<感想など>
王力宏の初監督作品。
最初から最後まで実に慌ただしい。アニメや水墨画タッチの動画が組み込まれた画面は賑やかで、ポップスと伝統音楽の融合した音色は刺激的。こちらは視覚も聴覚もフル稼働状態だ。主人公は「杜明漢」と「阿徳」の間を行ったり来たりして、巻き込まれた魏志柏はいい迷惑。マネージャーのJoan(陳冲)はてんてこ舞い。主人公の想像が妄想に発展していくところに便乗させてもらった気分だ。

マスコミやファンに追いかけられ私生活を守るのさえ難しい杜明漢は、現実逃避の絶好の機会をつかむ。恋愛をきっかけに変装し、音大生になりすますのだ。こうした速いテンポで進む経緯は楽しめるが、いきなり楽器をかき鳴らして入学OKとは、伝統音楽を軽く見過ぎていないだろうか。センスと努力には敬服するが、学生たちが皆その道のエキスパートだと思うと、許可した学科長の判断にも首をかしげてしまう。でもここで躓くと後が続かないので、疑問はさておく。

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杜明漢は肝心なところで積極的になれない。それは彼が「阿徳」に変装したからか、それとも杜明漢自身が実は控えめな性格だからか。ずっと「阿徳」でいたい、という言葉に、スーパースターの苦しさがにじみ出ていた。杜明漢は阿徳でいることを心から楽しんでいる。これは王力宏自身の思いでもあるのかもしれない。

杜明漢が阿徳として勉強しているときに、自身のコンサートが開催される。舞台で歌ったり客席に戻ったりと、変装を繰り返すうちに、彼は自分がどちらだかわからなくなってしまう。そんなドタバタの中、Joanだけには真相がばれる。特典映像によれば、Joanは杜明漢の親代わりで、彼が9歳の頃から面倒をみている設定とのこと。彼女は敏腕マネージャーとしての苦悩をのぞかせながら、彼の幸せを心から願っている。コミカルな中に情の深さが感じられる、ステキな陳冲だった。

阿徳は、宋暁青の恋を成就させるために詩を書くが、慕凡はこれを理詰めでけなす。けれども阿徳がピアノの弾き語りを始めると、歌詞は皆の心に沁みとおっていく。誰も「阿徳=杜明漢」とは気づかない。王力宏がその歌を「阿徳として書いた」と言っているところから、彼の阿徳に対する愛着は相当大きいと感じた。さて、宋暁青の心は阿徳の方へと向かうが、阿徳、いや、杜明漢、どうする?

宋暁青が「阿徳=杜明漢」と知った後は、怒涛の展開。ハッピーエンドはお約束だろうが、いったいどうやってそこまでもっていくのか。阿徳の嘘に怒り心頭の宋暁青。でも箏の弦を切るとは何事か!! 彼女が杜明漢を好きになる日は、果たしてやってくるのか。

ドタバタ劇ではあったが、終わってみれば辻褄がピッタリの物語に仕上がっていた。副題をつけるとしたら『パパラッチ対処法』か。(笑)

作品のために、王力宏はここに登場するすべての伝統楽器をこなし、劉亦菲も古箏を学んだという。制作側の音楽に対する強い愛情を感じた。
出演者それぞれの息がピッタリで、台詞の掛け合いも楽しめる作品だった。
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台北の朝、僕は恋をする

20110325

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2010年/台湾/1時間25分(劇場で鑑賞)
監 督  陳駿霖(アーヴィン・チェン)
原 題  AU REVOIR TAIPEI
中文題  一頁台北
出 演  姚淳耀(ジャック・ヤオ)郭采潔(アンバー・クォ)張孝全(ジョセフ・チャン)
     柯宇綸(クー・ユールン)高凌風(カオ・リンフォン)曽珮瑜(ペギー・ツァオ)
     姜康哲(ポール・チャン)高 捷(ジャック・カオ)楊祐寧(トニー・ヤン)

<あらすじ>
カイ(姚淳耀)は、恋人のフェイ(許思晨)がパリに旅立ってから、両親が経営する食堂を手伝う傍ら、フランス語の本を読みに書店に通う日々を送っている。そんな彼を、書店員のスージー(郭采潔)は興味深く眺めていた。ある日カイはフェイから別れを切り出され、パリ行きを熱望する。彼は、食堂の常連であるパオ(高凌風)から、<あるもの>をパリに持っていく条件で、旅費を借りる。出発を翌日に控えた晩、カイは<あるもの>をパオの手下(楊士平)から受け取り、友人のカオ(姜康哲)と夜市に出かける。そこで偶然スージーと会い、一緒に食事することになるが、一時別行動をとったカオが妙な男たちに連れ去られてしまう。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含みます)
恋が始まるまでのドキドキ感がいい。疾走する二人に漂う緊張感が、ちょっとくすぐったくて気持ちいい。そんな彼らの物語と並行して、三角関係のもつれや、片想い、老いらく(と言っては失礼か)の恋も描かれる。パオが観ているハードボイルド風TV番組も気になるところだ。一晩で、一つの街で、どれだけの恋が語られているのだろう。

主人公二人はどこにでもいそうな若者である。スージーは最初控えめで、その可愛さが前面に出てこない。カイには覇気がなく、カノジョにサヨナラされてもしかたないと思わせる風貌だ。よくスージーが邪魔者扱いしなかったなと思う。

コンビニ店員カオの、ゆるキャラもいい。チンピラ達に脅されても慌てず、素直に指示に従い、縛られてしまう。そんな自然体が彼らの警戒心を解いたようで、彼は、麻雀に加わったり、話し相手になったり、相談にのってもらったりする。カオは周りを味方にする類い稀な才能の持ち主。 桃子ちゃん、早く彼の気持ちに気づき、こたえた方があなたにとってもいいと思うわ!

パオの手下のホン(柯宇綸)は、不思議なおかしさをたたえたキャラクター。一連の騒動は彼が引き起こしたわけだが、そのおかげでカイとスージーの恋が始まったと思えば、キューピット的役割の彼を非難するわけにもいかない。ネジが一本抜けているような言動が、笑いのツボを刺激してくれる。

キメたいのに転んでしまったのが、警官のチーヨン(張孝全)。カイとスージーを追跡中、恋人が男(楊祐寧)と歩いているのを見つけ、職務を忘れて進路変更。後輩にはかっこつけて恋愛の指南をしておきながら、自分はどうなの?と、思わずきいてしまう。(一番訊かれたくない質問だろう。:笑)

スリリングな本筋に、詳細なサイドストーリーが絡んで、一晩がとても長い。
スージーは、どんどん可愛く、強くなっていく。カイが裏社会の面倒に巻き込まれたとわかっても怯まず、かえって彼の力になる。一人より二人の方がいい、踊りの輪の中に入れば安全だといった、彼女の瞬時の判断がカイを救う。バイクの後ろに彼を乗せてビュンビュン飛ばす姿は、最初の印象とは全く違う。彼女は果敢で冷静だ。でもぶちまけられたバッグの中身を拾い集めているとき、フランス語教室のパンフレットをカイに見られるとおろおろしてしまう。タクシーを見送る眼差しが切なくて、こちらまでウルウルしてしまう。なんて可愛い娘なの!! 

一方、カイも確かに変化しているのに、自身はそれに戸惑っている。二人が一緒になったら、間違いなく彼女主導になるだろう。刻一刻と出発時間に近づいていくが、カイはいったいどうするのか?

このままずっと夜だったらいいのに、と思っていたが、間違いなく朝はやってきた。「目覚めたら夢でした…」だったらどうしようと、最後までハラハラドキドキ。すると突然のダンスシーン。これは最近の流行?それとも偶然? この前に観た二作も、出演者のダンスシーンが楽しめた。

旅行で見た台北や、他の作品に描かれている台北とは一味違う、夜の光が美しい台北だった。今度行く機会があれば、スクリーンに映った景色をまるごと眺めてみたい。

龍鳳店

20110319

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2010年/香港・中国/1時間49分(中国版DVD)
監 督  鐘澍佳(チョン・シューガイ)
英 題  Adventure of The King
出 演  任賢齊(リッチー・レン) 徐熙媛(バービー・スー) 梁小龍(ブルース・リャン)
     潘長江(パン・チャンジアン) 鞏新亮(ミュウミュウ・コン) 傅芸偉(フー・イーウェイ)
     羅家英(ロー・カーイン) 陳百祥(ナット・チャン) 黄暁明(ホァン・シャオミン)
     周立波(チョウ・リーボー) 霍思燕(フォック・シーイン) 林威(ラム・ワイ)
     
<あらすじ>
明の時代。正徳皇帝(任賢齊)は宮廷を抜け出しお忍びで江南地方にやってくる。ところが道中<四大才子>に博打で大負けして所持金を奪われた上、記憶まで失ってしまう。そんなとき、飲食店<龍鳳店>の前で、かいがいしく働く、たおやかな女将、李鳳姐(徐熙媛)に一目惚れ。彼女に作ってもらった麺は淡泊だが美味だ。彼は生活のため<龍鳳店>で働き始め、次々と新メニューを提案、店は大繁盛する。李鳳姐の兄李小虫(潘長江)は、借金返済のめどが立ちそうだと喜ぶ。そんな中、正面にライバル店が出現する。

<感想など>
庶民の暮らしを見たいと言う皇帝の前で、宮廷の人々が庶民に扮して「演劇」を披露。そんなドタバタ劇から始まる本作は、終始この高いテンションを保って展開する。太后(傅芸偉)は目のクリッとした美人で、皇帝の母にしては若すぎる。妹(霍思燕)のマシンガントークは字幕を追うのに精いっぱい。後から思えば、皇帝は女性に振りまわされる運命にあったのだ。

側近の脱獄に便乗してまんまと宮廷を抜け出した皇帝は、初めて目にする庶民の暮らしに興味津々。でも物珍しさにウキウキしていたのははじめだけだ。記憶を失って身分さえ忘れてしまう。でもそんなハプニングが彼を李鳳姐のもとに導いたのだ。

<龍鳳店>の店員はいずれも個性的だ。虫をぱくっと食べてしまう李鳳姐の兄や、お色気たっぷりの妙姐(鞏新亮)、そしてむち(木の枝)を片手に<龍鳳店>を切り盛りする李鳳姐。店の危機を何度も乗り越えるうちに、皇帝と李鳳姐の間にはいつしか恋が芽生えていた。さて皇帝はいつ記憶を取り戻したのだろう。

皇帝と一緒に脱獄した陳珍珍(梁小龍)はカンフーの達人で、何かと皇帝の危機を救う。壁伝いに走る芸当はさすが!!歴史家司馬西(羅家英)は皇帝の行動を逐一書き記す。実際にこんな人物(皇帝)がいて、その記録が現存しているとすれば、歴史の勉強も楽しくなるだろう、なんて思ってしまう。

終盤にはあの「錦衣衛」が登場する。各地に散らばっていた「錦衣衛」が、皇帝の鶴の一声で呼び寄せられ、謀反者と闘いを繰り広げる。事前に『錦衣衛』を見ていてよかった。特にお婆ちゃんの「錦衣衛」が凛々しくて、画面に向かって拍手してしまった!!

ハッピーエンドにならないわけはない。でも簡単にハッピーにはならない。皇帝の身分が明かされても結局李鳳姐のムチに打たれる運命だったとは。でも愛のムチだからむしろ心地よかったりして。自立の精神を貫く李鳳姐、エライ!!

先日の『唐伯虎点秋香2』より楽しめた。これらのストーリーを盛り込んだ、さらに面白い物語に期待したい。

唐伯虎点秋香2

20110318

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2010年/中国・香港/1時間45分(中国版DVD)
監 督  李力持(リー・リクチー)
出 演  黄暁明 (ホァン・シァオミン) 張静初(チャン・チンチュー)
     任賢齊(リッチー・レン)  陳百祥(ナット・チャン)
     周立波(チョウ・リーボー) 朱[口米][口米](チュー・マイマイ)
     樊少皇(ルイス・ファン)  苑瓊丹(ユン・キンタン)

<あらすじ>
唐伯虎(黄暁明)、祝枝山(陳百祥)、文征明(周立波)、徐禎卿(任賢齊)の<四大才子>は、いつも騒ぎを引き起こしている。唐伯虎の母(朱[口米][口米])は彼から「二度と武功を使わない」という念書をとり、勉強に専念させるため「清風寺」に入れる。ところがこの寺の雰囲気はどことなく怪しい。ある夜、唐伯虎は祭りで美しい女性に一目惚れ。後に彼女は倩倩(張静初)という名であることがわかる。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含みます。)
物語は<四大才子>のドタバタから始まる。祝枝山、文征明、徐禎卿に比べ、唐伯虎は顔が整い過ぎているためか、どんなバカをやっても底抜けのバカに見えず、変顔が変に見えない。でも顔の筋肉は柔らかそうで、変幻自在の表情は楽しめた。前作『唐伯虎点秋香』(詩人の大冒険)は遠い記憶の彼方なので、ここでは触れずにおく。

ほんと、バカバカしいのである。目の下を黒く塗って「墨鏡(サングラス)」とかけてみたり、人が派手に飛んで壁が人型に抜けたりと、何だこりゃと思わせるシーンが続出。テンポが速くて笑おうとした瞬間に次の笑いどころがやってくる。あきさせないところがいい。

<四大才子>以上に印象的な人物がいる。表向きは清風寺の住職、でもその実態は… な、な~んと海賊の首領だったのだ! 演じる樊少皇の目の周りは真っ黒。諸肌脱いで刺青のいっぱい入った身体を露わにしたとき大笑いしてしまった。泥棒という役柄が、一瞬『イップ・マン序章』とかぶった。けれどもこちらの方がはるかに強い!迫力、悪役度共に満点!と言ってもかなり滑稽な悪役だ。私の中では完全に<四大才子>を食っていた。伊武雅人に似ていると思ったとき、中華版雲じいは樊少皇だ、なんて想像が飛躍した。

張静初演じる倩倩は、実はこの海賊の一味なのだが、唐伯虎との出会いで変わっていく。彼女は後に自分の出自を知ることとなり、強い海賊を敵に回す。唐伯虎とはお似合いカップルで、二人のコミカルなやりとりが微笑ましい。ほかの作品でも共演してくれないかしら。

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何となく続きがありそうなラストだなと思っていたとき、突然、徐熙媛(バービー・スー)が登場。どうやら別作品『龍鳳店』の光景のようだ。今度は、サイドストーリーとも思われる『龍鳳店』を観るとしよう。

20110314

被災地の皆様には、心からお見舞いを申し上げます。
連日の報道をただ見つめるだけの自分が歯がゆくてしかたありません。

私が住む所は震度4でした。
その時はちょうど職場にいましたが、乱雑に積まれた書籍や書類が
崩れる程度で、多少、今までにない揺れだと感じたくらいでした。
でもその直後に東北地方の情報を耳にして呆然としてしまいました。

家族は全員無事でした。
計画停電のことが報道され、今がちょうどその時間帯なのですが、
まだのようです。
外の放送に耳を傾け、市のホームページに注意したいと思います。

被災者の方々が一日も早く安定した生活を送れるようになることを
祈っております。

再生の朝に -ある裁判官の選択

20110311

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2009年/中国/1時間38分(劇場で鑑賞)
監 督  劉 杰(リウ・ジエ)
原 題  透 析
英 題  judge
出 演  倪大宏(ニー・ダーホン) 鄭 [金争](ジェン・ジェン)
     梅 [女亭](メイ・ティン) 奇 道(チー・ダオ)
     高純学(ガオ・チュンシュエ) ソン・エイシェン
    
<あらすじ>
1997年、河北省の涿州(たくしゅう)市。裁判官のティエン(倪大宏)は、娘を盗難車の事故で亡くし、妻(鄭[金争])共々立ち直ることができないでいた。そんな中、彼は車2台の窃盗で逮捕されたチウ・ウー(奇道)の案件を手掛ける。委員会での協議の結果は死刑判決。法律改正前で、現行では死刑が適用されるのだ。腎臓病を患っているリー社長(ソン・エイシェン)は、チウ・ウーの腎臓が自分に適合すると知ると、弁護士(高純学)を通し家族や裁判所に根回しをして、移植を実現しようとする。最初のうち彼のために奔走していた婚約者(梅[女亭])も、チウ・ウーや家族の事情、判決に到る経過を考えるうちに、疑問を抱くようになる。やがて執行の日がやってきた。

<感想など>
オフィシャルサイトによれば、実在の刑務所を使用し、獄中の場面ではチウ・ウー役以外実際の服役囚を起用したとのこと。またリー社長役も役者ではなくビジネスマンだそうだ。いずれも素人っぽさが全くない。こうした撮影事情を後で知って驚いた。

車2台の窃盗で死刑。誰もが首をかしげてしまいそうな判決が、「法」のもと執行に移されようとする状況が恐ろしい。まるでブレーキの利かなくなった車がそのまま突っ込んでいくのを目の当たりにしているかのようだ。果たしてブレーキはかかるのか…。

一人の裁判官の良心と勇気を称える結果になっているが、そこに到る過程の方が印象に残った。

重大な判決に個人的事情が影響してしまう恐ろしさ。その「事情」が仕事がらみかも知れないという疑念。人命を売買の対象としてしか見ていない男の傲慢さ。判決を「家族のため」とあきらめる青年の無念さ。多くの人のさまざまな感情と、後戻りできない現実とが、重くのしかかる。

全編を通して暗く、湿っぽい雰囲気で音楽もなし。身も心も落ち込んでしまう。しかしティエンが、規則違反の飼い犬を奪おうとした警官に殴り掛かったとき、一筋の光が見えた気がした。犬がいなくなったら妻のよりどころがなくなってしまう。彼は自分の立場よりも妻を尊重する。再生の朝がやってきたのはその時ではないか。

確かに朝の光は見えた。でもリー社長や婚約者にも、それを見るときがやってくるだろうか。本筋と離れた人間模様が、今なお気になってしかたがない。

剣雨

20110309

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2010年/中国・香港・台湾/2時間(中国版DVD)
監 督  蘇照彬(スー・ジャオピン)
プロデユース  呉宇森(ジョン・ウー)
衣 装  ワダ・エミ
英 題  REIGN OF ASSASSINS
邦 題  レイン・オブ・アサシン
出 演  
楊紫瓊(ミシェル・ヨー) チョン・ウソン  王學圻(ワン・シュエチー)
余文樂(ショーン・ユー) 徐熙媛(バービー・スー) 林熙蕾(ケリー・リン)
戴立忍(レオン・ダイ) 郭暁冬(グオ・シャオドン) 鮑起静(バオ・チージン)
江一燕(ジャン・イーエン) 金士傑(ジン・シージエ) 李宗翰(リー・ゾンハン)
呉佩慈(ペース・ウー) 馬書良(マー・シューリャン)

<あらすじ>
転輪王(王學圻)を首領とする刺客集団<黒石派>は、達磨大師の遺体の下半身(盗賊により分断された上半身は行方不明)を求め、これを所有するとされる役人宅に押し入る。刺客の一人細雨(林熙蕾)は張海端を殺し、遺体を奪取して逃走。途中、張の息子張人鳳(郭暁冬)にとどめを刺した後、修行僧陸竹(李宗翰)と出会う。両者には三か月の間に恋情が芽生えるが、陸竹は出家を決意。細雨に江湖から身を引いてほしいと願う陸竹は、技を伝授する中、自ら望んで彼女の刃に倒れる。細雨は李鬼手(金士傑)に顔の整形を依頼し、達磨大師の遺体を自分の墓碑下に埋め、曽静(楊紫瓊)として平凡に生きる決意をする。彼女は都で心優しい江阿生(チョン・ウソン)と所帯を持ち平和に暮らしていた。ところが強盗に遭遇したのをきっかけに、彼女は再び江湖の世界に足を踏み入れることとなる。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含んでいます。)
ベタなラブストーリーが好きな私にとっては美味しい作品だった。メイン二人の細やかな感情表現に加え、アクションの華やかさあり、ミステリーやサスペンスのドキドキ感ありと、エンタメ要素てんこ盛りの一品だ。でもこれはあくまで自分の独断と偏見。「な~んだ…」と言う人もいることだろう。と思いつつニンマリしてしまうのである。(笑)

序盤は場面展開が早く、息切れしながらついていく状態。また、整形前の細雨と整形後の曽静の顔貌がけっこう似ており、混乱した。こうした鑑賞者を惑わすような展開は意図的なのかも知れない。前半の布石は後半で有用となるから、見落としてはならない。(と、後で思った。)

チョン・ウソン演じる江阿生はごく普通の庶民で、どちらかと言えば精彩を欠いた存在として描かれている。しかしそんなさりげない装いの中にオーラがある。只者ではなかろう、ならばいったい何者か、もし突然悪者に変身したら興ざめだ…。こんな問答を繰り返しながら、曽静目線で彼を眺めていた。

江阿生と曽静がさりげなく視線を交わす場面がたび重なり、じれったくなる。にわか雨や雨宿りといった雨の場面が象徴的だ。おせっかいな大家(鮑起静)も面白い存在。自分の心に蓋ができなくなった曽静は高僧に相談する。そして「心のおもむくままに」と告げられた途端、自分から求婚。このあたりはコミカルで、楽しめる展開になっている。

中盤からは<黒石派>のメンバーが集結、さらに達磨大師の遺体を狙う者たちが、都で不穏な動きを見せる。王學圻、余文樂、戴立忍、徐熙媛らが演じる主要人物の背景、武器が興味深い。彩劇師(戴立忍)は両手に炎を噴き出す剣を持つ。雷彬(余文樂)は身に隠し持つ針で相手を倒す。葉綻青(徐熙媛)の特技は色仕掛け?獄中で連れ去られた彼女は確かに気の毒だ。色気をばらまくところには正直目を覆いたくなった。転輪王の背景だけがなかなか明かされない。

江湖を彷徨いつつ自分の生き方を模索する者たちの物語だと思った。雷彬には麺職人として店を持つ夢があり、曽静は静かな暮らしを求めている。彩劇師は大道芸人。葉綻青も本心では幸せを望んでいるはず。転輪王の、遺体を手に入れようとする真の理由がわかると、驚くと同時に暗澹たる気持ちになった。人間の尊厳に関わる願望だからだ。王學圻の声音を変えた「一人芝居」には釘づけになった。悪玉、善玉、と一括りにはできない、複雑な人間模様に心を揺さぶられる。

終盤で江阿生の正体が明らかになるが、これは思いもよらない展開だった。疑わしい行動や表情が思い出せなかったからだ。只者でないのは確かだったが、まさかこうなるとは。そしてさらにどんでん返し(と言えるかわからないが)が待ち受けている。

最後に。結局奥さんの方が腕は上、でも愛の力は旦那の方が一枚上?いや、愛情に甲乙つけるなんて無理…などと想像しているうちに、またまたニンマリしてしまう私なのだった。(笑)

錦衣衛

20110307

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2010年/香港/1時間52分(中国版DVD)
監 督  李仁港(ダニエル・リー)
邦 題  処刑剣 14BLADES
英 題  Fourteen Blades
出 演  甄子丹(ドニー・イェン) 趙薇(ヴィッキー・チャオ)
     呉 尊(ウーズン) 徐子珊(ケイト・ツィー)
     戚玉武 (チー・ユーウー)  洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
     羅家英(ロー・カーイン) 劉松仁(ダミアン・ラウ)
     午 馬(ウー・マー) 陳之輝(チェン・チーフイ)

<あらすじ>
明代、朝廷は「錦衣衛」と呼ばれる秘密警察組織を備え、最も腕の立つ者に「青龍」の称号と14本の武器を与えていた。当時皇帝の座を狙っていた慶親王(洪金寶)は腕利きの娘脱脱(徐子珊)を呼び寄せ、宦官(羅家英)と結託。青龍(甄子丹)らは、宦官の罠にはまり玉璽を奪われてしまう。青龍はかろうじて逃れるが、他の錦衣衛の面々は捕えられ、白虎(陳之輝)たちは同じ錦衣衛である玄武(戚玉武)らに殺害される。傷ついた青龍はクーデター首謀者として追われる立場に。彼は追っ手を逃れ、鏢局(ひょうきょく:用心棒を抱えた運送業者)に身を寄せる。鏢頭(午馬)の娘喬花(趙薇)の輿入れに便乗した青龍は、途中匪賊の襲撃をかわしたのをきっかけに喬花を奪い、逃避行の旅に出る。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含んでいます。)
公開を待ちきれずにDVDを購入。一作品にこれほど多くの、興味深い面々が集結しているのが嬉しい。いずれも期待通りの魅力を発揮しており、キャストには十分満足だ。

冒頭で明代の「錦衣衛」についての説明が流れる。孤児の中で選ばれた者だけが過酷な訓練を経て「錦衣衛」に組み込まれるという。彼らに名はない。甄子丹が演じる「青龍」は称号に過ぎない。彼は現場で幼児に遭遇した時、兄を殺めたトラウマが浮かんだのではないか。非人道的な環境で育ったにもかかわらず、人間的な面を失わなかったことが、かえって追われる原因になったように思えた。

甄子丹の華麗なアクションと肉体美に惹きつけられる。武器も多彩で、魔術のオンパレードを眺めている気分。徐子珊演じる脱脱の目くらましの術はさらに妖しげだ。剣を振り下ろした先には、衣装だけが残っている。ひらりひらりと相手の目を晦まして、思わぬ方向から攻撃を仕掛ける姿は、とても人間には見えない。彼女の生い立ちも孤独で、人間的な感情を封印しているところが青龍と共通している。彼女は喬花をさらい、青龍の手中にある玉璽と交換する案を持ちかける。結局脱脱は玉璽を手にするも、心中穏やかではなかったはず。最後の戦いで青龍をつかんだ手の動きに、彼女自身気がつかない彼への想いが感じられた。

玄武を演じる戚玉武は、シャープな面持ちが魅力的。青龍を越えられない焦燥感、未熟さが伝わってくる。確か『画皮』でも甄子丹、趙薇と共演していた。今後が楽しみな俳優の一人。

呉尊は今回が初めて。華奢なイメージだが、アクションにキレがあって強さが前面に出ている。青龍と手を取り合って悪と対決する<盗賊>である。エキゾチックな風貌が砂漠の中で引き立っていた。

青龍は目的達成のために喬花を使うが、いつしか両者に恋愛感情が芽生える。しかし「錦衣衛」の宿命を考えれば恋に溺れるわけにはいかない。ストーリーが濃厚な恋バナに傾かなくて正解だったと思う。

終盤は喬花の語りが続き、主人公が入れ替わってしまったような違和感が残った。
また、玉璽が朝廷に戻り、平和な世の中になったというが、では玉璽というモノさえあれば政治がうまくいくのかと、疑問が浮かんだ。「世界で唯一の解毒剤」のように、これがなければ命が助からない、というモノなら、命を懸けて探し出したり守ったりする価値はあるだろう。でも玉璽なんて偽造してしまえばそれまでだ。このためにいったいどれだけの人が犠牲になっただろう。これ一つで左右される政治って、一体何なのだろう。歴史ものではよくこの玉璽や聖旨にひれ伏す場面を見るが、私はいまだにそのお約束に慣れていない。

監督がこの続編を構想しているとの記事を読んだ。続きがあるとすれば、新たな布陣で臨むのだろうか。
今は、甄子丹が出ない「錦衣衛」は考えられない。

海洋天堂

20110305

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2010年/香港・中国/1時間37分(中国版DVD)
監 督  薛暁路(シュエ・シャオルー)
撮 影  杜可風(クリストファー・ドイル)
英 題  OCEAN HEAVEN
出 演  李連杰(ジェット・リー) 文 章(ウェン・チャン)
     桂綸鎂(グイ・ルンメイ) 朱媛媛(ジュー・ユアンユアン)
     董 勇(ドン・ヨン)  厳敏求(イェン・ミンチュー)
     高圓圓(ガオ・ユアンユアン)

<あらすじ>
王心誠(李連杰)は、妻(高圓圓)の死後、21歳になる自閉症の息子大福(文章)を一人で育ててきた。近所で商店を営む柴(朱媛媛)は、何かと父子を助けてくれる。心誠は末期がんで余命数ヶ月。大福が一人で生きていけるよう、日常生活の方法を教えたり、受け入れ施設を探したりと、病をおして奔走する。ようやく、以前世話になった施設の元校長(厳敏求)が民間施設を経営しているのを知り、そこへの入所が決定。心誠は、その場所から自分の勤務先である水族館までの道のりを、大福に根気強く教えるのだった。そんな中、大福は、移動サーカス団でピエロ役をしている女性(桂綸鎂)と出会う。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含んでいます。)
評判の作と聞いて早速購入。鑑賞後に公開が決まっているのを知り、単館上映ではなく、是非全国一斉に公開してほしい、という願いを込めて書くことにした。

李連杰が初めてアクションなしで臨んだことが話題になっているが、この作品で初めて李連杰を知った人は、おそらく彼とアクションを結びつけることはできないだろう。そう思えるほど、愛情に満ちた父親役がはまり役になっている。

父の姿に目頭が熱くなる。服の着脱、卵の割り方やゆで方、鍵の置き場所、買い物の仕方、その他細々としたことを、彼は息子に根気強く教えていく。そして大福がほんの少しでもクリアできるたびに、「すごい!」「よくできた!」と言って褒める。純粋な称賛である。その言葉と共に、父の満面の笑顔がある。まるで自分が褒められたような、愛情をかけられたような気分になっていく。

物の置き場所に固執する大福は、犬のぬいぐるみをいつもテレビの上に置く。すると父が「そこは置く場所ではない」と言ってソファの上に置く。するとまた大福はそれを「元の場所」に戻す。この繰り返しだ。父はそんな大福の性質がわかっていて、テーブルの上にお札を順序良く並べ、商品の値段に適するお札の選び方を教える。でもこれはなかなかうまくいかない。大福には大福なりの美(お札の柄)に対する価値観があるようで、そんな彼の心模様が自然に伝わってきた。

大福は、彼を知る人々から大切にされている。近所の柴は心誠が好きで、一緒にいる大福を気づかっている。民間施設の所長も、職員も、それぞれ福祉の仕事に誇りを持って大福を見守っている。水族館館長(董勇)は心誠親子のよき理解者である。彼らに共通するのは、王心誠を通して大福を知っている、ということだ。

そんな彼らとは違い、王心誠を通さず、大福をストレートに理解する人がいる。ピエロのお姉さんだ。彼女は幼いころ両親と別れ、育ててくれたおばあちゃんもすでにこの世にいない。彼女はそんな天涯孤独の身の上を大福に話す。大福にとっては、見ず知らずの人から対等の立場で話しかけられた経験はこれが初めてだったのではないか。彼女は、本能の部分で彼と通じているように見える。大福が年頃の青年らしく彼女に惹かれる様子は微笑ましい。

決して楽しい話ではないのに、とことん深刻にならないのはなぜか。その理由の一つはカメラ効果だと思う。水のきらめき、水を通して映る人物のゆらめき、ピエロのカラフルな衣装とメイク。時々夢を見ているような気分になる。久石譲の音楽も心にしみ、先日の『おばさんのポストモダン生活』よりは合っている気がした。そして、物語は絶望に始まり、希望へと走っていく。大福自身生き抜く運命にあるのではないか、と思えるほど、彼はある意味奇跡的にここに存在する。

中盤あたりから号泣状態。家で一人きりだったので思いっきり泣いてしまった。何に泣くのかといえば、すべてに、である。大福同様ソファのぬいぐるみをテレビの上に置きなおす父、「亀=父」を息子にインプットさせる父、バスの運転手になりきる父…。これ以上書くと全場面のネタバレになるからやめておこう。

特典の、テーマ曲MV《説了再見》(周杰倫)、《海洋天堂》(桂綸鎂)に、またまた涙。《説了再見》ではピアノの弾き語りをする周杰倫の横に思い出の場面が映し出される。久石譲作曲の《海洋天堂》は劇中流れていた曲である。

死期を知ったとして、自分には何ができるだろう、何をしなければならないだろうということを考えさせられた作品。
劇場へはすっぴんで行こうかと、真剣に考えている私である。

頑酷青春

20110303

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2010年/中国/1時間33分(中国版DVD)
監 督  孔令晨(コン・リンチェン)
出 演  吕麗萍(ルー・リーピン) 盛 超(ション・チャオ)
     郭 涛(グオ・タオ)   李 濱(リー・ビン)

<あらすじ>
羅素芳(吕麗萍)は、高校三年生の息子何志鵬(盛超)が勉強そっちのけで跑酷(ストリート・アクション)に熱中しているのが心配でたまらない。3か月後に大学入試が控えているからだ。彼女は離婚後、ホテルの雑用で稼ぎ、母(李濱)と息子を養ってきた。ところがある日突然、年齢のせいで解雇を言い渡される。彼女は日本人社長に直談判し、ようやく清掃の仕事を得る。元夫(郭涛)が志鵬の戸籍移転を要求しに来たり、志鵬が猛烈に反抗したりと、素芳にとっては気の休まらない日が続く。彼女は息子の勉強意欲をあおるため、癌であると嘘をつく。

<感想など>
「跑酷」というスポーツがあるのを初めて知った。スクリーンに映る面々は、壁をよじ登ったり、高所から空中回転で飛び降りたりと、かなり危険なパフォーマンスを見せてくれる。上で勝手に<ストリート・アクション>と訳したが、実際にはどんな日本語が訳語として適切だろう。城市猴子(CITY MONKEY)という実在のチームが映画に全面協力しているとのこと。若者たちのエネルギッシュな動きがまぶしい。

物語は、この「跑酷」が大好きな少年と、彼に期待を寄せる母親との葛藤を中心に進む。おばあちゃんは、その間に立って、孫のよき理解者となる。彼女は、志鵬に見せられたネット上のパフォーマンスに目を輝かせ、昔話に夢中になる。どうやら、彼女も夫も軽業を披露する芸人だったらしい。彼女の母、つまり志鵬の曾祖母は、孟小冬(梅蘭芳の元妻)と同じ門下だったとのこと。少年はそういう血を受け継いでいるのだ。

さて素芳が帰宅したのを知ったおばあちゃんは、急に口をつぐんでしまう。孫の勉強を邪魔していると思われては大変だ。気風のよさそうなおばあちゃんだが、家の実権を握る娘には頭が上がらない。このおばあちゃん、好き!
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羅素芳は息子の引き出しを勝手に開けたり、撮影の邪魔をして無理やり息子を連れ帰ったりと、度の過ぎた干渉を繰り返す。彼女の気持ちもわからなくもないが、力ずくで抑えようとすればするほど反発が強まるのは必至。キレた志鵬にお手上げ状態の母は、とうとう仮病を使う。
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息子は母のために頑張って、統一試験の合格ラインにようやく達する。試験前に携帯電話を提出する場面がはっきり映し出されたのは印象的だった。前代未聞の漏えい事件が報じられた後だからか、普段なら見過ごしそうな場面が頭に焼き付いてしまっている。

母の深い愛情にようやく気づくものの「孝行したいときに親はなし」である。
なんともやりきれない最後だ。(はっきり映し出されていないが、たぶん彼女は亡くなったのだろう。)素芳の人生っていったい何だったのだろう。

せっかく「跑酷」という特異なスポーツを取り上げ、しかも図抜けた才能を持つ少年を登場させているのだから、家族が彼の雄姿を称賛するような場面があってもよさそうなものだ。元夫婦と祖母が一緒になって子(孫)のパフォーマンスに拍手を送る、というシーンを観たかった。

何志鵬は「跑酷」をやめてしまうのか、それとも学業と両立していくのか。いずれにしても前向きな人生を歩んでほしい、と祈らずにはいられない。

冒頭は軽く弾むような雰囲気だったのに、最後はどんよりと沈んでしまった。なるべく、最後に明るくなるような作品を観たいものだ。

姨媽的後現代生活

20110301

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2006年/中国/2時間(中国版DVD)
監 督  許鞍華(アン・ホイ)
邦 題  おばさんのポストモダン生活
英 題  THE POSTMODERN LIFE OF MY AUNT
出 演  斯琴高娃(スーチン・カオワー)周潤發(チョウ・ユンファ)
     趙 薇(ヴィッキー・チャオ)関文碩(グァン・ウェンシュオ)
     盧 燕(リサ・ルー) 王子文(ワン・ズーウェン)
     史 可(シー・クー) 焦 剛(ジャオ・ガン)

<あらすじ>
上海で一人暮らしをしている葉(斯琴高娃)のもとに、甥で12歳の寛寛(関文碩)がやって来る。彼はある日飛飛(王子文)という、顔にやけどの跡が残る若い女性に会う。寛寛は、彼女の整形手術の費用を工面するため、狂言誘拐で叔母から身代金を取ろうとするが、あえなく失敗。葉は警察官に、自分の提案であると嘘をつく。寛寛は帰郷する。
葉は京劇の歌を披露する潘知常(周潤發)と知り合いになり、心惹かれる。あるとき彼女は、潘から持ちかけられた墓地の投機話に乗り全財産をつぎ込むが、後で詐欺に遭ったことが判明。同様に被害者であると話す潘は去っていく。
心労が重なったせいか、葉は歩道橋の階段から足を踏み外して大けがを負う。鞍山からやってきた娘、劉大凡(趙薇)は「身勝手な」母親に猛反発する。

<感想など>
葉おばさんの周りは賑やかだ。
隣家の水夫人(盧燕)は人に対する好奇心が旺盛で、おばさんはちょっと持て余し気味。ひらひら踊る姿はインパクト大。演じる盧燕は『再会の食卓』の主人公とはまるで別人だ。

寛寛は初めての環境でも物おじしない、マイペースな少年に見える。しかし後半、深い悩みを抱えていることがわかったとき、飛飛のための突拍子もない画策が、敏感な心の表れに思えてきた。

この寛寛と劉大凡には「傷ついた者同士」の連帯感がある。ブチ切れ状態の彼女には眉をひそめてしまうが、寛寛を気遣う姿から、優しさや寂しさを垣間見た気がした。趙薇については色々な役柄に接したが、今回のような荒々しい姿が実にはまり役に見えた。

おばさんは、難病の娘を抱える永花(史可)に同情して面倒を見るつもりだったが、不当な手段で稼ぐ姿に激怒。しかし彼女が逮捕されたと知ると、刑務所まで会いに行く。そんなおばさんの心根の優しさが身にしみる。

おばさんは、どんな苦難も持ち前の明るさとど根性で乗り切ってしまう、頼もしい女性だと思っていた。ところがある男性との出会いによって、彼女の人生は大きく変わる。

周潤發演じる潘知常が、最も難解な人物だった。彼は詐欺師なのか、それとも本当に騙されたのか。おばさんと一緒に京劇を舞い歌うのを楽しんでいたのか、それとも芝居だったのか。そして、一時的であってもおばさんに心惹かれていたのかどうか。彼の笑顔は可愛いし、水夫人の猫を誤って死なせてしまったときは狼狽し、心底悲しそうだった。おばさんの気持ちを思えば、彼には犯罪者であってほしくない。こんな曖昧な人物を、周潤發が楽しそうに演じていたのが印象的だった。

こうして見ていくと、登場人物のほとんどは幸せとはいえない人生を歩んでいる。特に、終盤鞍山に戻ったおばさんに笑顔はなく、白髪交じりの髪はバサバサ、前半とは全くの別人だ。そして何の変化もなく物語は終わる。こんな過酷な現実を何とか打破する、という展開であってほしかった。大きなお月さまを見た人は必ず幸せをつかむことができる、というように、前向きなストーリーならよかったのに。鑑賞後しばらくは後半への不満と希望的展開が頭を駆け巡っていた。
プロフィール

孔雀の森

Author:孔雀の森
いろいろな出会いを
大切に♪

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