2010-05 : 夢の国・亞洲文化宮

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深夜特急2 -マレー半島・シンガポール-

20100529

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著 者: 沢木 耕太郎

出版社: 新潮社(文庫)

刊 行: 1994年
(1986年5月『深夜特急 第1便』後半部分より)







<内 容>
第4章  メナムから  マレー半島Ⅰ
第5章  娼婦たちと野郎ども  マレー半島Ⅱ
第6章  海の向こうに  シンガポール
〔対談〕  死に場所を見つける  高倉健 沢木耕太郎

<感想など>
香港での体験が濃すぎて、後の旅では物足りなさを感じたという。
最初に訪れたところだから、印象が強烈なのか。
それとも香港の街自体が人を圧倒させる何かを持っているということか。
著者はシンガポールで、他地域に香港を求める無意味さにようやく気づき、
その土地独特のモノをつかんで来なかったのを後悔する。
そういう感覚、少しわかる気がする。

自分の状態にとても鋭敏な人なのだろう。
旅人の自分をもう一人の自分が見つめて、細かく分析をしている。
そんな著者の目が楽しめた。
第5章では、娼婦たちとその「ヒモ」たちの生活に密着して
好奇心旺盛に動き回る様子を、冷静な目が描き出す。
著者は、旅する自分の姿に酔っているようにも見えた。

こういう旅行記を読むと、自分の旅行を思い出す。
著者が他国の人と言葉の相互学習をする場面があるが、
私にも似たような経験がある。
中国の銀川では、ドミトリーで相部屋となった香港の人たちに、
広東語を少しだけ教えてもらった。
最初は大笑いされるほどひどい話し方だったらしいが、
何回か発音を直してもらい「これで通じる」と言われるまでになった。
実際使えると、拙いとわかっていても嬉しいものだ。
そして何より交流しているその時間が楽しい。

言葉に対する意識については、著者の瞬発力が羨ましくなった。
バンコクでも、ペナンでも、近くにいる人に数と基本的な挨拶言葉、
訊ねるときの言い回しを教えてもらって、これを即使っている。

かつて教わった広東語は今ではすっかり忘れてしまったが、
今後香港や広州へ行く機会があれば、基本事項を学んで使ってみたい。
ほかの国の言葉でも、挨拶くらいはできるようになりたいな。
最近は、新たに外国語を学んでその土地で使ってみよう、なんて
考えることもなかった。
一つ目標ができたかも。そんな意味でも、これは貴重な一冊だ。

次はいよいよ、インド、ネパール!!
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走向春天的下午

20100527

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著 者:幾米(ジミー)〔台湾〕
出 版:2010年1月
言 語:繁体字中国語
英 題:One More Day with You
出 版:大塊文化出版股份有限公司(台湾)

<内容・感想など>
子供が描いたと思われる女の子の絵と、「維亜」という親友にあてた手紙から、最初は、主人公が維亜ちゃんに会いに行く物語だと思った。麗らかな、浮き足立つような春の午後。遠いのだから気をつけるようにと家の人から注意を受けて、主人公は愛犬の阿吉を連れてルンルン!と家を後にする。この「阿吉」、中国語音では「アジー」だが、どうしても「アキチ」と読みたくなる。アキチ、アキチ、アキチ、アキチ…。私の頭の中では完全に「アキチ」となった。

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書道ガールズ!!-わたしたちの甲子園-

20100526

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2010年/日本/2時間(劇場にて鑑賞)
監 督  猪股隆一
出 演  成海璃子 桜庭ななみ 山下リオ 高畑充希 小島藤子
     金子ノブアキ 森崎ウィン 森岡龍 坂口涼太郎

<あらすじ>
早川里子(成海璃子)は四国中央高校の書道部部長で、人一倍真剣に書道に取り組んでいる。部員の中には彼女の厳しさに耐えられず去る者もいた。そんな里子に、親友の篠森香奈(桜庭ななみ)は「書道の団体戦をやりたい」と訴えるが、里子はとりあわない。
ある日産休補助として北澤(金子ノブアキ)という教師が赴任、書道部の顧問となる。里子は初日に彼を泥棒と間違え墨をかけてしまった上、作品を「つまらない」と評価されたことで、北澤を敬遠していた。その一方、好永清美(高畑充希)は、大きな紙に太い筆をたたきつけて書く北澤のパフォーマンスに感激、彼に一目惚れして「愛」の字を紙いっぱいに書きまくる。里子は清美を不真面目だと怒るのだが・・・。

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「文革」を生きた一知識人の回想

20100523

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著 者: 朱 沢秉

原 題: 狗崽子雑記

訳 者: 細井和彦  李 青

出版社: ウェッジ

刊 行: 2010年2月









<内 容>
第一章 十年間の悪夢
 ジャーナリストだった父が右派分子として投獄され、家族が離散した。
 著者は「犬っころ」と呼ばれ、理不尽な差別に耐える日々をおくる。
     
第二章 苦界に船を漕ぐ
 知識分子として農村に下放され、日々過酷な労働を課せられる。
 著者は身分的差別のためその境遇から抜け出せないが、条件のよい場所に
 移動できる者もいた。
 
第三章 一筋の光明
 撫州師範学校の教師となり、妻水鏡との間に子供が生まれる。念願だった
 大学受験の申請は却下され、通勤条件の厳しい職場の異動もままならない。
 文革は終わったが父親の名誉回復を願い出ても容易に受け付けられない。


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深夜特急1 -香港・マカオ-

20100520

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  著 者: 沢木 耕太郎

  出版社: 新潮社(文庫)

  刊 行: 1994年3月

(1986年5月『深夜特急 第1便』より)










<内 容>
著者26歳当時の旅行を題材として書かれた紀行文。
第1章  朝の光 発端(インド・デリー)
第2章  黄金宮殿 香港
第3章  賽の踊り マカオ
〔対談〕出発の年齢  山口文憲 沢木耕太郎

<感想など>
1947年生まれの著者が26歳の頃体験した出来事。つまり1973年当時の旅行記と
いうことになるが、巻末の対談から、執筆したのがその十数年後とわかった。
振り返って書いているからだろうか。「私」が主人公の小説に思えてくる。

第1章では、どうしてもデリーを出発しなければならない理由と、その心境が綴られる。
第三者からみれば、どうでもいい理由である。そこがおもしろい。
今日一日をどう過ごそうかと考えること自体、贅沢なことだ。
そんな心の動きが詳細に描かれており、若い頃読んでいたら影響を受けたかも
しれないと思った。
鉄道ではなくバスで移動したい!と言い張る姿には共感できた。鉄道の方が楽だという
一般論を却下し、あくまでも自分の望みを貫く。駄々っ子と同じなのだ。
そういう主張ができるのも贅沢だ。

第2章は香港での体験記である。連れ込み宿のような(実際そうである)ホテルでの
滞在、友人との交流、筆談、英語でのやり取りなどが描かれている。
気負いもなく、淡々と過ごしているように見えて、かなりハードな冒険を体験している。
激しさをオブラートでくるんでいるような感じだ。
香港をもっと知っていたらその光景が目に浮かぶかもしれない。

第3章がいちばん面白かった。カジノは全く知らず、文字からだけではそのしくみが
よく理解できないにもかかわらず、「私」の心の動きを見るのが楽しい。
カジノに関心のなかった筆者が、ちょっと手を染めて、興味を持ち出し、金額が増える
喜びを知り、やめられなくなっていく。ついには、そのからくりを探り出そうと観察。
しかし予想が大きくはずれ、金銭的な得はなく、去っていく。短い時間の中で、多くの
人物と出会い、さまざまな思惑を眺め、自分の到らなさに気づく。読んでいる方まで
ハラハラドキドキの連続だった。
著者が大勝ちしていたら、ものすごくつまらない物語になっていただろう。(笑)

続編があるようなのでのんびり読んでいこう。寝台列車に乗った気分で。

母と娘

20100519

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2000年/フィリピン/2時間(アジア映画祭りにて鑑賞)
監 督  ロリー・B・キントス
原 題  ANAK(CHILD)
出 演  ヴィルマ・サントス  クラウディン・バレット
     バロン・ゲイスター  シェイラ・モー・アルヴェロ
     ジョエル・トーレ  レアンドロ・ムエオス

<あらすじ>
ジョシー(ヴィルマ・サントス)は6年ぶりにマニラに帰ってきた。彼女は一家の生活を支えるため香港で家政婦として働いていたが、友人らと事業を始めるため帰国を決意したのだった。空港には高校生の息子マイケル(バロン・ゲイスター)と小学生の娘ダダイ(バロン・ゲイスター)が迎えに来ていたが、最初全く気づかない。夜は自宅でパーティを開き、子供の面倒を見てくれた叔母たち親戚一同に大量の土産物を配り、大盛り上がり。深夜に帰宅した娘カーラ(クラウディン・バレット)は、はしゃぎまわる母を冷ややかな目で見ていた。

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安陽の赤ちゃん

20100518

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 2001年/中国/1時間22分
 (アジア映画祭りにて鑑賞)
 
 監 督  王 超(ワン・チャオ)

 原 題  安陽嬰児

 英 題  The Orphan of Anyang

 出 演  孫桂林  祝 捷  岳森誼






<あらすじ>
大崗はリストラに遭い経済的に逼迫していた。そんなとき、屋台の主人から、食事を作っている間捨て子を抱いていてくれと頼まれる。大崗は乳児の服の中に、ポケットベル番号と月200元の養育費支払いの約束を記したメモを発見。自分が乳児を引き取る決心をする。乳児の母親は艶麗という売春婦だった。月一回の養育費受け渡しを繰り返すうちに、2人の距離は近づいていく。乳児の父親は四徳という黒社会のボス。余命わずかと知った彼は、わが子を引き取りたいと考え、艶麗のもとを訪ねる。


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星空

20100515

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 著 者: 幾米(ジミー)〔台湾〕

 出 版: 2010年1月(初版は2009年5月)

 言 語: 繁体字中国語
 
 英 題: The Starry Starry Night

 出 版: 大塊文化出版股份有限公司(台湾)







<あらすじ>
主人公の「私」になったつもりで書いてみました。想像を交えています。
以下は完全なネタばれです。

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躱進世界的角落

20100514

  著 者:幾米(ジミー)〔台湾〕

  出 版:2009年12月(初版は2008年9月)

  言 語:繁体字中国語

  英 題:How to Own a Corner

  出 版:大塊文化出版股份有限公司(台湾)







<内容・感想など>
タイトルから内容を想像してみる。
ええっ、“世界の片隅にかくれんぼ”~?
まさかお子ちゃまの夜逃げではあるまいな~
子供が親に黙って汽車やバスを乗り継いで
見知らぬ土地へ行ってしまうお話?
飛躍しすぎかと思いつつ読み始めたが、
あながち間違いでもなさそうだ。
ここでの「世界」は子ども自身の心の中。
まず、ひねくれ小僧っぽい男の子がぶつぶつ言いながら
階段を上がっていく。
すると突如タイムマシンの入り口みたいな穴に吸い込まれる。
次の瞬間視界は真っ暗に。見返し2ページが黒一色なんて、
初めてだ。
そして突然視界が開ける。以降、それぞれのページに、
それぞれの子供たちの世界が映し出されていく。

今回の作品は、色彩のインパクトが強烈だ。
敷き詰められた若葉。黄緑に彩られた草地、藍色の中に
ぼうっと光るオレンジ色、
真っ赤な背景ににょきにょき伸びる花、深緑色のトンネルのような世界、
真っ暗な中に浮かび上がる隕石…。
前半は明るい色彩で鮮やかに、後半は暗い色調で幻想的に、物語は進む。
子供たちについては、数回登場する子もいれば、一回だけの子もいて、
主人公ははっきりしない。
でもいろいろなことをつぶやく男の子が中心のようだ。
また、海と陸を隔てる壁に沿って歩く女の子も気になる存在である。

自分の世界は、夢の中、読書、映画鑑賞など、人それぞれだと、
その男の子は言う。
それなら、大人の私もしょっちゅうその世界に入っているではないか。
ブログを書いている今が、まさに夢の中だわ。
(タイトルが「夢の国」だもんね。)
大人なら現実逃避と言われそうだが、逃避してしばらく
自由で楽しい時間を過ごすのは大事なこと。
登場するのは子どもだけだが、彼らの世界には大人の自分も
行ってみたいものだ。

裏表紙の後書きで、ジミー氏はこう述べている。
「自分の心には子供が一人いる」
そしてその子の呼称は「她」である。
やはり娘さんを念頭においているのだろうか。
登場人物は可愛く描かれているわけではない。
かなり突き放した見方をされている。
わが子と距離を置く観察眼は、作家として必要なのかもしれない。

話は変わって。
遠い遠い昔の夢。舞台でスポットライトを浴びて煌々と輝く、
巨大なチョコレート。
その壁面には某菓子メーカーを示すローマ字が深く掘り込まれてある。
幼い私は、その物体をただ見上げるだけで、食べたくても手が届かない。
ジミーさん、いつかこの光景を描いてくださいませ~

Over the Wind オーバー・ザ・ウィンド

20100512

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著 者: 川島 誠 川西 蘭
     小路幸也 須藤靖貴 
     誉田哲也 松樹剛史

出版社: ジャイブ

刊 行: 2009年4月







<内 容>
6人の作家による「青春スポーツ小説アンソロジー」。

松樹剛史『競馬場のメサイア』
山辺<ヤマノベ>啓は父と二人暮らし。サッカーのスポーツ推薦で入った高校を退学後、コンビニでアルバイトをしている。そんなある日公園でジョギングする女性と会う。彼女の名は新川奈津。騎手である。腕の骨折が完治するまでトレーニングをすると言う。

小路幸也『peacemakerピースメーカー サウンド・オブ・サイレンス』
林田良平は赤星中学の放送部員。6歳上の姉も同じ放送部所属で「ピースメーカー」と呼ばれた伝説的人物である。良平にとっては自慢の姉だ。あるとき剣道部の実力者2人が八百長をするのではないかという噂が立つ。

須藤靖貴『アップセット』
真佐夫は大学の社会福祉学部3年生。所属するアメリカンフットボール部がオフの現在、市の児童相談所で実習をしている。その実習とは小学生の優毅とのキャッチボール。真佐夫は、家庭訪問で優毅が家で大事にされていないことを知る。2人はだんだん親しくなり、真佐夫は自分の試合に優毅を誘うのだが・・・。

川島 誠『ないしょだよ』
中学生の浅田がまだ幼かった頃の話。彼は父母と建設現場の宿舎に住んでいた。そこに出入りする様々な大人に可愛がってもらったが、特に印象に残っているのはバスケットボールを教えてくれたリョウちゃんだった。

誉田哲也『見守ることしかできなくて』
小学校4年生のとき「俺」はフィギュアスケーターのユウナに恋をする。きっかけは、無理やり通わされた短期スケート教室で、彼女が靴を借りてくれたことだった。翌年も「俺」は彼女に会えるものと期待したが、彼女は別の練習場に移ったと知りガックリ。しかし何と、中学生になって学校で再会する。

川西 蘭『ワンデイレース』
南雲真一は3ヶ月ぶりに自転車に乗った。高校最後のレースが終わってからは受験勉強に専念していたが、急遽祖父から自転車大会の運営を依頼されたのである。その大会とは「金剛ヶ峯自転車ロードレース大会」。スポンサーが降りたため南雲学院の自転車部が中心となって開かれることになる。

<感想など>
印象に残った3編について。

最後の『ワンデイレース』を最初に読んだ。これは『セカンド・ウィンドⅡ』の「その後」である。キャプテンだった南雲真一は引退して、溝口洋が新キャプテンになっている。そうか。溝口君、スランプを脱した後チームの要になったのね!「Ⅱ」では厳しい環境で切磋琢磨する者たちが中心だったが、今回は運営側の気持ち、さらに勝負を超えた心境が描かれており、爽やかな読後感だった。今回の南雲真一は最後、表向きはかっこ悪い。だからこそカッコイイ。矛盾するがそれが正直な感想。

『ないしょだよ』のラストでは驚愕すると同時にいたたまれなくなった。バスケットボールを教えてくれ、尊敬もしていたリョウちゃん。なのに…。リョウちゃんのとびきりの笑顔って、結局は裏切りの象徴ではないか!!
口語体で全体的に短い文なので、さらりと読めてしまう。でもラストはさらりとはいかない。幼児の目から見たその光景は無機的で、そのことが限りなく悲しいものに思えてならなかった。

『見守ることしかできなくて』は切ない。なぜ見守ることしかできないのだろう、なんて、最初は考えもしなかった。途中までは、手の届かないマドンナを求めるようなものだと、主人公が滑稽に見えた。しかしインタビューでのユウナの言葉にびっくりして、前を読み返した。するとこんな一文が。「幸い、家族は無事だったけど―」気にも留めなかったこの一言が重い。へらへらした口調が悲しみを倍増させる。

アンソロジーは、作家との出会いの場でもある。
新たな出会いを楽しみに、ほかのアンソロジーも読んでみたい。

神去(かむさり)なあなあ日常

20100511

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著 者: 三浦しをん

出版社: 徳間書店

刊 行: 2009年5月









<あらすじ>
平野勇気は高校を卒業する頃になっても進路が決まらない。そんな彼のために、担任の先生が強引に研修先を決め、母親も本人に相談なく荷物を送ってしまった。勇気はわけがわからないまま、生まれ育った横浜を離れ、三重県の山奥、神去村に行くこととなる。携帯電話も使えず、遊ぶところもなく、最初は辛いことばかり。脱走を試みたがあえなく失敗。しかし受け入れ先の中村林業の人々や村人たちと過ごすうちに、山の仕事や環境に、だんだん慣れ親しんでいく。

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幾米故事的開始

20100509

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著 者:幾米(ジミー)〔台湾〕
出 版:2009年9月(初版は2008年2月)
言 語:繁体字中国語
出 版:大塊文化出版股份有限公司(台湾)

<内容・感想など>
副題は「創作10年特別企画」。絵本作家ジミーの生い立ちや関係者の言葉、創作活動10年の軌跡が綴られた本。自伝、随筆、評論的要素が強いが、ほとんどのページに絵が添えてあるので、画文集のジャンルに分類した。表紙は、アトリエで制作に集中する横顔と、3匹の白兎が組み込まれた図柄。真摯な姿に遊び心が見え、好奇心をそそられる。

まずジミー氏が絵本作家として活動する前の履歴が語られる。幼い頃から描くことが好きで美術系の大学に進学。卒業後は広告会社に勤務し、やがて独立。挿絵画家として仕事を始めたとのこと。これだけ読むと、夢を叶え順調な人生を歩んでいるように思える。しかし突如襲いかかった病魔が、ジミー氏の人生を大きく変える。私が目にした絵本はすべて、闘病を経た40歳以降に描かれた作品であることがわかった。

各作品の解説を読んでようやく、以前不思議に感じていたことの謎が解け、理解がより深まった気がした。例えば『微笑む魚』で男性が空にぽっかり浮いている絵。魚になったのか?ならばどうしてなのか?という疑問は今まで置き去りのままだった。ジミー氏は白血病で無菌室に隔離されていたときの自分を水槽の魚に重ね、最後大海に放された状況を描いたのだという。

死の恐怖と闘った経験が新たな発想、発見をもたらし、創作意欲が高まったとのこと。もし病気にかからなければ、全く違う作風になっていたかもしれない。運命、人生の転機というものを、あらためて考えさせられた。

ジミー氏は大人が楽しめる絵本を念頭に創作しているのだという。人々がたくさん描かれている絵には、必ずといっていいほど、これまで発表した作品に登場するキャラクターが隠れている。そうした緻密な絵を描くのはたいへんだろうという意見に対しては、そんな遊びが好きだから、と返す。読者を楽しませることを喜ぶ、作者の姿勢を感じた一言だった。

『向左走・向右走』の解説では、主人公たちの行動範囲を示す地図が紹介されている。左に向かう彼女の動線は赤の矢印で、右に向かう彼の動線は緑の矢印で示され、アパートを中心に彼らが立ち寄った場所が描かれている。この地図を見るだけで物語がよみがえってきた。互いにこんな近くにいながら会えなかった偶然が面白い。雨水で電話番号がにじんだメモについては、実際に数字を書いた紙をぬらして実験を繰り返したとのこと。作者の緻密な計算が読者を楽しませてくれている、と思うと、ますますその「計算」に興味がわいてくる。

ジミー作品が好きな理由の一つとして「上から目線ではない」ことが挙げられる。最近読んだ『我的錯都是大人的錯』は反省を促す内容だったが、上から言われている感覚はない。登場人物の女の子による鋭い指摘は、彼女自身の素朴な疑問や率直な感想である。命令ではないからすんなり受け入れられるのかもしれない。ちなみにこの作品には娘さんの気持ちが反映されているとのこと。今度読んだらまた別の見方ができるかもしれないと思った。

最後のQ&Aには、絵本作家ジミーをより知るためのキーワードが散りばめられている。おそらく超多忙の日々を過ごしているのだろう。市場を意識せざるを得ない創作では、プレッシャーもあるようだ。健康に気をつけ、マイペースで、創作を続けていただきたい。

セカンドウィンドⅡ

20100507

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著 者: 川西 蘭

出版社: ジャイブ株式会社
     (ピュアフル文庫)

刊行年: 2009年1月








<あらすじ>
溝口洋は南雲学院高等部の自転車部員。寮では運動部生とエリートクラス生との同室と決まっている。一年時のルームメイト浅月翠が海外に転校した後、後藤という気難しい生徒が入ってきて、気苦労が増える。洋は金剛ヶ峯自転車ロードレースで南雲真一が怪我したことがトラウマとなり、スランプに陥っていた。洋はこれまではロードの主力選手として練習していたが、コーチからサポート役を命じられ、悶々とした日々を送る。

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ウイグルからきた少年

20100505

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2008年/日本・ロシア・カザフスタン/1時間5分(レンタルDVD)
監 督  佐野伸寿
出 演  ラスール・ウルミリャロフ  カエサル・ドイセハノフ
     アナスタシア・ビルツォーバ

<あらすじ>
ウイグル族のアユブ(ラスール・ウルミリャロフ)は、中国で逮捕された母親と別れ、カザフスタンに逃れてきた。彼は建設途中でうち捨てられた建物で、カザフの少年カエサル(カエサル・ドイセハノフ)、ロシアの少女マーシャ(アナスタシア・ビルツォーバ)と共同生活をおくっている。建物の管理者だという男は、少年たちが稼ぐわずかな金を、光熱費としてとりたてていた。ある日男はアユブをウズベキスタンへ連れて行き「逮捕された母を捜す」と言う。しかしアユブを待ち構えていたのは軍事訓練の日々だった。

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孤高のメス ― 神の手にあらず ―

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著 者: 大鐘稔彦
出版社: 幻冬舎文庫
刊行年: 2009年

<あらすじ>
『孤高のメス ― 外科医 当麻鉄彦 ―』の続編。
当麻鉄彦は甦生記念病院を辞した後、台湾の高雄博愛医院で再び外科医として働くことになった。元同僚の矢野も当麻を追って訪台。2人は徐々に台湾の習慣に慣れ、病院に不可欠な存在となっていく。一方、甦生記念病院では医師不足の上、後任の外科医、荒井の評判が悪く、経営危機に陥っていた。
大川翔子が台湾を訪れる。翔子の当麻に対する気持ちは変わらず、当麻も翔子への想いを募らせる。そんな中、肝移植で一命をとりとめた大川に拒絶反応が出て台湾に来る。ドナーとして翔子が候補に挙がるが、彼女はドナーになれない状況であることが判明する。

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孤高のメス ― 外科医 当麻鉄彦 ―

20100503

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著 者: 大鐘稔彦
出版社: 栄光出版社
刊行年: 2005年1月

<あらすじ>
甦生記念病院の外科医当麻鉄彦は、名門医大を卒業後東京やピッツバーグなどで腕を磨いた経歴を持つ。優れた手技や温厚な性格から、彼は同僚や患者から大きな信頼を得ていた。近隣地域の近江大医学部助教授実川からは、生体肝移植手術の共同執刀を依頼され、これを承諾、見事な手術をする。結局移植を受けた乳児は死去、実川はバッシングを受けるが教授に昇進する。
町長の大川が甦生記念病院に担ぎ込まれる。当麻は、患者は肝移植によってしか助からないと、院長の島田に手術を打診する。島田は大川の再出馬を希望する立場から、自病院での肝移植を承諾、秘密裏に工作を進める。


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プロフィール

孔雀の森

Author:孔雀の森
いろいろな出会いを
大切に♪

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