海堂 尊『外科医 須磨久善』

出版社:講談社
刊行年:2009年7月
<内容・感想など>
心臓外科医、須磨久善氏の半生をたどった評伝である。
文章には、海堂氏の須磨氏に対する熱烈な思いが込められており、読み終わったときには
自然に須磨氏への尊敬の念が植えつけられていた。
須磨久善氏は日本で初めてバチスタ手術を手がけた人物であるという。
第一部では、「心臓外科医、須磨久善の旅」と題して、1992年41歳当時のブリュッセルに
おける公開手術に始まり、時代を前後しながら、医療にかける氏の熱意をありのままに
描いている。
海堂氏の須磨氏に対するインタビューをもとにしているというが、面白いのは、
著者である海堂氏がほとんど須磨氏になりきっているところだ。
「須磨は…と考えた」などと、実在の人物を小説の主人公に置き換えた表現方法を
とっている。
これまでの作風に慣れているからか、あたかもその主人公が海堂氏本人のように
思えてくるのである。
作者が須磨氏に惚れ抜いていることの表れとも言えるだろう。
第二部「解題 バラードを歌うように」では、海堂氏原作の映画『チーム・バチスタの栄光』の
監修を引き受けてくれた須磨氏への感謝の気持ち、さらに映画でのエピソードが
語られる。
桐生役の吉川晃司が役柄に真摯に取り組み、手術シーン(特に外科結紮<けっさく>)の
勉強を重ねた様子などが興味深かった。
原作も読み、映画の出演者も知っているので何となく観た気になっていたが、
まだ鑑賞していないことに気づいた。(笑)
やはりいつか観よう。
字が大きく、文体も歯切れよく、読みやすい一冊。
眼鏡をかけた丸顔の須磨氏は、柔らかな微笑みが魅力的だ。
ますますのご活躍を!!

