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香港の星

20140331

xianggangzhixing.jpg

1962年/日本/1時間49分(TV鑑賞)
監 督  千葉泰樹
中文題  香港之星
英 題  Star of Hong Kong
出 演
宝田明 尤敏(ユー・ミン) 草笛光子
団令子 林冲(リン・チョン) 王引(ワン・イン)
藤木悠 小泉博 加東大介 山村聡

<あらすじ>
商社マンの長谷川(宝田明)は、香港から日本に向かう機内で、ラジオの修理を仲介した女性と隣席になる。彼女は日本に留学している医大生星璉(尤敏)。その後、故郷の北海道で2人は偶然再会。行動を共にするうちに、互いにかけがえのない存在となる。しかし星璉は、同郷の張英明(林冲)から学業面を厳しく叱責され、考え抜いた末、長谷川との別れを決意する。また、親友可那子(団令子)の長谷川への想いを知り、香港に駐在している彼に会うよう勧めるのだった。

<感想など>
宝田明と尤敏が共演する3部作が続きものだと思っていたが、それぞれ設定の違う物語であるとわかった。先日観た「ホノルル・東京・香港」は明るさに満ちていたが、本作はややメロドラマ調。しかし登場人物の互いを思いやる気持ちが温かく、後味は悪くない。

不思議なことに、鑑賞後すぐあらすじを忘れてしまう場合が多いのに、このシリーズはいつまでも頭の中に残っている。時系列が一貫しているからだろうか。また、各人物の気持ちがよくわかるのもうれしい。

長谷川、星璉のゴールデン・コンビに、長谷川に恋する可那子と、彼の気を引くホステスの早苗(草笛光子)が絡むが、みんな自分の気持ちをはっきりと言い、歯切れがいい。見ている方もわかりやすくて気持ちいい。星璉を演じる尤敏は日本語の台詞が多いが、よどみなく丁寧だ。嘘をついて可那子に長谷川を譲ろうとするが、そのぎこちなさにも好感度大!

香港、日本(東京と北海道)、シンガポールの観光案内も兼ねた内容で、どこも行ってみたくなるような風景ばかり。半世紀前の作品であることを忘れて現代のつもりで観ていた。尤敏演じる星璉が今突然現れても、頭を覆うスカーフ以外は、違和感はないかも知れない。そう思えるほど洗練されたいでたちだった。

次はシリーズ最初の「香港の夜」。ハッピーエンドになるストーリーを願っているのですが…。

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ケンとメリー 雨あがりの夜空に

20140214

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2013年/日本/1時間27分(劇場で鑑賞)
監 督  深作健太
出 演  竹中直人  胡 兵(フー・ビン)
     北乃きい  ジザン・ラジャ・ワーワク
     メンディ・チョン・イエ・ミン

<あらすじ>
片倉健(竹中直人)は商用でストッキングのサンプルを携えマレーシアに向かう。しかし激しい嵐のため、飛行機は目的地クアラルンプールからかなり離れた小さな空港に到着。彼は右往左往した上、スリに財布を盗まれ途方にくれる。そんなとき龍の装飾華やかな大型トラックに助けられる。運転手はメリー(胡兵)と名乗る中国人青年。健は仕事のほかに、娘ゆかり(北乃きい)の結婚式に出席する予定もあり急いでいた。健はトラック<小龍:シャオロン>の助手席に乗り、メリーと共にクアラルンプールに向けて出発する。

<感想など>(ラストに関するネタバレを含みます)
「ケンとメリー」といえばスカイライン! けれども目の前に現れたのは真っ赤な龍が躍るデコトラだった。挿入歌はRCサクセションの「雨あがりの夜空に」。そしてケンが度々問いかける「愛しあってるかい?」には思わず「愛しあってるよ~」と答えていた。(笑)懐かしさの中に意表を突くおかしさとホロリとする場面が入りまじった87分。意外に短い。

サイトを見ると、昨年11月から公開されていたそうだが全くのノーチェック。今回近場の劇場の情報を何気なく見て知った次第。もっと宣伝してくれてもいいのに。胡兵も北乃きいも、中国語講座でおなじみの役者さんだから、そちら方面に注意していたら気づいたかも。

竹中直人演じる健は、妻の死後男手ひとつで愛娘ゆかりを育ててきた。その娘が日本語教師として働くマレーシアで結婚すると聞かされるが、相手のことは何も知らない。娘は「来るな」と言うが親心としては花嫁姿をどうしても見たい。彼は仕事にかこつけてマレーシアに降り立つ。さて花婿はいったい誰なのだろう。キャストを見ればたぶんメリーだ、と想像が働くが、それではあまりにも話ができすぎている。それに、ゆかりの同僚男性(ジザン・ラジャ・ワーワク)の方が、花婿らしく見える。ではメリーとはいったい何者?

マレーシアが舞台のロードムービー。目的地にたどり着くまでの珍道中で、ケンとメリーは反発し合いながらも絆を深めていく。ケンの仕事、家族に対する思いや、メリーの過去に対するけじめなど、二人の真摯な気持ちが垣間見える「ドライブ」である。だんだん、昔見た「ケンとメリー」の影が薄くなっていく。終盤では二人がすっかり父子らしくなって(笑)、彼らこそが「ケンとメリー」であると、頭の中に固定した。

竹中直人の演技は想像内だったが、胡兵は予想外。ひょうひょうとしていて、竹中直人との掛け合いでは、絶妙な間合いが素晴らしい。日本語をかなり理解した上での、すっとぼけた表現なのだろう。この人の「ごめんちゃい」が頭に残って離れない。(笑)

あとで竹中直人の故・忌野清志郎にあてた弔辞を読んだら、じわりときてしまった。私たちが楽しんだ台詞や表現はすべて、雨あがりの夜空にとどいていることだろう。そういうことを考えて再鑑賞したら、今度は笑いどころで泣いてしまうかもしれない。

さて、最後に「続」の一文字。これは続編アリを意味している?北乃きい演じるゆかりが、ほんとうは玉の輿だった、ということがさらりと語られていることから、今度はそちら方面のいざこざが起きる予感。是非続編を!


燦燦 -さんさん-

20140130

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2013年/日本/1時間21分(劇場で鑑賞)
監 督  外山文治
出 演
吉行和子  宝田明  山本學
田川可奈美  宮田道代  田内一子
都村敏子  竹居正武  遠山陽一

<あらすじ>
鶴本たゑ(吉行和子)は今年77歳。ショーウインドーの中のウエディングドレスを見ているうちに婚活を思い立ち、相談所の門をたたく。長年介護した夫を見送ってから7年。何か物足りなさを感じる日々を過ごしてきた。彼女は、職員の橘(田川可奈美)の仲介で数人の男性とお見合いをする中、離婚経験があるという能勢雄一郎(山本學)と意気投合、デートをするまでになる。そんなたゑを、幼なじみの森口慎二(宝田明)は苦々しい思いで眺めていた。病院長を務める彼は、たゑの亡き夫の親友で、地域の交流会燦燦会の会長である。彼女が燦燦会をたびたび欠席し、イケメン男性と会っているのが面白くないのだ。

<感想など>(ラストに関するネタばれを含みます)
笑って、じんわりきて、また笑って、の繰り返しで、感情をゆさぶられた81分。登場人物の一言一言が胸にしみ入る。その一つが「人生は毎日がスタートライン」。主人公たゑの、かみしめるような言葉がいい。私も若い頃はしょっちゅう「今日から始めよう」と思ったものだが、最近はそれもずいぶん少なくなった。スタートするのが億劫になるのだ。おっといけない、私はまだまだ、たゑさんの子どもほどの年齢である。

結婚相談所の若い職員がたゑを好意的な目で見ているように、私も彼女の人間性に惹かれ、幸せになってほしいと心から願っていた。そして物語も当然ハッピーエンドになるものと思っていた。実際、観る人によってはこの「ハッピーエンド」に安心するかもしれない。

でも物語をよ~く思い出してみよう。彼女は自分の身の振り方について結論を出しただろうか。お相手は素晴らしい。彼と一緒なら充実した人生を送れそうだ。それに究極のあの言葉。あの状況なら「ハイ、お受けします」と言うしかない。彼女も当然そう言うはず、というのが大方の見方だろう。けれども返事の一歩手前で話は終わっている。

そもそも、生きがい、充実感、幸せといった前向きな気持ちはどんな状況から生まれるのだろう。たゑは婚活の間に、表情もしぐさもどんどん変わっていった。よりよく生きるための努力が、人をこうも変えるのだということを証明してくれている。彼女だけでなく、周りにもその空気が波及し、ある者は家庭内のことをしばし忘れ、またある者は思いがけない本心に気づかされる。さらにたゑの「応援団」がにわか仕立てで結成される。景色でも同じことが言える。たゑの眼を通して映し出される東京タワーは、まるで彼女の心をうたうかのように煌めいていた。こういう経緯がまるでお祭りみたいに、生き生きと描かれている。

けれどもお祭りは長くは続かない。華やいだ時間の後に落胆の時が待っていた。そしてその後に…。短い婚活期間が、まるで山あり谷ありの人生模様のように描かれている。

この山と谷、実は終わってほしくなかった。近い将来おとずれるであろう「ハッピーエンド」より、この起伏の過程こそ、作品の意図するところなのだろう。最初にウエディングドレスを見せておきながら彼女にそれを着せないとは…。観客の期待を先延ばしする、この匙加減が絶妙だ。

さあ、今日からでもすぐに、やりたいことを始めよう!!!と、前向きにさせてくれる物語だった。で、何を始めるかというと、「ごちそうさん」のぬか床ファンでもある私は、まず吉行和子さんの出演作を古い順に観よう、と考えていたのだった。(これは覚悟して始めることではないのだけれど:笑)


台湾アイデンティティー

20130812

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2013年/日本/1時間42分(劇場で鑑賞)
監 督  酒井充子
出 演  高菊花さん
     黄茂己さん
     鄭茂李さん
     呉正男さん
     張幹男さん
     宮原永治さん

<内容・感想など>
2009年の同監督『台湾人生』の続編ともいえる作品。あらためて日本が台湾を統治していた時代を年表で確認してみると、1895年(明治28年)から1945年(昭和20年)までの、ほぼ半世紀だったことがわかる。今回登場しているのは、1922年から1932年の間に生まれた、80代から90代の方々。日本人として生活し、日本兵として戦ったが、ある日を境に日本人ではなくなった人々だ。さらに国民党の抑圧、白色テロと、苦難の人生が続く。

登場する方々は、それぞれ台湾、日本、インドネシアと、住む地域を異にし、境遇も異なる。しかしアイデンティティーを語る胸の内が苦渋に満ちていることは共通していると思う。かつて『台湾人生』で「棄てられた」ことへの憤りを思い切りぶつける方々がいたように、今回の皆さんも、そういう気持ちを持っているに違いない。しかしそれぞれが、カメラを前に、そういう激しさを心の奥に秘めつつ、自分自身を肯定しながら生きてきたようにも見える。

妹さんとともに出演した高菊花さんは、白色テロでお父さんを亡くし、さらにうその自白証書に署名させられるなど、その人生は苦労の連続である。しかし力強い口調で語られるのは、「苦難があったからこその充実した人生」という限りなく前向きな姿勢だった。

横浜在住の呉正男さんは、北朝鮮で敗戦、中央アジアで抑留生活を経て、恩人の住む日本に行く。当時の台湾は白色テロの時代で帰国できなかったとのこと。日本の大学を出て日本で就職し日本の伝統行事に参加している呉さんだが、帰化申請は受理されない。そんな理不尽を、呉さんは笑い飛ばしているかのようだ。実際には複雑な思いがあるに違いないが、それらを受け流すようなしなやかさを見ると、雲の彼方の偉大な人物に思えてくる。

ガイドの会社を立ち上げた張幹男さんは、反乱罪で火焼島の収容所で8年を過ごしたという。国民党の圧政に対して怒りをあらわにする張さんは、台湾自体の独立を強く主張、その訴えかける口調には圧倒される。台湾内外を問わず、政治に関心のない人々への警鐘に聞こえた。

登場する皆さんの流暢な日本語の合間に、監督の問いやうなずきが流れていく。話を引き出す、というよりは、身内の立場だったり、あるいは異国の何も知らない世代だったりと、距離感を微妙に調整しながらの姿勢に感じられた。一貫しているのは苦労を重ねた年長者に対する、限りない敬服の気持ちだと思う。

観終わった今も、各方々の力強い言葉と、決意を秘めた表情、そしてあふれ出る涙などが次々と頭に浮かんでくる。まだまだ勉強が足りない、知るべきことは山ほどあるのだと、謙虚な気持ちにさせてくれる作品だった。

県庁おもてなし課

20130526

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2013年/日本/2時間3分(劇場で鑑賞)
監 督  三宅喜重
原 作  有川浩『県庁おもてなし課』
出 演  錦戸亮 堀北真希 関めぐみ
     甲本雅裕 高良健吾 船越英一郎

<あらすじ>
高知県庁職員の掛水(錦戸亮)は、観光促進目的に設立された「おもてなし課」に配属される。手始めに行ったのが、高知県出身の著名人に観光特使を依頼することだった。それから1か月ほどたったある日、依頼した作家吉門(高良健吾)から役所感覚を批判され、掛水は大いに反省する。彼の助言をもとに、掛水はアルバイトの明神(堀北真希)をスタッフとして呼び、観光コンサルタントの高遠(船越英一郎)に会いに行く。ところが彼が経営する民宿の前で、高遠の娘佐和(関めぐみ)からいきなり水を掛けられてしまう。

<感想など>
原作を読んだときは、映画化など予想もしなかった。地方公共団体の事情や、地域活性化へのプロセス、そしてある家族の問題がそれぞれ複雑で、短時間で説明しきれる内容には思えなかったからだ。映画化の話を聞いて真っ先に思ったのは、恋愛主体の物語。そして肝心な話題が説明不足になりはしないか…と不安に。今思えばそれは的中したことになる。

とはいっても、役者たちの演技には魅了され、最後まで存分に楽しめた。特に、熱い語り口の船越英一郎、飄々とした中に切なさを感じさせる高良健吾がいい。錦戸亮と堀北真希には、恋愛ごっこかよ!と突っ込みたくなったが、原作の読後感でも同様だったと思う。あのまま二人雛壇に並んだらお内裏様とお雛様になってしまいそう。(笑)こんな爽やかカップル(未満だが)と対極にあるのが、複雑な背景を抱えた吉門と佐和。それぞれのキャラクターが際立っていて、飽きさせない。

全体的に見れば、高知へ行きたい気持ちを掻き立ててくれ、ピュアな恋愛、切ない恋愛の場面に胸キュンとなって、後味のいい作品と言えるだろう。ただ、原作の持っていた社会派的側面が二の次となり、高遠のいきさつや吉門が高知に「帰ってくる」までの過程が駆け足になってしまったことが、原作を楽しんだ者としては残念だった。映画よりは、連続ドラマ向きの内容だと思う。

次々と作品が映像化されている有川さん。今度スクリーン上でお目にかかれるのはどの作品だろう。個人的には『植物図鑑』に期待!!

図書館戦争

20130507

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2013年/日本/2時間8分(劇場で鑑賞)
監 督  佐藤信介
原 作  有川浩『図書館戦争』
出 演  岡田准一 榮倉奈々 田中圭
     栗山千明 福士蒼汰 橋本じゅん
     西田尚美 石坂浩二 鈴木一真
     
<あらすじ>
正化31年。笠原郁(榮倉奈々)は晴れて図書隊に入隊する。彼女は高校時代、検閲執行部隊に奪われそうになった本を取り戻してくれた図書隊員を「王子様」と称し、目標としてきたのだった。ところが訓練では教官堂上篤(岡田准一)の厳しさに音を上げ、つい親友の柴崎麻子(栗山千明)に愚痴ってしまう。そんなある日、小田原の情報歴史図書館の閉館にともない、蔵書すべてを関東図書隊が引き継ぐことになる。移管の日にはメディア良化委員会との衝突が必至だ。郁は図書基地司令である仁科巌(石坂浩二)の護衛を命じられる。

<感想など>
初めて原作タイトルを見たときは、図書館と戦争…何てミスマッチなの…と思ったものだが、読み始めたらはまりにはまった。それ以降、続編が出るたびに飛びつき、実写作品を想定した配役をあれこれ考えて遊んだりもした。でも岡田准一と榮倉奈々は思いつかなかったな。発表には大正解!と手を叩いてしまったが。(笑)

原作に入れ込むあまり映画に失望する場合が多いが、今回は違った。逆に原作を知っているからこそのお得感にニンマリ、なんてことも。本を前に、好きな台詞を声に出して読んだこともあって、よく覚えているのである。あ、これはあの場面…と、俳優のしゃべりから読書の追体験ができる。原作の台詞が生かされているのが嬉しい。

物語では、図書館や書店内での一般人を巻き込んだ暴力的な検閲、図書館内外での銃撃戦などなど、荒唐無稽な展開が続く。しかし一貫する屋台骨(=図書館の自由に関する宣言)があるからこそ、納得でき、惹きつけられるのだろう。もちろん、出演者の素晴らしいアクションの賜物でもある。

稲嶺役の故児玉清氏については、原作者有川氏の熱い想いからキャスティングが実現したとのこと。石坂浩二演じる仁科はオリジナルの人物で、稲嶺の遺志を継ぐ第一人者という設定だ。そんな裏話を知らなくても両者のツーショット写真には、胸を打つものがあった。堂上や小牧らが稲嶺や仁科を誇りとし、その堂上たちを郁や手塚が追う。そして、あの少年にとって、絵本を取り戻してくれた郁はかけがえのない存在となるだろう。目標とする人、誇れる人の有無が、その人の将来を左右する…と考えると、大人一人一人の責任はとてつもなく大きいと言える。我が身を振り返って考えさせられる作品だ。

話が進むにつれ、メディア良化委員会の強行を非日常だと思えなくなっていく。近未来の出来事とはいえ、現在危惧すべき状況だ、という警告に聞こえてくるのである。物語ながら、図書隊のメンバーには、どうか正しい方向に走り続けてほしいと、願わずにはいられない。

さていつものことながら、続編を期待してしまった。ツンデレのデレの割合がもっと増えてもいいのでは?と、乙女心がうずうずしてくるラストだった。(笑)

舟を編む

20130419

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2013年/日本/2時間13分(劇場で鑑賞)
監 督  石井裕也
原 作  三浦しをん『舟を編む』
出 演  松田龍平 宮﨑あおい 加藤 剛 小林 薫
     オダギリジョー 池脇千鶴 渡辺美佐子
     八千草薫 伊佐山ひろ子 黒木 華

<あらすじ>
玄武書房辞書編集部では、定年間近の荒木(小林薫)にかわる編集者を探していた。そんな時、営業部で変人扱いされている馬締(まじめ)光也(松田龍平)に白羽の矢が立つ。言語学専攻で言葉に執着する彼はたちまち、辞書「大渡海」編纂に夢中になる。私生活では下宿の大家、タケおばあさん(渡辺美佐子)の孫娘香具矢(宮﨑あおい)に恋をするがうまく思いを伝えることができない。彼は先輩の西岡(オダギリジョー)に指南を仰ぐ。

<感想など>
「マジメって、面白い」がキャッチフレーズのような本作は、まさに、真面目に生きる人々への応援歌。
主人公馬締光也は、頭のてっぺんから足の先まで「真面目」で塗り固められたようなキャラクター。本領発揮の場面ではその性格が功を奏す。
真面目な面をからかわれるのがイヤで、本性を隠してチャラチャラやっている人もいるだろう。そういう人は是非、馬締光也の姿から、真面目な人は尊敬される存在であることを認識し、自分のキャラに自信を持つべし!!世渡り上手の西岡がかなわないと思うのは、馬締光也のぶれない姿勢なのだと思う。

「マジメってかっこいい」のフレーズも、終わってみるとよくわかる。
鑑賞前新聞で「猫背の彼がかっこいい」という内容の評論を読み、どんなふうにカッコいいのかを楽しみにしていた。まあ、松田龍平だし、何やってもカッコいいからね~、なんて軽く考えていたが、あれれ、序盤の馬締は全然輝いていない。しかしひたすら突き進むようになってからは、背中の丸みにちょっと張りが出てきた気がする。

そんな彼に触発されたチームの面々も愛すべき人たちだ。特に西岡。自分には馬締のような鋭い言語感覚がないと感じた彼は、別の道で「大渡海」出版にこぎつけようと、できることを精一杯やる。辞書編纂とは、個人のコツコツ続ける作業が大半であると思っていたが、チームワークも重要なのだと知った。馬締と西岡のやりとりはボケとツッコミのお笑い寸劇のよう。互いの長所短所を知り尽くしているからこそのかけあいは、間の取り合いが絶妙で、笑って泣けた。

馬締は時を経て、辞書編集部の中心的人物となり、顔がグンと引き締まる。でも奥さんとの距離感は以前と変わらない。それは、出会ったときから互いを尊重する姿勢なのだと思う。朝出勤する時の背筋が前より幾分伸びているように見えた。

ファッション誌の部門から移ってきた岸部(黒木華)の変わっていく様子も興味深い。整理上手な面を、馬締から褒められたことがきっかけで、優秀な編集者へと成長する。それと同時に、人材育成に貢献する馬締の、新たな才能も発見。大渡海出版に向けた執念が、さまざまな能力を開花させたと思うと、大きな目標がいかに大切であるかを、ひしひしと感じるのである。一つの能力は、ほかの能力を生み出す原動力でもあるのだな、と。

あっという間に観終わった感覚だったが、何と133分の長尺であると、これを書いていて知った。きっと、台詞の一つ一つに惹きこまれ、彼らと一緒に言葉の海を泳いでいたのだろう。泳ぎ切った(と言えるかどうかわからないが)今、爽快感に包まれている。

津軽百年食堂

20130309

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2011年/日本/1時間46分(TV鑑賞)
監 督  大森一樹
原 作  森沢明夫『津軽百年食堂』
出 演  藤森慎吾 中田敦彦(オリエンタルラジオ)
     福田沙紀 伊武雅刀 前田倫良 秋本博子
     藤吉久美子 永岡佑 ちすん
    
<あらすじ>
日露戦争後の弘前。大森賢治(中田敦彦)が始めた屋台の蕎麦屋は大盛況。だしに使う鰯の焼干しは戦争未亡人のトヨ(早織)から仕入れている。幼い娘のフキは賢治になついていた。

現代の東京。大森陽一(藤森慎吾)は大学卒業後、アルバイトで生計を立てている。ある日カメラマン助手、七海(福田沙紀)の機材を壊したことがきっかけでルームシェアすることになる。そんな中、陽一は父(伊武雅刀)の負傷を知らされ、すぐ弘前に帰郷、実家の蕎麦屋を手伝う。また七海は妻子ある師匠(大杉漣)との関係を清算する決心をして、帰郷する。

<感想など>
ご当地ものは気軽に楽しめるところは好きだが、反面、物足りないときもある。大団円やほのぼのとしたエンドにもっていくための無理な展開や、役者のぎこちない演技が、時として気になったりする。本作も例外ではない。でも手作り感が楽しめ、いつもなら突っ込む場面でもおとなしく観ていた。(笑)

100年前と現在を交互に映し出し、それぞれが少しずつ進展していく。題材は伝統的な蕎麦づくりにあるのだろうが、物語のメインはそれぞれの人間関係にあると思う。例えば、

・照れ屋の先代が意中の女性と一緒になるきっかけ。
・カメラマン真木(野村宏伸)が七海の母(手塚理美)に求婚した背景。
・陽一の友人、門田政宗(永岡佑)と藤川美月(ちすん)との距離が縮まっていく過程。

三組の男女の関係に大きく関係するのが子供だった。結果的には後押ししてくれたありがたい存在である。笑みの可愛い幼いフキと、父の口真似が上手な門田(もんでん)の息子には、明るい未来を感じるし、ようやく母の真意に気付いた七海からは、独立の意思がうかがえる。血筋とはまた別に、互いを大事にする気持ちがつながっていくところに、温かさを感じた。代々受け継がれてきた味というのは、人間のつながりでもあるのだな、とふと思った。

ところで、今になってやはり突っ込みたくなった。いきなりルームシェアを提案した彼と、即同意した彼女に対してだ。特に彼女。不倫して、失恋して、シェア相手が恋しくなったり、その彼に結婚の意思をほのめかしたりするとは、いったい何考えてんだよ!と。親の身になってみればたまらない。普段は観ながら身内を思うことなんかないのだが、すでに一人暮らしの娘と、近々都心に引っ越す予定の息子がいるものだから、ついリアルな目で見てしまった。

もう間もなく桜の季節。桜にはラブレターの意味があると言われると、桜を見る目も変わってきそうだ。

るろうに剣心

20120918

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2012年/日本/2時間14分(劇場で鑑賞)
監 督  大友啓史
原 作  和月伸宏『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』
アクション監督  谷垣健治
出 演  
佐藤健 吉川晃司 青木崇高 江口洋介 奥田瑛二
武井咲 香川照之 蒼井優 田中偉登 綾野剛
斎藤洋介 須藤元気

<あらすじ>
明治11年の東京。かつて人斬り抜刀斎と恐れられていた男、緋村剣心(佐藤健)は、今では逆刃刀(さかばとう:斬れない刀)を携え、不殺(殺さず)の誓いを胸に流浪を続ける身。そんな中、人斬り抜刀斎を名乗る者による連続暗殺事件が起きる。剣心はその場に遭遇した一人の少女を助け、彼女の家に居候することとなる。彼女の名は神谷薫(武井咲)。亡き父から継承した神谷道場を切り盛りしているが、その土地家屋を、武田観柳(香川照之)という実業家が狙っていた。

<感想など>
レディースディ、しかも連休最終日とあって、スクリーンは満席状態。斜め前の座高の高いお兄さんのせいで(これは劇場の作りのせいでもあるが)、画面の左3分の1が隠れてしまい、無理な体勢で観続けて疲れるのなんのって。その上お子ちゃまたちの「映画まだ終わらないの~?」という愚痴や、ばたばた出入りする足音などで、久々の劣悪環境を体験。それでも集中力が途切れなかったのは、やはり作品が性に合っていたからだろう。

るろ剣ファンの家族から借りた漫画の第一巻で予習していったのがよかった。もちろん原作と映画は違うけれど、人間関係の把握にはかなり役立った。佐藤健はまさにはまり役。のほほんとした雰囲気が、戦いとなると一変、漫画チックなまんまるおメメが、鋭い切っ先のようになる。アクションはもちろん、過去の苦しみを背負っているさまが全身にあふれ、惹き込まれた。

もう一つ嬉しい出会いがあった。原作キャラも大好きな喧嘩屋斬左(青木崇高)だ。強い相手と喧嘩したくてたまらず、結果的には手合わせした剣心と意気投合、共に悪に立ち向かう、という役柄である。正義感にあふれ、一直線。敵方との肉弾戦には時にコミカルな演出もあって、存分に楽しめた。

女性陣では、大人っぽい高荷恵(蒼井優)と子供っぽい神谷薫(武井咲)との対比が興味深かった。薫は恵を前にほのかな敵対心を抱き、恵はそれどころではない重大な秘密を抱えている。全く対照的なキャラクターだ。実は私は、剣心の十字の傷の片方を恵がつけたものと思い込み、その経緯がいつ解き明かされるのかと、心待ちにしていたのである。つまり、いいなずけを殺された女性が武田観柳と出会って…などと勝手なストーリーを考えていたのだった。

これを鑑賞後に、家族が録画したアニメ『追憶編』を観て、ようやく十字傷のいきさつが判明した。だがその中に出てくるキーマン巴が、ますます蒼井優と重なってみえてくるのだ。違う役柄だとわかっているのに、不思議だ。

話は「るろ剣」映画に戻る。吉川晃司演じる鵜堂刃衛との闘いが意外にあっさり終わってしまった、と感じるのは、中華系アクション映画の見過ぎだからか。(笑)あちらの作品なら、斬って斬って斬りまくり、たがいにヘロヘロになって、どちらかが(あるいは両方とも)壮絶な最期、となるのである。それを期待していたわけではないが、甘すぎるカレーを食している気分で、いささか物足りない。原作はなが~い漫画だし、このご時世であるから、あんまり壮絶だったらドン引きになるだろう。ま、これはこれでよかった、としよう。

ここで再び上記の『追憶編』について。このアニメは実によかった!!これを観てから映画に臨んだら、劇場で泣いてしまったかもしれない。(笑)剣心が師匠と出会った経緯や、暗殺稼業の中で生きる過程、そして映画の過去シーン、「死ねない」と言う男を斬った過程と、ある女性との出会い…。そんな諸々を背負って東京に出てきたんだな、と思うと、「おろ…」なんていうすっとぼけた台詞に、かえって涙してしまいそうだ。

今度はもっと静かな環境に身を置いて観賞したいものだ。(再鑑賞あり?)

オロ

20120818



2012年/日本/1時間48分(劇場で鑑賞)
監 督  岩佐寿弥
出 演  オロ  ワンチェン  ラモ・ツォ
     ダドゥン  ラモ・ドルマ  モゥモ・チェンガ
     ツエワン  岩佐寿弥

<あらすじ>
オロは6歳の時チベットから亡命し、今はインドのダラムサラで学ぶ。寄宿舎は、チベット亡命政府管理下の「チベットこども村」にある。保護者的立場にいるのは初対面だった叔父で、彼の生活や成績には厳しい。同級生のダドゥン、ラモ・ドルマ姉妹は彼のよき遊び仲間だ。彼女たちの父親は映画監督で、今は刑務所にいる。家計はパンを売る母親が支えている。
冬休みには監督、監督の友人ツエワンと共にネパールのポカラへ旅行した。10年前監督が撮った映画に出演したモゥモ・チェンガと、息子夫婦、3人の孫が彼らを温かく迎えてくれた。オロは辛い体験を話し始める。

<感想など>
出演者たちの制作側に対する信頼がうかがえる作品だった。本来NGとしてカットされるような、オロの読み間違うシーン、何度も階段を上り下りする様子など、生の制作現場も多く見せている。このように展開に変化を持たせているからか、最後まで集中が途切れなかった。

話の筋だけ追えば「一少年の過酷な体験記」と言えよう。しかしオロ少年の屈託のない笑顔には、こちらも自然に頬が緩む。オロの友達やその母親の生活も、苦しいに違いないが、彼女たちはポジティブで力強い。結果的には観る者が励まされ、彼らのことがどんどん好きになっていく。これは監督の気持ちでもあるのだろう。

その監督が、後半オロとともに旅に出る。白髪で温和なその人は、風景や人々にすっかりとけこんで、映画を撮っている人には見えないのである。バスの中で寄り添う二人はまるでおじいちゃんと孫のようだ。ネパールで出会う人々も、彼らと家族同然に接している。三姉妹がオロに辛い体験を語らせるところは、やや演出気味だったが、これも彼が今後生きていくための試練である思えば、肯定的にとらえることができる。互いの出会いが、未来に向けプラスに働いているように感じる展開だった。

いつもスタッフの動きを細かく観察しているのだろう。旅の途中、オロがカメラを覗き込んで監督になりきってはしゃぐ場面がある。また、棒を操ってカンフーの動作をまねる。照れながらの歌はなかなかうまい。彼の中に無限の将来が見えてくる。彼同様、どの子どもにも等しく未来は開けていなければならないのだと強く思う。

年長者である監督、モゥモ・チェンガに、オロは濃やかな気遣いを見せる。こんなふうに、彼は子どもらしい笑顔の奥に、時折大人の一面が顔をのぞかせる。彼がこれまで封印してきた幼かった日々を思い、胸が痛んだ。

ところで、オロ以上に印象に残るのが、映画監督を待ち続ける女性だった。夫の無実を主張する彼女の眼差しは、相手の胸を一突きするほどの鋭さだ。二人の娘が母を見る目は尊敬にあふれている。家族がそろい、彼女の眼差しが柔らかくなるのはいつになるのだろう。

子どもが真に子どもらしく生きられる社会。
子ども村の子どもたちが家族と共に暮らせること。
このような希望が一日も早く実現しますように。

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孔雀の森

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いろいろな出会いを
大切に♪

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